子供と大人 4
イルカ先生は俺を連れて火影室を出るとアカデミーの玄関口で、少し俺を待たせて職員室から自分の通勤カバンを取ってきた。
今日は、このまま帰れるらしい。
「午後から休みだったんだよ。昨日は夜勤だったから。」
俺の手を引きながらイルカ先生は説明してくれた。
そうか、夜勤だったのか。
俺のことで無理を言ったようで少し後悔した。
疲れているのに悪かったな。
それに。
俺は高い位置にある、イルカ先生の顔を見上げる。
多分、俺が大人のカカシに似ているから、あちこち連れまわって皆から詮索されるのを防いでくれたのかもしれない。
連れ帰ることで、なるべく人に会わないように。
子供に、とても優しい人だ。
そう思うと尚更、後悔が押し寄せた。
イルカ先生は帰る途中、子供の俺の下着と靴下を買ってくれた。
「家に取りに帰る?」と聞かれたけど、元より俺の家に子供の服なんて皆無だし。
首を横に振って否と答えるとイルカ先生は、それ以上聞かなかった。
幸い子供服はイルカ先生のが、まだ家に残っているというので、それを借りることになり下着と靴下だけは買って帰ることになったのだ。
見ることのなかった子供時代のイルカ先生の服を着ることができるのか・・・。
さっき押し寄せた後悔も何処へやら、俺は浮かれてしまう。
イルカ先生、ごめんなさい。
それから帰る途中に七班の子供たちに出会ってしまった。
なんというバッドタイミング。
できれば会いたくななかったのに。
七班は俺がいないので、皆で自主練習中だったらしい。
三人は小さい俺を好奇心剥き出しの眼差しで凝視する。
俺はなんだか居心地悪くてイルカ先生の後ろに隠れて、そっと顔を出して三人を伺った。
「イルカ先生、その子誰だってば?」
ナルトが俺を指差す。
「こら、人を指差すな。」
イルカ先生はナルトに注意をすると「あー、その、なんだ。」と言いよどむ。
聡いサクラは目をキラと光らせて「もしかして。」と口にした。
「もしかして、カカシ先生の・・・。」
サクラが続けようとしたのは何と云う言葉だったのかは分からないが、どっちにしろ余りいい印象の言葉ではないような気がする。
イルカ先生は慌ててサクラの言葉を遮った。
「この子は・・・。この子は、えー、五代目の預かるように頼まれたお子さんで。」
「五代目に?」
「そうだ。」
イルカ先生はコクコクと急いで頷いた。
「俺も詳しいことは知らないが、サクラ。」
急に、びしっとした教師の顔になるイルカ先生。
「滅多なことを推測で口にするんじゃないぞ。」
三人に他の人に余計なことは言ったら駄目だぞ、とイルカ先生は念を押す。
「まあ・・・。仮にあれだとしても、カカシ先生にはカカシ先生の事情がある訳だしな。」
イルカ先生、それって暗に、この子供の俺が大人のカカシに関係あるっていってようなもんじゃないですか?
俺が内心青くなる、子供達に誤解の種を蒔いたよ、きっと。
最後に、きっぱりとイルカ先生は言った。
「聞きたいことがあれば、カカシ先生に直接尋ねなさい。」
「はーい。」
七班の三人は声を揃えて素直に返事をする。
そのまま、自主練習の続きがあるからと去っていってしまった。
それを目で追った後、イルカ先生は俺の方を見て気遣ってくれる。
「大丈夫だよ、あの子達は変なことは言わないよ。」
安心するように微笑みかけてきてくれた。
それは嬉しいけど。
大人の俺に戻った時に質問攻めに合いそうだな。
特にサクラに。
どう説明するかなあ、悩むなあ。
十日後、元の姿に戻るのが、ちょっと憂鬱になる俺だった。
子供と大人 3
子供と大人 5
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