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協定者たち14



は、とイルカが息を吐き出した。
ゆるゆると瞼が開いて自分を抱きこんでいるカカシを見とめた。
ゆっくり、と微笑む。
「・・・った。」
「え?」
カカシが聞き返すと掠れた声が聞こえた。
「よかった。カカシさんが、生きていて。」
「よかった、なんて。」
きつく、カカシは眉根を寄せた。
「ちっともよくない。イルカ先生は傷付いて俺は何もできなかった。」
歪むカカシの顔をイルカは震える手を持ち上げて触る。
「いいんです。これで。」
「これでいいって、そんな。」
激高するカカシの声を遮ってイルカは弱弱しい声で訴えた。
「俺の、腰のポーチにトマトジュースのパックが入っているので。」
ごほごほ、と咳き込むイルカは赤い血を吐いた。
「飲ませてください。・・・早く。」




イルカの言う通り、トマトジュースを飲ませると顔色は見る見るうちに回復していった。
体の傷も塞がりつつある。
カカシの腕から少しだけイルカは体を起こした。
まだ、完全には回復していないので動くのは辛いのだろうか。
カカシの腕の中でイルカは自嘲するかのように笑った。
「こんなトマトジュース、一つに左右される俺って変ですよね。」
「イルカ先生?」
「俺の命ってトマトジュースがあるかどうかなんですよね。どれだけ、緊急な事態でもトマトジュースが必要で。なんだか笑っちゃいますね。」
イルカの告白は、まるで懺悔でもしているようでもあった。
目を伏せたイルカは、そっと呟く。



「俺、この世に生まれてこなければ、よかったな。」



「何、言ってるんですか?」
突然、おかしなことを言い出すイルカにカカシは問いかける。
「生まれてこなければよかったって。何で、そんなこと言うんですか?イルカ先生のお父さんもお母さんも、イルカ先生が生まれてきてことを喜んでくれたはずですよ。」
「そうかもしれませんが。」
イルカはカカシから、体を静かに離す。
治りきらない傷が痛むのか顔を歪めていた。
「でもね、カカシさん。」
イルカの瞳の色は深く沈んでいる。
「俺が生まれてきたばっかりに、木の葉で暮らす一族に淡い期待と希望を持たせてしまったんです。」
期待と希望。
カカシはイルカの言う意味が分からず、ただイルカの語る言葉に耳を傾けた。
「カカシさんは気づかれましたか?今、俺達一族に女性がいないことを?」
「あ?そういえば、女の人は見たことがないね。」
「はい。」とイルカは頷いて話を続ける。



「いつの頃か、定かではありませんが一族には自然と女性が生まれなくなってしまったらしいのです。理由は分かりません、もしかしたら自然淘汰の一つで俺達の存在意義がなくなったからかもしれません。」
カカシは黙って聞いている。
イルカの言っていることは実感がなく、おぼろげにしか分からない。
「女性が生まれないということは子孫を残すことができませんから、その種は滅びるしかありません。木の葉の里に移り住んだ一族は、そのことを理解していて自らが静かに滅びることを受け入れることにしたのです。人間の女性と付き合っても、通常、異種族間 に子供は生まれませんから、ある意味安心して人間の女性と付き合っていました。なのに・・・。」
イルカは言葉を切って、瞬きを繰り返した。
黒い目はどこか遠くを見ている。
そしてカカシに話しかけてきた。
「ねえ、カカシさん。」
その声は、悲しそうだった。
「俺の父は正真正銘の一族の一人で人間ではありませんでした。でも母は人間なんです。」



唇を痛いほどにイルカは噛みしめる。
「俺が生まれたことで異種族間でも子供を成す事が可能だと思われてしまったのです。でも俺の父の他には、何故か子供を成す者は現れません。それからです、異種族間に生まれた俺の体に子供を成すための秘密がある、遺伝子を調べれば解明できるのではないかと思われて。」
だからイルカの体が狙われていたのか。
カカシは初めて聞かされたイルカの事情に胸が痛んだ。
長い長い溜め息をイルカは吐いた。
「平穏に暮らしていた一族の間に俺は波風を立ててしまったのです。」
イルカは頭を抱えた。
苦渋に満ちた声で告白した。




「俺が生まれてこなければ、何も起きなかったのに。」





協定者たち 13
協定者たち 15



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