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協定者たち20



「カカシさん。」
ゲンマが率直に感想を述べた。
「意外に執念深くて、しぶとかったんですね。」
いつまでも覚えているなんて、と呆れたように言っている。
「いいでしょ。」
カカシは意味もなく胸を張った。
「好きな人が言ったことなんだから、忘れる方がおかしい。」
第一、とカカシは強調する。
「何でも言うこと聞いてくれるなんて、おいしい約束、いつまでも、何があっても忘れないに決まっているよ。」
そして約束を果たしてもらうのに、何が不都合があろうと一人納得している。



「そうですか、なら、まあ、いいんですけど。」
ゲンマは、銜えていた千本で食堂の出入り口を指した。
「イルカは行っちまいましたぜ。」
「ええっ!」
振り向いて確認すると、つい先ほどまでイルカの姿が消え去っている。
多分、恥ずかしさ故から逃げ出しだであろうことは容易に察しがつく。
「イルカ先生!」
慌てて後を追うカカシを見送りゲンマは諦めたように呟いた。


「・・・初デートか。頑張れよ、イルカ。」
ゲンマの心境は、もしも可愛い我が子がいたのなら、その可愛い子が、どこぞの誰かに攫われてしまったような親の気持ちに一番、近かった。

そして食堂でカカシとイルカの会話を聞いていた者たちは、春が訪れた者達を羨む気持ちと、その初々しいさに中てられた生温い気持ちが、ないまぜになって静かに溜め息を吐いていた。



次の日、カカシは朝、起きた時から、そわそわとしていた。
心此処に在らずといった風情で、うきうきとしている。
見るものが見たら、カカシが放っているオーラはピンクで、ハートも飛び回っていたに違いない。

昨日、あの後、イルカを追いかけたカカシは、ばっちりと時間と待ち合わせ場所をイルカと約束し、午後からはイルカと二人きりで過ごす予定であった。
明くまで、カカシの心の中だけの計画であったが。

アカデミーでの午前の授業を終えたイルカが、待ち合わせ場所に既に来ていた。
「イルカ先生、待ちました?」
イルカの姿を見て、ぱっとカカシの顔は輝く。
「いいえ、今、来たところです。」
「そうですか、よかった。」
愛読書のワンシーンのような恋人達の会話をして、カカシの顔は益々、輝き綻んだ。



まるで、本当の恋人同士のようだ。
いや、本当の恋人同士なんだけど。
胸のうちで、身悶えているとイルカが聞いてきた。
「カカシさん、昼、まだですよね?どこかで、食べましょうか。」
「あ、はい。」
連れ立ってカカシはイルカと歩き出した。

「いい店、リサーチしてあるんです。」
「いいお店?」
興味深そうにイルカの目が光る。
「うん。昨日、イルカ先生、食欲ないって言っていたから、なるべく、さっぱり目で胃に負担がかからなくて、それでいて、低カロリー良質な高蛋白質が摂れるお店をね。」
あ、ついでに有機野菜がウリの店なので、美味しいトマトジュースも飲めますよ、とカカシは説明した。
「カカシさん、すごい調べてくれたんですね。」
感嘆したようにイルカが言う。
昨日、イルカが食欲がないと言ったことやトマトジュースを摂取しなければいけないことなど、細かなことを考慮してくれていたのだ。



「だって、デートですもん。」
カカシが笑いイルカの手に、そっと触れてきた。
「好きな人に喜んでもらいたいし。」
そしてイルカの手を、きゅっと握る。
「一緒にいるんだから楽しい時間を過ごしたいでしょ。」
「・・・そうですね。」
カカシの手を握り返してきたイルカも笑っていたのだが、瞳の奥には少しだけ寂しさが垣間見えた。



昼の食事は申し分なく、カカシもイルカも、ゆっくりと時間を掛けて、いつもより多めの量を食べていた。
「久しぶりに食事をしたって感じですね。」
イルカが満足そうに言って「カカシさん、ありがとうございました。」なんて言ってくれたので、カカシも店を探した甲斐があったと胸を撫で下ろす。



そして食事が終わり、里中を散歩がてら店を冷やかし歩いていたのだが、ある店の前でイルカの足が、ふと止まった。
そこはアクセサリーなどの小物を売っている露店だったのだが、ある物に見入っている。
「どうしたの、イルカ先生。」
イルカは答えず、露店に飾ってあったアクセサリーを思しき物を手に取った。
店の売り子に何事か聞いている。
頷いたイルカは、お金を払って、それを買っていた。



そして、それをカカシに差し出してきた。
「カカシさん、これ・・・。」
渡された物を受け取り見ると、それは十字架のモチーフにした首飾りであった。
シンプルなデザインで銀色の十字架が、同色の細い鎖で繋がっている。


イルカは首飾りを渡したカカシの手を包み込み、願うように言った。
「カカシさんを護ってくれますように。」
「イルカ先生?」
目を瞑り、まるで祈っているようである。
「・・・俺の命を引き換えにしてもいいから、カカシさんを護ってくれますように。」




協定者たち 19
協定者たち 21



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