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協定者たち16



「どうして?」
カカシはイルカの肩を強く掴んだ。
力の加減が上手くできなかった。
イルカはカカシから顔を背けたままだ。
「どうしてもです。」
顔を背けて、頑なな態度でイルカは言った。
「俺の命は俺のものであって、俺のものじゃないからです。」
「そんなこと・・・。」
「カカシさんだって木の葉の忍で、命は里に捧げているじゃないですか。」
「意味が違うよ。」
「カカシさんは、もう俺の事情を知っている。だから、もしも。」
そこでイルカは言葉を切った。
大きく息を吸ってから言葉を吐き出す。
「もしも俺が、俺を狙っている相手の手中に落ちそうになった時、カカシさんが傍にいたら。」
空気が、ぴんと張り詰めた。
「さっき差し上げた柊の杭で、俺を殺したっていいんです。」



カカシとイルカの二人の間の空気は凍りついた。
息をするのも苦しいほどに固まっている。
「それに、俺は少々の怪我も短時間で治るような体です。これからはカカシさんが戦っている敵の攻撃を避けるための盾にもなれる。」
俺の体を盾にして闘えばいいとイルカは暗に言っていた。
イルカの肩を掴んでいるカカシの手は微かに震えた。
自分でも力が入りすぎていると思ったが止められない。
きっとイルカの肩にはカカシの手の跡が残るに違いないだろう。

カカシはイルカの言葉を聞いて、目を閉じて俯いた。
どうにかして、イルカの考えを変えたかった。
自分を犠牲にするなと説き伏せたかった。
しかし、今は他に言いたいことがあった。



「・・・・・・わ。」
カカシから地を這うような低い声が洩れる。
「わ?」
「分からずやーっ。」
「え。」
「イルカ先生の分からずやっ。そんなこと俺が望んでいないのがなんで分からないんですか?俺のこと嫌いなの?」
カカシは、すごい剣幕で捲くし立てた。
「こんなに好きなのにっ。こんなに好きなのに、どうして分からないんです。」
衝動のままにカカシはイルカを抱き締めた。
ありったけの力を込める。
手加減はしなかった。
分からず屋のイルカが悪い。
恋人の言うことを利かないイルカが悪いんだ。
強い想いが力になって表れた。



「だいたいにしてですね。」
カカシは思いの丈をぶちまけた。
「いきなり俺の前からいなくなるって、どういうことですか!」
見たことない様子のカカシにイルカは押され気味だ。
「付き合うっていても左程付き合ってないのに、別れるなんて酷いです。」
「カカシさん・・・。」
「酷すぎです。」
勢い余って、カカシは抱きかかえたままのイルカを押し倒すような形になり二人は地面に転がった。
転がりつつも、抱き締められて動きが制限され受身を取れないイルカのためにカカシはイルカの頭の後ろに手を当てるのを忘れない。
そんなカカシの優しさをイルカは気づき、未だに自分を好いてくれるのだと感じてしまう。
「別れるって言われた後、二人分の弁当を寂しく食べた俺の気持ちが分かりますか。」
「あ・・・、あの食べかけのお弁当ですか?」
「残すはもったいないし、一人侘しく食べましたよ。イルカ先生は俺一人、残して行っちゃうし。」
カカシの悲しい告白を聞いてイルカは申し訳なくなってきた。



俺って自分勝手で嫌なやつだな、と自己嫌悪に陥ってしまう。
それなのに、カカシさん、こんなに俺のことを考えてくれて、なんていい人なんだとイルカは感慨に胸を詰まらせた。
しかし、次のカカシの言葉で感慨は吹き飛んだ。
「それに、お付き合いたって俺たち、何にもしてないじゃないですか。」
「何にもって・・・?」
「イルカ先生の家にも泊まりに行っても健全なお付き合いの見本みたいな感じのノリで、たのしいハプニングもなかったし。」
「ハプニングって・・・。」
「俺、実はすっごく色々期待していたのに。」
「何をですか・・・。」
「だいたいにして、イルカ先生の周りには、いっつもゲンマがいたりハヤテがいたりで落ち着かないしですね。」
地面に転がったまま、イルカに覆いかぶさるような体制でカカシは、ぎゅうぎゅうとイルカを抱き締めた。
「あの、カカシさん、今こそ落ち着いてください。」
「いやです。」
カカシは聞き分けのない子供のように、つーんとそっぽを向く。
「今まで、散々、我慢してきたってのに、このチャンスを逃すわけにはいきません。」
「そんな、俺は・・・。」



そんなこんなで揉めている二人の間に声を掛けた者がいた。
「はーい。お二人さん、こんなところで何をしてるのかなあ?」
ゲンマだった。
「ゲンマさん!」
イルカは目を輝かすがカカシは面白くなさそうな顔になっている。
眉を顰めて「出たよ〜。」と嫌そうに呟いていた。



「ゲンマさん、どうしてここに。」
カカシに押し倒されたまま、イルカはゲンマに尋ねた。
「ああ、任務帰りなんだが、この辺りから大きな黒い影の気配を感じたんでね、もしやイルカがと思って来てみたら。」
イルカから離れないカカシにゲンマは呆れたように言った。
「こんなことになってるしね。」
ゲンマに指摘されてイルカは、かーっと一気に赤くなる。
「こ、こんなことって、ご、誤解です。」
イルカはカカシの下から逃れようと、じたばたと暴れだした。
そんなイルカを、とりあえず助けようと手を貸す前に、ゲンマは気まぐれに聞いてみた。
「楽しいですか?カカシさん。」
「うん、すっごくね。だから、ゲンマ、邪魔しないでね。」


もしも、カカシとゲンマの視線が見えたら火花が飛び散っていたであろう瞬間であった。




協定者たち 15
協定者たち 17



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