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協定者たち 5



イルカがゲンマたちと任務に出てから三日が過ぎた。
その日の夜更け、カカシの家の扉が叩かれた。
コンコン、コンコン。
しんと静まり返った闇の中に音は響き渡る。
だが。
おかしい。
カカシは休んでいたベッドから起き上がると気配を殺して玄関に向かった。
外の気配が全く感じられない。
扉を叩く音だけがする。
低い声でカカシは問う。
「誰だ?」
返答如何ではすぐに飛び出し戦闘に移れるようにしている。
意外な声がした。
「畑上忍、私です。ハヤテです。」
「ハヤテ?」
こんな夜遅くに尋ねてくるには珍しい相手だった。
扉を開けると暗闇の中に人影がある。
ハヤテは、ごほっと一度咳き込むとカカシに言った。
「早急にお願いしたいことがあって参上しました。」
「お願い?」
はい、とハヤテは言い、真剣な目でカカシを見た。 「イルカ先生がどうしたの?」
任務で何かあったのだろうか?
カカシの胸に不安が過ぎる。
「先ほど帰還したのですが任務で少々傷を負い、今病院にいます。昏睡状態です。」
「嘘・・・。」
三日前はあんなに元気で別れたのに。
動揺するカカシにハヤテが慰めるように言う。
「傷自体はたいしたことはなく、昏睡状態も明日には回復するだろうという医師の所見です。」
「な、なんだ〜。」
イルカは病院にはいるものの、心配することはなさそうな状態らしい。
「それを、わざわざ知らせに来てくれたの?」
「え?ええ、まあ。」
ハヤテは何故か急に歯切れが悪くなった。
「その、畑上忍が心配されているのではないかと思いまして。」
「うん、すごく心配だね。」
うんうん、と頷くカカシ。
イルカのことなら、何でも知っておきたい。
「あ、そういえば、何かお願いにきたんだっけ?もしかして、イルカ先生の看病とか?」
本来のハヤテの用件を思い出す。
「はい。大変申し訳ないのですが、今からすぐにイルカの傍に行って頂けませんか?」
「それはいいけど。」
どこか含みのある言い方が気にかかる。
考えれば最初に、早急にと言っていたではないか。
「さっき、早急にって言ってたよね。意味は・・・。」
「畑上忍。」
ハヤテが強い口調で遮った。
「すぐにイルカの傍に行ってください。私とゲンマさんは今から又、任務に行かなければなりませんので。」
「分かった。」
どうやら、看病をお願いしているようではないらしい。
ハヤテはイルカの病室の番号を告げると。
「それでは、お願い致します。」
深く頭を下げ、夜の闇に消えた。





夜の闇の中を疾走しカカシはイルカの病室に、ハヤテが去ってから、左程時間も掛からずに到着した。
病室のドアに手を伸ばしたカカシの動きがピタリと止まる。
部屋の中から気配がした。
イルカのものと、もう一つ。
ひどく禍々しく、暗い雰囲気を持つ気配。
カカシが今まで経験したことのない気配だった。
自分の背筋が冷たくなっていくのをカカシは感じる。
これは人間ではない。
カカシの勘が、そう告げる。
予感もする。
戦えば勝てるか分からない、寧ろ、勝てない可能性の方が強いかも。
でも、中にはイルカがいる。
目的はイルカに違いないが、これだけ禍々しい気配を放つ者が友好的なものを求めているとは思えない。
ともすれば震えてしまいそうになる腕を叱咤しながら、カカシは病室のドアに手をかけた。
一気に開ける。




バン、と乾いた扉の音だけがカカシの耳に聞こえた。
病室は暗かったが、そんなものはカカシには関係ない。
目を凝らすと誰の姿もいなかった。
イルカ以外には。
あの禍々しい気配は何だったのか。
気のせいとは、とても思えなかった。
そして、そう思うほどカカシは単純ではない。
「あれは、いったい・・・。」
そう呟くカカシに答えをくれる者は今はいない。
考えてもしょうがないか、とカカシは思考を中断してイルカに近づいた。
イルカは白い清潔なベッドの上で、固く瞼を閉じて眠っている。
顔色は悪いが、大丈夫そうだ。
やっと、ほっと息をついた。
「良かった、イルカ先・・・。」
イルカの寝顔を見たカカシの目にあるもの止まり、言葉を失った。
「これは・・・。」
イルカの白い首筋に浮かぶ、朱の色をした一筋の線。
浅く皮膚が切られて血が浮き出ている。
たった今、切られたようにしか見えない。
やはり、何者かがいたのだ。
イルカを狙う何者かが。
ハヤテの言葉は、このことを指していたのかもしれない。
「俺だけが何も知らないのか。」
俺の知らないところで何が起こっているんだ。
答えの出ない疑問に焦るカカシの夜は、じりじりと更けていった。



協定者たち 4
協定者たち 6

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