協定者たち18
※ハヤテの死に関係する表現があります
月光ハヤテが死んだ。
それは三代目から伝えらえた。
砂隠れの里に偵察に行って死んだということらしい。
勿論、驚いたカカシではあったが、こっそりとゲンマに接触し聞いてみた。
「ハヤテが死んだって本当?」
答えるゲンマの表情は固い。
「本当ですよ。といっても後で復活してきますけどね。」
「そうか・・・。」
カカシは、なんとなく安心する。
「複雑な気持ちだけど、良かったというべきなのかな。」
ぽつりと呟くとゲンマの顔は険しくなった。
「良かったって言っても死ぬ時は・・・。」
唇を噛みしめて珍しく言葉を濁す。
「いや、ここで止めておきましょう。カカシさんは知らなくていいことですから。」
ゲンマの様子を見てカカシも聞くのを躊躇ってしまう。
「ただ、体の復元には時間がかかりそうなんで、当分の間は表の世界には出てきませんよ。」
「復元て?」
興味が引かれて、カカシは聞いてしまった。
「俺たちは強靭な体と治癒力を持っていて怪我などの治りは早いですが。例えば、なくなってしまった体の部分を元に戻す、復元するのは時間が掛かるということです。」
俺は燃やされて灰になった時が一番大変だったですけどね、とゲンマは独り言る。
「ハヤテは今回、結構、体が・・・・・・まあ、あれなんで。」
「そう。」
なんと言っていいものか分からずカカシは言葉を切った。
「ま、そんな気にしないでくださいよ。」
ゲンマは態と明るい声を出した。
「危険な、死が伴う任務を請け負うことで俺たちは木の葉の里に住まわせてもらっているんですから。」
それが俺たちと里との協定になっているんです、とゲンマは説明する。
「仕方ありませんよ。」
悟りきったような顔で肩を竦めた。
「ねえ、じゃあ、イルカ先生は?」
カカシは思いついて聞いてみた。
「イルカ先生も、その、例えばハヤテのようになっても生き返るの?」
しかし、それは禁句だったらしい。
ゲンマの雰囲気が一変した。
「カカシさん。」
低い声でゲンマは言う。
「それは言っちゃあ、いけませんよ。」
辺りを見回して、静かにするように人差し指を立てる。
「表向きは、一族として復活することになっていますがね。」
声を潜める。
「・・・・・・・でも本当は解りません。俺にも誰にも。」
イルカは人間としての死を迎えたことがないんです、つまり一族として復活したことはないんです、と言ったゲンマの声は囁くように微かな声だった。
「イルカ先生。」
イルカは慰霊碑の前に佇む、ハヤテが付き合っていた彼女を遠くから見ていた。
木立の陰から言葉を掛けることはせずに、ただ見守っていた。
その目には遣り切れない思いが映っている。
カカシはイルカの隣に行くと何も言わずに、イルカの手を握り締めた。
イルカはカカシがいることに気づいてはいるのだろうが、カカシの方を見ることはせずに手を握り返してくる。
手を握り返してくる力が強く、ハヤテの死にイルカが動揺しているのが感じられた。
「俺・・・何もしてあげられない。」
誰ともなくイルカは呟いた。
「あんなに、あの人は悲しんでいるのに。」
「・・・イルカ先生。」
「ハヤテは自分が彼女の前から姿を消しても、ずっと彼女を愛していると言っていたけど。」
カカシは握っていた手を離して、そっとイルカの肩に回して自分の方に引き寄せた。
「これでいいのかな、って思うんです。」
イルカは、ことん、とカカシの肩に頭を乗せる。
「これでいいのかなって。」
カカシは答えることはせずにイルカの体を己の両手で包み込んだ。
イルカが離れることがないように、ぴったりと二人の間の隙間を埋める。
カカシの体温がイルカに伝わって、イルカの体温がカカシに伝わってきた。
「イルカ先生。」
ひっそりとカカシは言った。
「どんなことがあっても俺はイルカ先生が好きですから。」
ぎゅっとイルカの体を抱き締める。
「いつまでもです、ずっと好きですから。」
「・・・カカシさん?」
「守りたい、あなたを。」
カカシの脳裏に最後にゲンマが言った言葉が木霊している。
もしもの可能性として、イルカが人間でいうところの死で『死んでも』一族としても『滅びても』、それは二種類の死にイルカは怯えなければいけない、ということを意味することになるのでしょうかね・・・。
この事実は、まだイルカに告げていないんですがね、辛いなあ、と言ったゲンマの目は遥か遠くを見ていた。
それを聞いて自分は人間だけれど、それでもイルカの支えになりたい。
支えになれたら、とカカシは心に強く思ったのだった。
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