協定者たち 3
「あの。」
イルカはカカシの体を押した。
「もう少し離れて歩いてもらえますか?」
「何故?」
カカシは居酒屋から出てからも繋いだ手を離そうとせず、イルカに体を寄せている。
ゲンマ、ハヤテとは別れての帰り道だ。
「何故って、ええと。」
戸惑って、口篭るイルカにカカシは力強く言う。
「いいじゃないですか、俺達付き合っているんですよ。」
特に、付き合っている、というのを強調している。
「つ、付き合うって言っても、成り行きでしょう?」
イルカが恐る恐る言う。
「だって俺のこと好きだなんて。どこが好きなんですか?」
そんなイルカのを目を細めて見るカカシ。
少し寂しげに。
「うーん、それはもう少し後でね。イルカ先生が俺にもっと興味を持ってくれたらね。」
「興味?」
「そう。ゲンマやハヤテの後押しなしに俺と本当に付き合ってもいいと思ってくれたときに言いますよ。」
「はあ。」
「そんで、その時にもう一度改めて告白しますからね。」
だって、あんな飲み屋で告白なんてしたくなかったし。
カカシは仕方なさそうに肩を竦めた。
「でも、イルカ先生に俺の気持ちを知っておいて貰いたかったから、止むを得ずしたんです。」
「そうですか。」
恋愛から限りなく遠い処にいるイルカは、カカシの言うことがちっとも分からなかった。
先日、ゲンマをアカデミーの裏手呼び出して、カカシは聞いてみた。
いや、聞くというよりは詰問に近い形で。
「ゲンマ、今から聞くことに素直に答えた方が身のためだからね。」
「何がです、カカシさん?」
ゲンマはいつもの軽い調子で言う。
「おかしな人だな、そんな怖い顔していたらイルカに嫌われちまいますよ。」
険しい顔のカカシの片眉がピクリと跳ね上がった。
「やっぱり、ゲンマはイルカ先生と何らかの繋がりがあるんだね。」
「まあ。」
ゲンマが一歩下がる。
「知りたいですか、カカシさん。」
試すようにゲンマは身構えた。
「ちょっとちょっと、違うって。」
ゲンマの様子を見てカカシは慌てて手を横に振った。
「俺が聞きたいのは、ゲンマをイルカ先生が恋愛を介する関係にあるんじゃないかって。」
「はあ?」
「ほら、何かっていうと、いつも一緒にいるじゃない。」
あ、ハヤテもか、とカカシが言うとゲンマは安心したように息を吐き出した。
「なんだ、てっきり俺はあのことがバレたのかと思いましたよ。」
「え?」
「子供のイルカと俺が恋愛関係になれるわけないでしょうが。」
しばらく二人の間に沈黙が流れた。
その後、質問合戦となる。
「ちょっとゲンマ、あのことって何?」
「カカシさん、イルカのことが恋愛的に好きなんですか?」
「子供のイルカ、ってどういう意味?」
「いっつもイルカのこと見てるんですか?」
あとは、なし崩しにお互いのことを話すことになったのだった。
イルカ先生が子供って、齢三百歳のゲンマから見たらそうかもしれないけど。
カカシはゲンマから聞き出したことを思い出して、イルカをチラと見る。
イルカ先生がまだ四半世紀しか生きていなくて、俺としては好都合なんだけどな。
例え、人間でなくてもいい。
人間に近い生き物でいいじゃないか。
形は同じだし困らないだろう。
違うところが有って当たり前だし、それは時間をかけて理解していけばいいんだ。
カカシは、きゅっとイルカの手を握り直した。
「じゃ、せっかくだし、今日はイルカ先生の家にお泊りに行こうかな。」
「え?」
イルカが驚いて、目一杯身を引く。
「だ、駄目です駄目です。俺の理想のお付き合いでの順番は、って、そうじゃなくて。だって、今日の今日でいきなり俺の家に来るってのは・・・。」
「じゃ、予め決めてから行けばいい?」
「ち、違います。だから、お付き合いでは、その。」
イルカは混乱しているらしく、そこがカカシには面白い。
「冗談だよ、イルカ先生。今日は行かないから、家まで送るだけにする。」
カカシの言葉を聞いて、イルカは目に見えるほど体の力を抜いた。
余程安心したらしい。
「あ、そうですか。」
途端にニコニコするのも、ちょっと可愛くて面白い。
「じゃ、早く帰りましょうか。」
逆にカカシの手を引いたりして。
カカシもイルカに釣られてニコニコとしてしまう。
イルカとは違う意味で。
もう少し、イルカ先生は俺の言った言葉の意味をよく考えたほうがいいんじゃない?
カカシは、そう思ったのだが賢明にも黙っていた。
協定者たち 2
協定者たち 4
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