子供と大人 10
次の日の朝、やっぱり起きると俺はイルカ先生の布団の中にいた。
しかも、まだ寝ているイルカ先生と一緒にだ。
自分の寝ていた布団を見ると布団を蹴飛ばしたであろう跡が一目瞭然だったので、どう考えても俺が寝ている間に自分の布団から、ごろごろと転がってイルカ先生の布団に入り込んだのに違いない。
俺の体には、きっちり布団が掛けられて寒くないようになっていた。
イルカ先生は寒くないのかな?
横で寝ているイルカ先生を見ると健やかな寝息が聞こえる。
寝ている時は、普段結っている髪を解いているので、いつもと雰囲気がだいぶ違っていた。
俺流に言えば、髪を解いて目を閉じているイルカ先生は胸の高鳴りが押さえられないほど色っぽい。
時々、微かに動く睫に目を開けるのかと、どきどきして、いや、そのまま寝顔を見ていたいとか。
いろいろ考えて、もう〜、どきどきしてしまう。
俺、今、子供で良かったかもな・・・。
イルカ先生の寝顔に見入っていると、視線を感じたのかイルカ先生がぱっちりと目を開けた。
一度、瞬きをすると俺の方に顔を向ける。
「あ・・・。おはよう、カカシ君。」
「お、おはようございます。」
朝から爽やかに微笑まれて、少し邪なことを考えていた俺は違う意味で、どきどきしてしまった。
さっき考えていたことがバレやしないかと。
総ては俺の頭の中のことなのでバレる筈はないのだけれど、ちょっと後ろめたかった。
イルカ先生は時計を見ると、びっくりしたように飛び起きた。
「わ、もう昼だ。」
時計は正午を過ぎていた。
「こんなに寝るなんて久しぶりだな。」
ぐーっと伸びをする。
「よく寝たなあ。カカシ君は?」
「あ、寝れました。」
返事をして寝相のことを詫びようとしたけどイルカ先生は照れたように笑って。
「カカシ・・・君と一緒に寝たから、よく寝れたのかな。」
一緒に寝たことを嬉しそうにしているので言いそびれてしまった。
それから完単に朝食兼昼食を食べるとイルカ先生が尋ねてきた。
「じゃあ、どっかに出かけようか?どこに行きたい?」
やる気満々なのは気のせいかな、すごい張り切っているよね?
でも俺はどちらかというと、アウトドア系は苦手だ。
ピクニックとか登山とかイルカ先生は言い出しそうだけど、ちょっとなあ。
うーん、と悩んでいると俺の顔色を読んだのか、イルカ先生が言った。
「じゃあ、プールにでも行く?」
「プール?」
「うん、そうだよ。」
イルカ先生の説明によると、木の葉の里に温水プールがある施設ができたらしい。
プールは室内にあり、温泉も同じ施設内にあるんだって。
確かイルカ先生は温泉が大好きなはず。
それに俺もプールだったらいいかなあ。
了承の意味をこめてイルカ先生を見上げると元気よく手を握られた。
「よし、プールでたくさん遊ぼうね。」
子供のように楽しそうな表情になっている。
俺も、なんだか楽しくなってきた。
プールは意外にも楽しかった。
平日なので人も少なくて空いていたしね。
水の中にぷかぷか浮いたり、ゆったり泳いだり、気まぐれに潜ってみたり。
考えてみればプールに来るのって初めてなんじゃないかな、俺。
そりゃ泳げるけど、娯楽とかで泳ごうとか思ったりしたこと一度もないもの。
海にも任務以外で行ったことないし。
イルカ先生も、すいすいと水の中を泳いで楽しげだった。
ゆっくり仰向けで泳いでいるイルカ先生は俺を見て笑っていた。
「カカシ君、おいで〜。」
にこにこして手を振るので近づいてみると、いきなり、わっと抱きつかれて水の中に引き込まれた。
と、思ったら、その体勢のまま水の中から、ばしゃんと顔を出す。
びっくりした。
顔を、ふるふると振って水滴を飛ばしていると、あはははとイルカ先生の笑い声。
「ごめんごめん、びっくりした?」
こくりと頷く。
「でもさ、面白いと思ってさ。」
確かに水の中は思ったよりも面白かった。
気分もリラックスできてリフレッシュ。
イルカ先生と一緒で言うことなし。
それに、なんていうか。
実は朝、寝顔を見たときよりもプールに来た方が、すっごいどきどきしてしまったのだ。
だってさ、プールでは普通水着だから、男性の場合は上半身に何も身につけない。
俺もイルカ先生も男だから同じ格好をしているでしょ。
水の中でイルカ先生に抱きつかれたりするってころは、あれだ。
つまり、肌と肌が直接触れ合うってことで。
好きな人と、そんな状態になったら、どきどきが止まらないよねえ。
止めることなんて不可能だ。
そんなことを考えて、つくづく思った。
俺、今、いろいろな意味で子供で本当によかったなあ。
子供と大人 9
子供と大人 11
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