子供と大人 6
翌朝。
いい匂いで目が覚めた。
台所の方から音がする。
多分、イルカ先生が朝食を作っている音だと思う。
すると、この食欲をそそる匂いは朝食の匂いなのか、そう思うとお腹がぐーっと音を立てた。
昨日は、ぐっすりと寝た所為か、すごく体調が良く、お腹も空いている。
こんなことは久しぶりだ、なんて健康的な朝なんだ。
でも、あれ?
何だか寝た時と場所が違うような・・・。
起きた布団は昨日、寝た場所の布団と違っていた。
つまり、俺は隣で寝ていたイルカ先生の布団の中で寝ていたのだ。
もしかして夜、寝相が悪くて、ごろごろと転がってイルカ先生の布団に乱入してしまったのかな?
着ていた浴衣も帯びも、よれよれになっていて寝乱れていたようなのが一目で分かった。
俺って、寝相が悪かったんだな、知らなかったよ。
俺の知らない、俺の短所が一つ発見された瞬間だった。
それは、まあ、置いといて。
イルカ先生、ちゃんと寝れたのかな?
また、迷惑かけちゃって俺ってヤツは。
朝から反省する俺のところへイルカ先生が顔を出した。
「あ、起き・・・た?カカシ君?」
俺は起きぬけの顔のまま布団の上に、ぼーっと座ったまま頷いた。
「まだ、眠そう・・・だね。」
俺の頭を、ぽんぽんと軽く叩く。
「顔を洗っていらっしゃい。」
笑顔と共に「朝ご飯ができていますよ。」と言われた。
言われたのだが、顔を洗って朝食前に着替えをした。
イルカ先生の子供時代の服を借りて袖を通す。
背中に一番と刺繍されている、この服は多分、イルカ先生のお母さんの手作りなのだろう。
少し古びていたけど着心地はとても良く、サイズは少し大きかったがイルカ先生の匂いが、いっぱいした。
きっと、この服を着て、たくさんたくさん、子供時代遊んだのだろう。
その頃のイルカ先生に会いたかったなあ。
どんなに可愛かったんだろ?
できたら一緒に遊びたかったな。
ちょっぴり切なくなってしまった。
朝ご飯は美味しく俺は、お代わりをしてしまった。
イルカ先生は嬉しそうにご飯を装ってくれる。
「はい、たくさん食べてくださいね。」
それから俺の顔を、まじまじと見て顔を逸らした。
どうしたのかな?
実は朝ご飯中、イルカ先生は俺のことを、じっと見つめては慌てて目を逸らすということを何回かしていた。
俺の顔に目鼻、口の他に何か付いているのかな?
イルカ先生の顔は俺を見るたびに、少しずつ赤くなっているようだし。
まるで何か、こう照れているように。
疑問が解決しないうちにイルカ先生は出勤の時間となってしまった。
朝は、最も忙しい時間だ。
イルカ先生は出勤カバンに荷物を詰めて肩に掛けると、俺に清潔な布で綺麗に包まれたものを渡してきた。
「これね、お昼のお弁当。」
忙しい朝にわざわざ、作ってくれたのか。
悪かったなあと思いながら受け取る。
「お昼は一人で食べることになっちゃうけど。今日は早めに帰ってきますから。」
ごめんね、という風に両手を合わせて頭を下げてくる。
「あ、その。大丈夫ですから。」
俺は慌てて手を横に振る。
そんなに気にしないでほしい。
だって俺、本当は大人だし、何でもできるし。
イルカ先生は一瞬だけ寂しそうな表情をした後、俺の頭をぐしゃぐしゃと掻きまわすと「子供は、そんなこと気にしないの。」と笑う。
そして元気良く「行ってきます。」と手を振ると行ってしまった。
子供と大人 5
子供と大人 7
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