協定者たち21
イルカの不吉な言葉を聞いてカカシは慌てて、それを遮った。
「なんてこと言うんですか!」
漸く、目を開いたイルカの顔は真剣だった。
「これが、近々、必要になるような予感がするんです。」
必要になる、ということは予想もしない危機的状況が、遠からず訪れるということであろうか。
「強い願いは何ものにも負けない、そして、その願いを込めた、カカシさんを護ってほしいという想いを込めた物を持っていると、その想いがカカシさんを護ってくれる。」
イルカは「ゲンマさんが、そう言っていました。」と小さい声で付け足した。
「俺、カカシさんに生きていてほしい。」
自分に言い聞かせるような、強い決心を秘めたような言い方である。
「これは。」とカカシに渡した十字架を指差した。
「銀で出来ているそうなので、お護りとして持つには、もってこいです。」
銀と十字架は相手が、最も苦手とするものですから、とイルカは笑顔を見せたが、それは無理に作ったようだった。
「・・・そう。」
十字架を受け取りカカシは苦い気持ちになる。
カカシがイルカに好意を寄せることで、イルカも少しずつではあるがカカシに心を傾けてくれているのは、よく分かる。
だが、それによってカカシが本来ならば不要な危険な目に合うことでイルカは罪悪感を抱いているのかもしれない。
イルカが抱く、カカシに対しての罪悪感がカカシを危険から護ってほしいと思わせたのか。
苦しくなる気持ちを抑えてカカシは、同じ露店にあった、イルカが自分にくれた同じ物を購入した。
「じゃあ、俺も。」
十字架の首飾りとイルカに渡す前にカカシは、それにキスを落とした。
「俺の愛を、たくさん込めて。イルカ先生を護ってくれるように。」
「カカシさん。」
そしてイルカの手に渡した。
「俺も、いつも持っているから、イルカ先生も持っていて。」
お願い、と言うとイルカは、こくりと頷いた。
「良かった。」
貰った十字架の首飾りをベストの内ポケットに仕舞いこむとカカシはイルカの手を再び、握り雰囲気を変えるように明るく言った。
「初デートで、恋人とペアの物を持てるなんて、すっごい嬉しい。」
「ペアって言っても、あれは・・・。」
「しかも、イルカ先生の熱い愛が入っていますしね。」
「う・・・。」とイルカは真っ赤になって黙り込んだ。
上手い言葉が出てこないらしく、どうにも言い返せないらしい。
こういうことにかけてはカカシが一枚も二枚も上だった。
「イルカ先生のには俺の熱い愛が入っていますしね〜。」
そう言ってからカカシは「ん?」と首を傾げて、腕を組む。
「どちらかというと暑苦しいかも・・・。」とカカシの呟きにイルカは、噴き出した。
その笑顔を見て、カカシは愛しげに目を細めたのだった。
「そういえば。」とカカシは思い出したようにイルカに聞いた。
「十字架って、その・・・禁忌なものじゃないの?イルカ先生たちにとって。」
カカシは、イルカやゲンマ、ハヤテたちのことを知ってから異国の書物を読み漁り、それなりに知識を得ていた。
「ああ、そういえば、そうですねえ。」
イルカは、思い出したように答える。
「俺は、そういうの平気です。全く、苦手としませんけど。」
そこまで言って、イルカはおかしそうに笑った。
「ゲンマさんやハヤテは、禁忌なものに触れることが出来ますが、自ら積極的に触れたりしませんね。余り好きじゃないみたいです。」
「へええ。」
自分の知らないことを話すイルカにカカシは興味深く聞き入る。
「木の葉の里には教会はありませんが、そこにある聖水や聖書も俺、別段、アレルギーとかないんですよ。」
「そうなんだー。」
「それが俺の生まれによるものか、元から、そういう性質なのかは分かりませんけど。」
カカシは、教会というものが何なのか異国の書物によって最近、知った。
要は、宗教のシンボル的なものらしい。
暫く、宗教的な話題が続き、デートには、いささか相応しくない真面目が話ばかりになった。
カカシは少しつまらない。
折角のデートなのに、これで終わるなんてねえ。
これで、邪魔者なんて現れたら泣くに泣けない。
「ねえ、イルカ先生。」
カカシは思い切って誘ってみた。
「これから、俺の家に遊びに来ませんか。」
時刻は、もう夕方で夕飯を食べるには、ちょうどいい頃合だ。
夕飯を俺の家で食べませんか?と無難にカカシは誘ってみた。
「俺、料理、意外に得意なんですよ。」と、にっこり笑顔でアピールしてみる。
自分の家の中でなら、イルカと二人きりになれるし邪魔も入らない。
いや、入らせない。
それが一番の狙いである。
イルカは一度もカカシの家に来たことはないし、口実には打ってつけだ。
下心を思い切り隠したカカシの誘いにイルカは無邪気に頷いた。
「ありがとうございます。カカシさんの家に行くのって初めてですね。」
ちょっと緊張するなあ、とイルカは微笑む。
カカシは、やったー!と心の中で歓喜の叫び声をあげたのだった。
協定者たち 20
協定者たち 22
text top
top