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ずっと待っていた23



ふわり。
正にそんな表現がふさわしい笑みをカカシは浮かべた。
柔らかくあたかかい笑みは自分は幸せだと語りかけてくるようだ。
そんなカカシの顔にイルカは見蕩れていた。
こんなカカシの顔は初めて見る。
願いが叶ったような達成感も醸し出していた。
そして笑みと同じく、ふわりとカカシの腕がイルカの体に回って抱きしめられた。
耳元で囁かれた言葉は。
「ずっと待っていた」
イルカが好きだと言ってくれるのを。
思いも寄らない言葉であった。



「俺もイルカのことが好きだよ」
カカシが、そっと告白してきた。
「初めて会った時から気になって、いつの間にか好きになっていた」
告白は続く。
「ずっとずっと好きで好きで堪らなかった」
「なんで、それを言ってくれなかったんですか?」
イルカの口から至極当然の疑問が出る。
「カカシさん、俺のことが好きだったなんて・・・」
「だったじゃなくて好きなんだよ」
カカシは苦笑する。
「好きになってイルカと、これ幸いに恋人関係になれて浮かれて」
はあ、とカカシが息を吐く。
「『仮』のだってことすっかり忘れちゃっていたんだよねえ」
以前、イルカが仮に恋人関係の解消の事をカカシに言った際に、ひどく驚いていた訳だ。
「でも、別れるのを了承したじゃないですか」
拗ねたような口調で告げるとカカシの胸に強く引き寄せられる。
「それはね」
優しく諭すようにカカシが言った。
「『仮』の関係を解消して本当の恋人になりたいと思ったからだよ」
だから俺、頑張ったんだ〜よ、とカカシは自慢げだ。
「不安材料も燻りだして叩きのめしたし、もう安心〜」
「不安材料って・・・」
イルカには何となく心当たりがある。



「もしかして、あの人のことですか?」
ついこの間、里内でイルカに迫ってきた上忍だ。
その上忍は綺麗な女の人に叩きのめされていた。
「まあねえ」
カカシが苦虫を噛み潰したような顔をする。
「てっきり若い男が好きなんだと思っていたらイルカのことが好きだったみたいでさ〜」
他にも怪しいやつがいたから一掃しておいたから、と優しい笑顔でカカシは恐ろしいことを言い放った。
「でも、それって・・・」
自分が何とかするべきじゃないかと考えていたイルカは、それを聞いて落ち込んでしまう。
「自分の身も守れないなんて」
情けない思いでいっぱいになる。
「まあまあ、イルカ。いいじゃないの」
カカシは軽くいなして、再びイルカの肩を抱いて歩き出した。
「イルカを出来ることをやればいい、俺は出来ないことを手助けする。恥かしいことじゃないでしょ」
「はい・・・」
「それに怖いお姉さんたちも、どこか楽しんでいたようだしね」 今度はカカシが打って変わって人の悪い笑みを浮かべた。
「まあ、自業自得だから同情はしないけど」
怖いお姉さんたちというのは、どうやらイルカを助けてくれた女の人のことを指すのだとイルカは漸く気がついた。
複数形だということは他にも色々とカカシに頼まれて暗躍していた女の人のこともいたのかもしれない。
イルカには計り知れないが。



「ま、全て一件落着したからね」
この件に関してはイルカはカカシに、とりあえず任せることにした。
もっともっと修行して強くなると密かに決意して。
守られるばかりじゃなくて守る側になれるようになりたいと思う。
「それにしても」
イルカは隣を歩くカカシを見る。
もう、背も少ししか変わらない。
目線が同じ高さになりつつあった。
「恋人関係になったのに俺がカカシさんに好きだと言ってないこと、気にならなかったんですか?」
「あー、それね」
ふふ、とカカシは笑う。
「俺がイルカのことを好きならいいかと思ってさー。イルカは男に迫られたことがトラウマになっていそうだったし、ゆっくり進めて行こうかな〜って」
イルカの気持ちに配慮して自然にイルカが自分のことを好きになってくれるのをカカシは待っていてくれたのだ。
「好きになってくれればイルカは必ず、俺に好きだと言ってくれると思っていたから待っていたんだよね」
「もし、好きだと言わなかったらどうしたんですか?」
ちょっと気に掛かる。
「あー、それはね」
カカシは無邪気な顔を見せた。
「成人したら襲っちゃおうかと思っていた」
イルカは辛うじて十代である。
カカシは言っていることと、やろうとしていることが随分と違う。
ちらりとカカシの本音が垣間見えたような気がした。
俺がイルカのことを好きならいい、と言いつつイルカの傍を着かず離れずカカシはしていた。
独占欲が強いのかもしれない。
好きな人を本気で手放す気はなかったのだ、カカシは。



てくてくと夜道を歩いていると、ある場所に着いた。
「あの、ここは?」
見たことがあるような玄関だがイルカの家ではない。
「俺んち」
カカシは楽しそうに言った。
「今日は俺んちにお泊りでいいよね」
確認ではなく確定であった。
「ずっと待っていた分、取り返さなくちゃ〜ね」
「と、取り返すって何をです?」
答えを聞くのが怖くなる。
足を止めたイルカを物ともせずにカカシは肩を抱いたまま、引き摺るようにして自分の家の中に連れ込んだ。
「まずはお泊りから始めようね」
うきうきとしているカカシは本当に幸せそうだ。
「イルカと恋人になれた訳だし、もう遠慮はいらないよね」
「ええ!」
カカシのことは好きだけど。
好きだけど!
それは自覚したばかりの気持ちで。
その気持ちに行動が追いついていけない。
「ちょっと待ってください、カカシさん」
カカシの家に連れ込まれたら、いったい何をされるのだろう。
イルカには想像がつかない。
「やだ、待たない」
「そんな・・・」
ずっと待っていたんだから、もう暫く待てないのか。
イルカが駄目もとで言ってみたが、やっぱり駄目だった。
「あ、キスもしたいな〜。熱烈なやつね」
弾むような声で言うカカシ。
ばたんと玄関の扉が閉まって二人の姿はカカシの家に中に消えた。



二人きりの家に中で。
多分、カカシとイルカは幸せな時間が過ごすはず。
やっと本当の恋人になれたのだから。
ずっと待っていたのだから。
この時を。



終わり




ずっと待っていた22




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