ずっと待っていた13
「カ・・・」
カカシさんと言おうとしたイルカであったが突然の再会に言葉が出てこない。
カ、だけで止まってしまった。
びっくりして瞬きを繰り返しているだけだ。
対してカカシは、にこやかに応じている。
「わざわざ来てくれるなんて嬉しいなあ」
玄関前で立ち止まっているイルカの手を自然に取った。
自然な流れでイルカを自分の家に導いた。
「これから出かけようとしていたんだけどイルカの方から俺に会いに来てくれるなんて」
頬を緩めて、にやけている。
カカシは本当に出かけようとしたのか、すっきりとした服装であった。
忍服ではなく、年相応の若者が着るような軽快な服装で。
なんだか、いつものカカシには見えなかった。
「ほんと、ついさっき帰って来てね」
カカシは言う。
「すぐに、イルカに会いに行こうと思っていたんだよ」
会えて嬉しいよ〜とカカシはイルカを見て、にこにこしていた。
気がつくとカカシの居間に腰を下ろしていた。
取られた手は離してもらっていない。
「あ、あの、カカシさん!」
ようやくイルカの声が出た。
余りに急な展開で気持ちがついていっていなかったが、やっとカカシがいるという現実感が出てきたのだ。
カカシが木の葉の里に帰ってきたということに。
「なに、イルカ?」
「お帰りなさい!」
「うん」
カカシは目を細めた。
「ただいま」
「元気でしたか?」
「結構ね。イルカは?」
「俺は元気でした」
「なら、よかった」
二人の間に、ほっとしたような空気が流れる。
目と目で見詰め合う。
カカシは妙に安心したような顔になってイルカの手を離すを台所へと行き、両手にカップを二つも持ち戻ってきた。
どうやら飲み物を入れてきてくれたらしい。
「はい」とカップを手渡される。
「あ、どうも」
礼を言って受け取るイルカ。
「どうもは俺の方だよ」
カカシはカップの中味を一口飲むとイルカに言った。
「俺がいない間、部屋の掃除とか空気の入れ替えしてくれたのイルカでしょ」
「ああ、それは・・・」
ちょっとイルカは口篭る。
何故か、少し気恥ずかしい。
「借りてた服を返しに来て、鍵もあったし・・・」
いい訳めいたことが口から出る。
「カカシさんがいつ帰って来てもいいようにしておきたかったし。そしたらカカシさんも喜ぶかな〜って」
素直に自分の気持ちを告げた。
「ありがとう」
イルカを、じっと見つめていたカカシは心から感謝の言葉を述べているように見えた。
「本当にありがとう、イルカがそう思ってくれていたなんて」
「いや、そんな」
照れたイルカは、あはは〜と誤魔化すように笑う。
カカシの言葉に、言葉以上の意味があるような気がした。
気がしただけだが。
カカシが自分を見る目に居た堪れないのだけども居心地の良さのような安堵感を感じる。
矛盾しているけど。
居た堪れなさからか逸らすように急いでイルカは言った。
「あ、そうだ。あの人、綺麗ですね」
「あの人?」
にこやかな顔をしていたカカシの眉が潜められた。
「あの人って誰のこと?」
「えっと、背が高くて髪の長い綺麗な女の人です」
「ああ・・・」
「最初にお会いした時、髪の色がカカシさんと同じで、どきっとしました」
「髪の色?」
「はい、銀色みたいな灰色みたいな」
「あいつめ〜」
カカシの眉間に皺が寄る。
「余計なことして」と、ぶつぶつ言っている。
「余計なこと?」
呟きが耳に入ったイルカが聞き返すとカカシは、しょうがないといった風に白状した。
「あいつ、里に帰る前は金髪だったんだよねえ」
「金?」
「そ。金髪の前は赤茶色で、その前はスカイブルーで、その前は緑色」
「はあ」
どうやら髪の色を変えるのが趣味の女性らしかった。
「ちょっとイルカのこと頼んだだけなのに」
女性は面白がってカカシと同じ髪の色にしたようだった。
カカシは「頼まなきゃよかった」と後悔するように溜め息を吐いている。
それから訊いてきた。
「あいつに何かされなかった?」
「いえ、すごく親切な方で」
「そう」
「綺麗で優しくて、すごく女性らしくて」
「ふーん」
「いいなあって思いました」
イルカが女性を思い出しながら話していく度にカカシは何やら、微妙に不機嫌になっていく。
返事が素っ気ない。
「ああいう方、いいですよね!」
カカシの微妙な不機嫌さに気がつかないイルカが同意を求めるとカカシは返事をしないでカップの中味を飲み干した。
飲み干してから言う。
「よくない」
「・・・え?」
「ぜんぜんっよくない、あんなやつ」
全力で否定してきた。
「そ、そうですか?」
カカシの剣幕にイルカは戸惑ってしまう。
こんなカカシは初めてだ。
「だいたいさー」
カカシは座っていたイルカとの距離を縮めて身を乗り出してきた。
「あいつは男が嫌いなんだよ」
念を押すように言ってくる。
「男とは恋愛しない人間なの」
それはイルカも聞いた。
衝撃的だったが。
「あいつを好きになっても駄目なんだよ」
それは身に沁みて分かっている。
もう、告白してみたから。
告白と共に重大な事実も発覚したけれど。
「分かってます」
イルカは俯いた。
「好きだって告白したら・・・」
「ええっ!告白したの?」
いきなり、ぐわっと両肩をつかまれた、すごい力で。
思わず顔を上がると鬼気迫ったカカシの顔があった。
「本当に本当に告白したの?なんて?」
「・・・・・・好きですって」
「嘘」
「嘘じゃないです」
イルカの言葉にカカシは呆然としている。
・・・カカシさんと俺って。
急速にイルカの胸に罪悪感が襲ってきた。
・・・・・・恋人だけど、仮のだよな。
だけど明らかにカカシはショックを受けている。
イルカが告白した事実に。
・・・・・・・・・言わない方がよかった、かな。
軽率だった、とイルカは深く反省した。
女性に簡単に好きだと告白しなければよかった、そしてカカシにも。
カカシじゃない人間に好きだと告白したことを言わなければよかった。
仮とはいえ、恋人同士なのだからと。
ずっと待っていた12
ずっと待っていた14
text top
top