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協定者たち 10



その夜、昨夜自分が泊まったイルカの家に行ってみたものの、気配はなくて。
カカシはハヤテが言っていた『家』にひどく興味が引かれていた。
『家』に帰ったイルカはどうなったのだろうか?






次の日の昼過ぎにイルカに会うことができた。
ちょうど、昼休みに当たる時間で運よく二人だけになることに成功する。
気になっていた手を見ると、すっかり元通りになっている。
偽者や幻術でないことを確かめるためにカカシはイルカの手を取って、繁々と眺めた。
ひっくり返して、裏表、じっくり検分する。
「元に戻ったんですね。」
「ええ、まあ。」
イルカは照れ笑いを浮かべて、カカシの手から、そっと自分の手を引いた。
自分でも手を触って、確かめたりしている。
「元に戻りました。もう大丈夫ですよ。」
お騒がせしました、とイルカは頭を下げた。
二人は仲良く同じ弁当を買って、外で食べていた。
木陰になっていた芝生を選んで。
カカシが、太陽の光でまたイルカがどうかなる、と心配したのだ。
「そんなに心配しないで下さいよ。」
弁当の玉子焼きをイルカは口に入れた。
もぐもぐと噛んで飲み込んだ。
「普段の太陽の光なら生活に影響ありません。唯一、例外なのは朝日だけなので。」
「そうなんだ。」
カカシもイルカに倣って玉子焼きを咀嚼した。
「あとは?他にも、俺が知っておいた方がいいことってない?」
もう、昨日の朝のようなことは御免だ。
イルカを辛い目に遭わせたくない。
そう思ってカカシが聞くと、イルカの顔つきに影が差した。
何事かを躊躇ってる風に見える。
弁当を食べている箸も止まってしまった。
「カカシさん。」
どこか思いつめたように、イルカはカカシを見た。
「俺・・・。」
口に出せないのか、黙ってしまった。
「どうしたの?イルカ先生。」
何を言おうとしていたのか。
見当もつかず、沈黙が二人の間に落ちた。
イルカは暗い顔をして黙り込んでいる。
「あ、そうだ。」
場の空気を変えようとカカシは態と明るく言ってみた。
「そういえば、ハヤテが昨日、イルカ先生は『家』に帰ったと言っていましたが、『家』ってなんですか?」
他に家でも持ってるの?もしかして別荘とか?とふざけた調子で言ったのだが、逆効果だったようだ。
イルカの顔色がますます、悪くなる。
「そんなことまで・・・。」
イルカはとうとう、食事を完全に止めてしまった。
弁当を脇に置いて、カカシに向かって何故か芝生の上で正座する。
イルカの張り詰めた雰囲気にカカシも食事を止めた。
「家と云うのは便宜上の言葉で、本当は家じゃ有りません。」
「って言うと?何?」
「・・・・・・教えることはできません。」
低く固い声がイルカから聞こえた。
「もう、カカシさんにこれ以上は、何も教えられません。」
「どういうこと?」
カカシの声が尖る。
「始めはゲンマさんやハヤテの言うように付き合ってもいいかもしれないと思っていましたが。それは間違いだったようです。」
「間違いって?」
自分の気持ちを否定された気がしてカカシの口調もきつくなる。
「カカシさんが、俺達のことを知れば知る程に胸が痛くなるんです。こっち側に来すぎると戻れなくなってしまうから。」
「それで?」
カカシの尖った声が冷たく響く。
「こっち側に来すぎるとカカシさんが危ない目にあいます。・・・死ぬかもしれない。」
最後に出た言葉にイルカは知らず、ぎゅっと目を閉じた。
「カカシさんが俺のせいで死ぬかもしれない。」
「イルカ先生。」

「死んでほしくないんです。」

ぱっと、顔を上げたイルカは勢いで、そのまま立ち上がり。
カカシを見下ろして、頭をきっちり九十度下げた。
「短い間でしたが、お付き合いありがとうございました。」
「え、ちょっと。あの。」
「この御恩は一生忘れません。」
言い終わると、あっという間に走って行ってしまった。
「待ってよ、イルカ先生。」と引きとめようとしたカカシの手は虚しく、空中に伸びたままだ。
急な展開にカカシは、いささか呆然としていた。
「なに、これ?」
独り言が哀しく響く。
「ふられたってわけ?まだ、キスもしてないのに。」
というか、恋人らしいこと何かしたっけ?
やっと先日、念願のイルカ先生の家へ泊まることができたのに。
付き合いが一歩進んだと思ったら、推定百歩後ろに下がってしまった。
イルカが去って、一人取り残されたカカシと、脇には食べかけの弁当が二つ。
少し、侘しい光景だった。






協定者たち 9
協定者たち 11

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