続 子供と大人 6
縄跳びは思ったより難しかった。
侮っていた、たかが一本の縄を跳ぶだけだと。
小さなイルカ先生は上手に、すいすいと二重跳びの連続十回とか、後ろ回しの二重跳びを跳んでいた。
「今、練習しているのは、はやぶさだよ。」
「はやぶさ?」
「うん、二重跳びしながら交差跳びをするんだよ。」
「そうなんだ。」
すごい難しそうな技だな。
縄跳びって色々な技があって難しい。
俺、木の葉の技師って言われているけど縄跳びが跳べないのなら、その名を返上した方がいいだろうか?
そんなことを本気で考え始めた時、イルカ先生が時計を見た。
「あ、もうお昼だ。」
時計を見ると昼の十二時を過ぎている。
子供と過ごしていると何だか時間が、あっという間に過ぎるなあ。
俺は小さなイルカ先生に聞いてみた。
「お昼ご飯は何が食べたいかな?」
食べたいものを聞けば失敗はしない。
イルカ先生は元気良く答えた。
「ドーナツ!」
「ド、ドーナツ?」
予想外の答えだった。
もっと、こうオムライス的なものを言われると思っていたのだけど。
「うん。あのねえ、この前、新しいドーナツ屋さんができてね、父さんに連れて行ってもらったの。」
イルカ先生は嬉しそうに話すが、ドーナツ屋なんて近所にあったけ?
記憶を探るが、そんな店を思い出すことができない。
「そこのお店のドーナツね、チョコのやつとか白い砂糖がかかったやつが、すごく美味しいんだ。」
子供なので甘いものが好きみたいだなあ。
でも駄目だ、食べさせてあげたいけどドーナツ屋さんが、どこにあるかなんて、ちっとも分からない。
「えと、ドーナツはおやつじゃないかなあ?」
妥協策で言ってみた。
「ご飯の時は止めた方がいいんじゃないかなあ。」
そう言うとイルカ先生は、一瞬だけ悲しそうにしていたけど「じゃあ。」と別のリクエストをしてきた。
「ホットケーキ!」
「ホットケーキ・・・。」
ドーナツと大して変わらないような気がするけど、それなら家にある材料で作ることができる。
「いいよ、ホットケーキ作ろうか?」
俺の答えを聞いて、小さなイルカ先生の顔が輝く。
「うん!たくさん作って、たくさん食べようね。」
俺の手を握って、ぶんぶんと振り回している。
「そうだね。」
やっとイルカ先生の子供らしい笑顔を見られて、俺は安堵した。
ああ、笑ってくれたって。
それから、ホットケーキをたくさん食べて、再び縄跳びをした。
俺も頑張って練習したので、二重跳びができるようになった。
イルカ先生が縄跳びに飽きてきたみたいので別の遊びをしようかな。
「じゃあ、次は何で遊ぶ?」
イルカ先生にお伺いを立てると、楽しそうに目をキラキラさせながら言う。
「缶けり!」
「・・・缶けり。」
また難しいものを言うなあ。
二人で、やっても面白くないだろうに、とそこまで考えて、ピンときた。
人数を増やせばいい。
そう思って「分身!」と分身の術を使って、自分を含めて八人になった。
目の前で分身の術を見て、びっくりしているイルカ先生。
黒い目がまん丸になっている。
「すっごーい!」
尊敬の眼差しで俺を見ていた。
「すごいすごい!分身の術でしょ?初めて見た!」
大興奮だ。
「畑さんて、すごい忍者なの?」
「いやあ、それほどでもないけどね。」
子供のイルカ先生から賞賛の眼差しを浴びちゃうと照れるなあ。
八人の俺が一斉に照れた。
「普通だよ、こんなの。」
「そうなんだー。」
イルカ先生は八人の俺を見回して嬉しそうに近寄ってきた。
「この人も畑さん、この人も畑さんで、この人も畑さん。」
興味深そうに分身の俺を見ている。
分身の七人の俺は「そうだよ〜、畑さんだよ〜。」「可愛いねえ。」と目じりを下げてイルカ先生の頭を撫でたりしていた。
俺の他の俺、七人に囲まれ陰になり小さなイルカ先生は見えなくなってしまう。
「おい、こら。」
俺の分身たちに牽制の声をかける。
「あんまり触るな、近づくな。」
七人の俺は一斉に声を揃えて反論してきた。
「いいじゃないの〜、だって可愛いんだもん。」
さすが、俺の分身たち、よく分かっている。
分身の一人が小さなイルカ先生を、軽々と腕に抱き上げた。
「ほうら、高いでしょ?」
「うん。」
抱き上げられてイルカ先生は嬉しそう。
それは俺だって、まだしていないのに、分身に先を越されてしまうなんて。
自分の分身なのに、なぜに、そんなにイルカ先生の相手を上手にできるのか。
イルカ先生を喜ばせることができる分身たち。
嫉妬ともに、少し羨ましくもあった。
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