AIで楽曲を楽器やボーカルに分離する


ずっと待っていた22



「こんなところで何してるの?」
電柱の影で膝を抱えて座っているイルカをカカシは覗き込んでくる。
上から見下ろされてイルカは、ひどく焦った。
「え!え?え、っと何って何が?」
そんなイルカを見て、ふ、と笑ったカカシはイルカを立ち上がらせた。
「ほらほら、まず立って」
イルカの肩を抱いて、ひょいと立たせる。
そのまま肩に腕を回したままだ。
「あ、あの」
ここは店の前で人目がある。
こんなことをしていて誰かに見られたら誤解が生じてしまう。
変な誤解が・・・。



だがカカシは全く意に介せず、イルカから離れようとはしない。
そうこうするうちに店から出てきた何人かの上忍に見られてしまった。
「お、やっと捕まえたのか」
「もう逃すなよ」
「その格好も、どうにかさせろよ」
「怪しすぎるからな〜」
酒を飲んでいるのか軽口を叩いていく。
「あー、うんうん。教えてくれてありがとね〜、後は大丈夫だから任せてよ」
口ぶりからしてカカシはイルカが、ここにいることを知っていたらしい。
「さ、行こうか」
イルカの肩を抱いたまま、カカシは歩き出す。
「これは邪魔だから取っちゃおう」
怪しさに拍車をかけていたサングラスとマスクと野球帽はカカシに取り上げられた。
「髪を下ろしたイルカ先生っていいねえ」
カカシはご機嫌だ。
少し酒の匂いがした。



酔い覚ましと称してカカシに連れられて涼しい風の吹く川べりを歩く。
「今日のイルカは可愛いねえ」
カカシは何度もイルカの私服姿を褒めていた。
「いつものイルカもいいけれど、ちょっと違うイルカもいいよねえ」
始終、笑みを浮かべている。
「可愛いイルカが隣にいてくれれば俺は幸せだなあ」と本当にご機嫌だった。
カカシのペースで事が進んで展開に追いつけなかったイルカであったが、ここにきて漸くカカシに質問することが出来た。
「カカシさん」
「なーに?」
「あ、今日なんですけど」
「今日?」
「え、その、聞いたんですけど」
ごくっと唾を飲み込みイルカは言った。
心臓は、どきどきと忙しない。
「カカシさん、『お見合い』だって」
「おみあい?」
「・・・・・・そうです」
カカシの顔から、わざと視線を外して頷いた。
ぎゅ、とイルカの腕に回っていたカカシの腕の力が強まった。
「お見合いで女・・・の人と会っていたんですよね・・・」
カカシの返事を聞くのが怖くてイルカは緊張で体を強張らせる。
そんなイルカの緊張が伝わったのかカカシが言った、はっきりと。
「違うよ」
その声音はイルカを安心させる。
「イルカの思っている『お見合い』なんかじゃないから」
否定した。



「まあねえ」
カカシは夜風に吹かれながら、のんびりとした口調で言う。
「女の人はいたけどねえ」
「じゃあ、やっぱり・・・」というイルカの口を先に封じる。
「だいたいね、イルカ」
くるっとカカシがイルカの方を向いた。
「『お見合い』って店の名前だから」
「あ・・・」
そういえば店は、そんな名前だった気がした。
カカシは一気に話し始める。
「あそこの店の通称が赤い看板の店になっちゃって店の名前が疎かになってんだよねー。便利で使い勝手がいいから飲み会がある度に使っているけど」
「飲み会?」
「そうだよ、今日は上忍の飲み会で俺、幹事だったの。幹事って面倒くさいね、集合時間が七時だったけど早めに店に行って、あれこれしないといけないし」
だからイルカはカカシが店に入る姿を捉えられなかったのだ。
上忍の飲み会ならば男の人も女の人もいただろう。
説明を聞いて昨日、イルカが受付で聞いた上忍の会話も納得できた。
単なる飲み会の伝達事項だったのだ。
訳が解ると意味も解明できた。
「あの、昨日の野暮用ってのは・・・」
話のついでに訊いてみる。
「あー、それはねえ」
カカシは昨日の事を思い出したのか、うんざりとした顔になる。
「借りを返せって怖いお姉さんたちに酒を奢らされていたんだよねえ」
怖いお姉さんたち、とは誰のことだろう?
「イルカを守るようにお願いして、ちゃああんとお代は払ったのに。その上、酒まで奢らされてさー」
カカシは愚痴る。
「その酒代が五桁いくってどーなのよ?朝まで平気で飲んでたし。おまけに今日の飲み会も、けろっとした顔して参加していたしねー」
怖いお姉さんたちは、ぶっちぎりで酒に強いらしい。
「あいつら人間じゃないのかもしれない」
割と真剣にカカシは言っている。
本当に、そう思っているのかもしれなかった。



「で、イルカ」
打って変わった声を出しカカシはイルカを見つめた。
歩いている足も止める。
「今度はイルカに訊いてもいい?」
どきん、とイルカの胸が大きく鳴った。
「なんで、あそこにいたの?」
あそこ、とは店の前だ。
「それに」とカカシの目がきゅっと細まる。
「俺に会いたいって言っていたよね」
流れ星に願いを言っていたことまで聞かれていた。
「どうして、イルカ」
カカシに見つめられてイルカは息が止まりそうになる。
「どうしてって・・・」
それは・・・。
言ってしまっていいのだろうか。
「教えて、イルカ」
カカシの声は優しい。
イルカを見つめる目も肩を抱く手も、全部が優しい。
その優しさに押されるようにイルカは言っていた。
「好きです」
ついにカカシに告白したのだった。




ずっと待っていた21
ずっと待っていた23





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