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ずっと待っていた15



ふわ〜とイルカは大きな欠伸をしそうになって、噛み殺した。
眠い。
すごく眠い。
昨日は久しぶりに帰ってきたカカシと夜、食事をして積もりに積もった話をたくさんしてきた。
カカシと話すのは楽しくて時が経つのを忘れてしまう。
話の最中にカカシは言っていた。
「とーぶん、里にいます」
渋い顔をしていた。
「偶にはゆっくりしないとね。休養です」
長期に任務で疲れが溜まっているのだろう、休養は必要だ。
「里で休養しながら待機状態かな〜」
つまりは何もしないらしい。
非常事態にならなければ。
「イルカに会い放題だね〜」
そう言ってカカシは、とっても嬉しそうな顔をしていた。


結局、食事が終わってからカカシの家に移動して話を続けて長居してしまった。
夜も更けてカカシは盛んに泊まっていくように勧めたのだが。
着替えも何もないし、次の日は仕事だし。
あれこれ理由を言って泊まるのは辞退してきた。
・・・泊まるのって特別な意味を持つような気がする。
イルカは、そう思っていた。
友達同士なら別に何とも思わないけどカカシさんとの関係を考えるとなあ。
ちょっと溜め息も出てくる。
もしも、だけど。
仕事の手を休めてイルカは考えた。
もしもカカシさんと俺が友人関係だったら?
そしたら、もっと気軽に付き合える?
そこまで考えてイルカは頭を強く横に振った。
上忍と中忍が友人って・・・。
そんなの、そもそも有り得ない。
恋人になった切っ掛けだって、あれだし。
何年も前になる切っ掛けを思い出してイルカは憂鬱になった。
ついでポケットから出したカカシの家の鍵を見て憂鬱になる。
鍵は、まだ返していなかった。



「あ、イルカ」
隣の席で仕事をしていた先輩の忍に話しかけられた。
イルカは任務も受けるが、こまごまとした事務仕事をしたりしている。
火影さまの用事も言い付かったり、中々、忙しい日々だ。
「はい、何でしょうか?」
すぐに現実に戻ったイルカは先輩の忍に返事をした。
カカシさんのことは後で考えよう。
また会えるのだから。
「うん、これさ」
どさっと紙の束を渡された。
全部、書類だ。
「上忍の人に配ってきてくれないかな?配る人のリストは一番、上にあるから」
書類の一番、上には上忍の名前が記された紙があった。
はたけカカシ、という名前が一番最初に目に入ってきて不覚にも、どきりとする。
「上忍の待機室に行けば皆、いると思う。で、配り終えたら受付所に行っていいから」
もうすぐ受付の時間だろ、と言われた。
「分かりました」
先輩の忍に会釈をするとイルカは上忍の控え室に、まずは向かったのだった。



てくてく歩いて上忍控え室に着くと中から人の気配が多数、窺えた。
ノックをしてからイルカは「失礼します」と入室する。
上忍の控え室ばかりなので、当然、いるのは上忍ばかりだ。
中忍のイルカは気後れから緊張してしまっていた。
持ってきたリストの名前を順々に呼んで、手早く書類を渡していく。
早く、この場から立ち去りたい気持ちが強い。
自分が、たいそう場違いな気がした。
書類が最後の一枚になった。
ほっとしたイルカは最後の人の名前を呼ぶ。
「えと、カ・・・。はたけ上忍はいらっしゃいますか?」
カカシだった。
流れでカカシに最後に書類を渡すことになってしまった。
カカシさんではなく、はたけ上忍と呼んだ。
「はーい、こっちでーす」
奥の方からカカシの声がする。
導かれるように声のする方へと行くとカカシがいた。
にこやかな笑みでカカシはイルカを迎えてくれた。
ただし、いたのはカカシ一人ではなかったけれど。



カカシの両隣、向かいには人が何人かいた。
それらの人が、いっせいにイルカを凝視する。
好奇心を伴った視線に遠慮なく晒され、頭から爪先までじろじろ見られた。
「どうぞ」
ぎこちない動作でカカシに書類を差し出した。
「ありがとー、イルカ」
「いえ」
まともにカカシの顔が見れなくて書類を渡した途端にイルカは失礼にならない、ギリギリの速さで退室した。
廊下に出ると足早に上忍の控え室から遠ざかる。
受付所に向かいながら先ほど目にした光景が忘れられない。
目に焼きついている。
カカシの周りにいた人は全員、女性であった。
いわゆる、くの一。
それも、きらびやかな雰囲気を身に纏った美人ばかりだったような気がした。
・・・カカシさん、もてるんだ。
カッコよくて優しくて親切で強い人なら、もてるのは納得だ。
カカシの戦場での勇ましい活躍も耳にしたこともある。
「カカシさんて」
改めて思った。
「すごい人なんだなあ」
まるで雲の上の人みたい。
カカシが里に帰って来て近くにいるのに、なんでか遠くにいるように思ってしまう。
この気持ちはなんだろう。
それが寂しさだとは気づけないイルカであった。




ずっと待っていた14
ずっと待っていた16





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