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協定者たち 4



カカシは比較的イライラとしていた。
あれから、イルカとの仲が進展しない。
家にも一度送って行ったきりだ。
それもこれも、任務ばかりでお互い擦れ違ってばかりだからだ。
辛うじて、昼食夕食は一緒に食べたりしているが。
上忍控え室のソファーに座って腕を組み、足も組みながら、カカシは下に着いている足の爪先でトントンと同じリズムで床を叩いていた。
「うるさいわよ。」
見かねた紅が注意した。
「待機くらい静かにできないの?」
「うるさいな。」
カカシは視線だけを動かして紅を睨む。
「そっちこそ、これくらいの音聞き流せよ。」
「まあ。」
紅が僅かに眉を吊り上げた。
「何よ、最近、メシ友ができてご機嫌だったくせに。」
「メシ友?」
聞きなれない言葉に漸く、カカシは紅のほうを向く。
「何それ?どういう意味?」
「何って、言葉の通りよ。一緒にご飯を食べるだけの友達ってこと。」
「友達・・・。」
誰のことを指すのか、何となく想像がついてカカシはうんざりとした。
「それってイルカ先生のこと?」
「そうよ。」
紅は楽しそうに、ふふふと笑う。
「あんたたち、最近、暇さえあればご飯を一緒に食べてるじゃないの?皆、噂してるわよ。カカシとイルカ先生はご飯を食べるくらいだけの仲なんだって。」
がっくりとカカシは項垂れる。
そんな関係でしか見てもらえないなんて、かなり寂しい。
しかし、イルカとの付き合いは、とりあえずは伏せてある。
今、イルカの気持ちが自分に無いことは承知なので、そんな時期に周りから揶揄されればイルカは逃げてしまうことは容易に推測できるからである。
しかしなあ。
少しだけでいいから、関係を進ませたい。
「よし。」
カカシは膝を叩いて立ち上がった。
今日の夜はイルカ先生の家へ行こう、と決意した。
この話題をすると、イルカが嫌がるので微妙に避けていたが。
今は午前中だし、今から言っておけばイルカ先生も心の準備ができるはずだ。
勝手に結論付けてイルカを探しに行こうとするカカシに紅がアドバイスをくれた。
「あら、カカシ。イルカ先生と食事の約束でも取り付けに行くの?でも、任務に行くらしくって大門の方へ歩いていく姿を見たわよ。」
「いつ?」
「一時間前によ。」
カカシがすごい速さで控え室を飛び出して、大門に向かったのは言うまでもない。




息せき切って大門に辿り着くと、幸いイルカはまだ大門付近にいた。
「あ、カカシ先生。どうしたんです?」
イルカが暢気に声を掛けてきたので、そこでカカシの苛立ちが一気に出てしまう。
「どうしたって言うのはこっちの台詞です。何で俺に黙って任務に行くんですか?」
「何でって、任務ですから。」
カカシの勢いに押されて、イルカは一歩下がった。
怒っているカカシは、かなり怖い。
「いちいち、言わなくたっていいかと。子供じゃないし。」
「言わなきゃ駄目です。俺達、付き合っているじゃない。」
ようやくカカシの怒りの理由がイルカは分かったのだが。
付き合っている相手には何でも言わなきゃいけないのか?
逆に聞きたくなったが、それを聞くとカカシが更に怒りそうなので黙っていた。
「まあまあ。」
そんな二人の間に割って入ったのが、ゲンマだ。
「落ち着いてくださいよ、カカシさん。二人とも付き合って日が浅いでしょ。これからですよ、これから。」
妙に落ち着きを見せて二人を諭す。
「カカシさんの心配する気持ちも分かりますがね。」
「ところで、ゲンマが何でいるのさ?」
「そりゃ、これからイルカと組んで任務だからですよ。」
あ、ハヤテも一緒にね、と付け足した。
「三人で任務なの?」
「まあ、そういうことになりますね。」
ゲンマが銜えた千本を揺らしながら答えた。
しかし、曰く付きの三人と云うことを知っているのでカカシは眉間を深くする。
「なあに、そんな難しい任務じゃないんでね。心配は無用ですよ。」
「そう。」
どこか心配は拭えない。
「イルカ先生。」
「あ、はい。」
カカシに呼びかけられて、イルカは慌てて返事をする。
先ほどのように詰め寄られては敵わない。
「何でしょうか?」
「うん、気をつけてね。怪我とか。」
カカシが憂えた目でイルカを見つめ、そっと手を取る。
「待ってるから。」
握った手に一瞬、きゅっと力を籠めると離した。
それだけだった。






カカシに見送られて大門を出て、しばらくしてからイルカは独り言のように呟いた。
「カカシ先生、任務のことを話さないってだけで、どうしてあんなに怒ったんだろう。」
傍で聞いていたハヤテが咳をしながら言った。
「それは付き合っているからでしょう。」
「じゃあ、任務に出る時、どうしてあんなに心配そうだったんだろう。」
「そりゃ、付き合っているからだろう。」
同じく傍で聞いていたゲンマが言った。
「付き合っているか・・・。」
イルカは出発前のカカシを思い出す。
説明のつかない感情がイルカの中に芽生えてきたのだが。
それは自分自身も気づかないことで。
そして、多分、二人の関係は少しだけ進んだのだった。



協定者たち 3
協定者たち 5

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