子供と大人 17
想いの丈を打ち明けたというのに、イルカ先生は俺の顔を見て固まってしまっていた。
瞬きもしない。
「あの。イルカ先生?」
ひらひら、とイルカ先生の前で手の平を振ってみる。
反応の無さに心配になった。
俺、これでも精一杯、告白したんですけど。
聞こえてなかったのかな?
少し迷って俺は再度、告白することにした。
間抜けな感じもするけど。
大きく息を吸って、よく聞こえるように大声で、せーの。
「イルカ先生、好きです!付き合ってください!」
全部言い終わらないうちにイルカ先生の顔が、みるみるうちに真っ赤になった。
よかった、今度は聞こえたようだ。
胸を撫で下ろしていると、突然、イルカ先生がすくっと立ち上がる。
自分の両手を包んでいる俺の手を振り払うと叫んだ。
「う、嘘だー!」
「え?」
思いも寄らぬ反応だった。
でも、嘘って?
「カカシさんが俺のことを・・・す、好きだ、なんて。」
そんな夢みたいなことが、とか、俺と同じ気持ちだなんてあるわけない、とか呟いている。
「俺といつも一緒にいたいとか、カカシさんがそんな夢みたいなことを言うはずがない。」
きっとこれは夢なんだ、そうなんだ、って言っているけど。
「ちょっとイルカ先生、夢じゃないですよ。」
言ってみたが聞こえてないみたいだ。
イルカ先生は混乱しているようで俺を振り切って、またもや逃げ出そうとするので手首を、しっかと捕まえた。
「イルカ先生?」
「だって、寝ている間、術の解けた大人のカカシさんが俺の布団に転がってきて、寝ぼけているとはいえ、知らず知らずに俺を腕の中にしまって腕枕してくれただけで、もう幸せだったのに。」
え?
「これ以上の幸せがあるはずがない!」
なにー!なんだって?
「それ本当?」
イルカ先生の肩を掴んで、自分の方を向かせて聞いた。
「俺、イルカ先生と一緒の布団で寝ていたの?」
「・・・・・・そうです。」
俺のぎらぎらとした迫力に押されて、イルカ先生は不承不承な感じで答える。
「な、なんて・・・。」
羨ましいんだ、俺、何で意識がなかったんだ、俺。
非常に悔やまれたが、俺は、俺の寝相の悪さに感謝した。
覚えてないにしても俺、寝ながらイルカ先生を抱き締めていたりしたのか。
先程火影室で感じた、ふわふわしたものがまた胸に湧き上がってきた。
今度は、前より暖かくて甘くて更に柔らかくなっている。
まるで身も心も蕩けるような心地だ。
これってさ、愛かな?恋かな?
それとも両方?
「カカシさん?」
イルカ先生が惚けている俺を不思議そうに見る。
「どうしました?とても幸せそうな顔してますけど・・・。」
「だって幸せですもん。」
俺は嬉しくなって返事をした。
「イルカ先生が俺のことを好きで、俺もイルカ先生が好き。」
それってさ。
「相思相愛、両思いですね。」
これこそ、夢みたいだ。
なのに、イルカ先生は不服そうに口を尖らした。
「そんなこと言いますけど。俺、今の今までカカシさんが俺のことを・・・。」
小声になって、ぼそぼそと続ける。
「俺のことが、好き、だなんて知りませんでしたよ。」
あー、そうか。
好きだなんて素振りをしていなかったからね。
それは俺も下手なことしてイルカ先生に警戒されたり嫌われたりしたくなかったから。
付かず離れず、遠からず近からず、友達の距離でいたんだよね。
そんな理由を述べて「ごめんね。」と謝った。
それから。
「俺の方こそ、術にかかって子供になっていたこと黙っていて、ごめんね。」
最初に話せなくてごめんね、って。
改めてイルカ先生の両手を握って告白した。
「イルカ先生、本当に好きです。」
これからも一緒にいてください。
俺とずっと一緒にいてください。
イルカ先生は俺を静かに、じっと見つめていた。
やがて小さな声が聞こえる。
「ありがとう、嬉しいです。」
俺の三度目の告白であった。
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