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ずっと待っていた19



「まあ、頼まれたっていうよりも雇われたって言う方が正しいわね」
女性は楽しそうに言ってイルカにウインクしてくる。
「破格の値段で雇われたのよ、何かあったらイルカを助けてくれってね」
「カカシさんが、なんで」
もう関係がないはずなのに。
そんな気持ちが口調に表れたらしい。
女性が苦笑した。
「なんでって」
くすくすと笑われた。
「それはカカシに直接訊くといいわ。あれで中々、用意周到な男だからね」
意味は分からなかったがカカシが何事かを画策しているらしいと暗に、におわされた。
イルカは何と言っていいか分からずに先ほど吹っ飛ばされた人物の方向に視線を向けた。
「さっきの人は・・・」
「ああ、あいつはいいのよ」
女性は事も無げに言い放つ。
「骨の二、三本折れているかもしれないけど命に別状はないでしょう。いい気味よ」
もっと手ひどくやってやればよかった、と物騒なことを言う。
「あんなやつ、放って置いていいのよ。それより、もう帰った方がいいわ」
家まで送っていくわ、と女性の申し出をイルカは素直に受け入れた。




家までの道すがら女性と少し話をした。
というより、イルカが気に掛かっていたことが口に出てしまったのだが、安心感から気が緩んで。
「カカシさんって好きな女の人がいる・・・んでしょうか」
イルカの問いに女性は丁寧に受け答えしてくれた。
「どうして、そう思うのかしら?」
「以前・・・」
俯くと地面が見えた。
自分の足の先が目に入る。
やけに寒々しく見えた。
「カカシさん、たくさんの女の人といたから」
正直に理由を述べる。
「どこで見たの?」
「上忍の控え室とか色々」
女性は少し考えて答えた。
「ああ、もしかして、あなたが上忍に書類を配りに来たとき?」
「そうです」
「それならね、違うわ」
安心して、と女性は楽しげに言う。
「あの時の女の人たちの中に私の恋人もいたんだけどね、カカシに気があるとか好きだとか、そういうのじゃないから」
あっさりと否定された。
「みんな、カカシには興味ないのよ」
「え、じゃあ、なんで?」
驚いてイルカが顔を上げると麗しく微笑んだ女性の顔があった。
「カカシじゃない人に興味があったの」
「カカシさんじゃない人って」
「あなたよ」
すっと指で指されてイルカは足を止める。
気がつけばイルカの家の前だった。
「カカシより、あなたに興味があるのよね、みんな」
だからカカシも、やきもきしているのよと女性は指摘した。
「あっちもこっちも網を張らないといけないからカカシも大変よね」
問い質そうとしたのだが、それよりも早く女性は夜の闇に消えていった。
「おやすみなさい、いい夢を」と、ひっそり言葉を残して。
女性の言った言葉の意味を考えてイルカは家の前に立ち尽くしていた。



それから何事もなく日が過ぎていき里内でカカシの姿を見かけるようになった。
任務から帰ってきたらしい。
上忍らしき人たちと話していたのを目にすることが多い。
カカシはイルカに気がついているのかいないのか。
イルカが近くを通りかかっても気にする風でもない。
無視されているのではないが丸っきり他人行儀といっても過言でもない。
でも、これが普通なんだよなあ、とイルカは思う。
上忍と中忍だし、壁があっても変じゃない。
ただカカシが他の人と楽しそうに話しているのを見ると一抹の寂しさを覚える。
冷たい隙間風がイルカの心に吹いていた。



それでも仕事はしなくてはならない。
淡々と日々の仕事はこなしていた。
ある日のことだった。
夕方、イルカは受付業務に就いていた。
混み合う受付所には上忍、中忍、下忍と様々に人がいる。
そんな中、イルカに報告書を出した上忍二人が話しているのが聞こえてしまった。
思わず聞き耳と立てたのはカカシの名前が出たからだ。
「あ、そうだ。明日さー、カカシが『お見合い』だって言っていたぜ」
「へー」
「夜の七時からだってさ」
「場所はどこだっけ?」
「ほら、赤い看板の店だよ」
「分かった、オッケー」
という会話だったのだが聞いた瞬間、イルカの息は止まりそうになっていた。
カカシさんがお見合い!
お見合いというのは簡単に言えば男女が結婚の相手を求めて会うことだ。
カカシさん、結婚するんだ・・・。
結婚・・・。
結婚がどういうものが当然、イルカも知っている。
ショックを受けるのは筋違いかもしれないが、どうしようもない。
ここにきて、やっと自分がカカシにどれだけ気持ちが傾いていたか思い知らされた。
はっきり言えば仕事を別にして心の中は始終、カカシのことだけだった。
「イルカ」
隣の同僚に言われた。
「顔色が悪いけど大丈夫?真っ青だぞ」
「うん、平気」
「真っ青ってか真っ白になってきているぞ」
「うん、平気」
どうにか平静を保ってイルカは受付業務を終了させた。
終わった途端に急いで家に向かう。



一刻も早く家に帰って一人になりたかった。
混乱して考えが纏まらない。
頭の中を整理したかった。
重い足取りで歩いていると前方に人影が見えた。
そのシルエットはイルカのことを待っていたようだった。
近づくに連れて人影がはっきりとしてくる。
「イルカ」
心配そうな声がした。
「イルカ、大丈夫?ひどい顔色だよ」
そこにいたのはカカシであった。





ずっと待っていた18
ずっと待っていた20





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