続 子供と大人 3
四十歳、と云う言葉に俺が心中、さめざめと涙していると小さなイルカ先生が首を傾げた。
「あれ?父さん、四十歳だっけ?三十歳?二十歳だったかな?」
うーん、と考えたイルカ先生は「忘れちゃった。」と呟く。
それに「そういえば、ハタチって何?」とか言っているので、年齢のことはよく分かってないのかな。
まあ、子供にとって年齢は気にすべきものじゃないかも。
気にしているのは大人だけなんだな。
そういうことで極力、俺は気にしないことにした。
何をって、俺が子供のイルカ先生に、おじさんと呼ばれたことをだ。
五代目はイルカ先生と膝から下ろすと、ソファーに座らせて「この、お菓子を食べてなさい。」と言い置いて俺に、こそっと耳打ちしてきた。
「イルカは、今、子供の時の記憶しかない。だから、上手くやれよ。」
「何をですか?」
「術が解けるまで二、三日だから。その間、カカシ、お前に預けるから任務の休みも兼ねてイルカの世話をしろよ。」
「何で、今すぐに解かないんですか?」
「古い術だから、時間がかかるんだよ。」
「本当ですか?」
俺が疑いの目を向けると五代目は渋い顔をした。
「本当だって。お前のことは、イルカの父親の友人、てことでいいだろう。」
「まあ、仕方ないですね。」
俺の他の誰かが小さなイルカ先生の面倒見るなんて、到底、許可できない。
「本当は私が連れて帰ろうと思っていたんだからな。でも、カカシがタイミングよく帰ってくるから。」
「帰って来て良かったですよ。」
俺は心の底から言った。
「イルカ先生は俺の大切な人ですからね。五代目に預けるわけにはいきません。」
「そう言うと思ったんだよ。」
五代目は顰め面をする。
「大切な人っていうのは分かってるよ。でも、今のイルカは子供だからな。」
釘も刺された。
「不埒な真似は承知しないよ。」
最後に五代目が言った言葉には凄みがあった。
それから簡単に自己紹介してから、子供になったイルカ先生を引き取って帰ってきた。
小さなイルカ先生は五代目を別れる時に僅かに不安そうな顔をしたが、素直に五代目に「ありがとう、お姉ちゃん。」と頭を下げると俺について来たのだ。
でも、俺は考えてみたら子供の世話などできるのか、と心配になってきた。
ナルトやサクラとかの子供の相手はしているものの、イルカ先生くらいの年齢の子供は初めてだ。
こんな小さな子供相手に、俺、大丈夫かな?
なので、イルカ先生の歳を聞いてみた。
何かの目安になるかなと思って。
帰ってきた答えは「もうすぐ、九歳です。」だったから、つまり、現在は八歳か。
この前、子供になった俺は十歳だったから、その時のイルカ先生の対応と思い出せば、どうにかなるかな。
そう思って、夕飯はカレーにしてみた。
確かイルカ先生も俺にカレーを作ってくれたし、子供はカレーが好きだよな、と思ってさ。
そしたら、小さなイルカ先生はカレーを、とても喜んで食べて始めた。
しかい、一口、食べてから、食が進まなくなってしまう。
「美味しくないかな?」
俺は、恐る恐る聞いてみた。
自分的には美味しくカレーができたな、と思っていたんだけど。
小さなイルカ先生は一生懸命首を横に振る。
「ううん、すごく美味しいです。」
頑張って食べようとしていたが。
結局、カレーを半分だけ食べて下を向いてしまった。
その様子が何だか、すごく可哀想で俺は言った。
「カレーが苦手なら、無理して食べなくていいんだよ。」って。
イルカ先生は眉を八の字にしたまま、俺を悲しそうに見る。
「違うんです。カレーは好きなんだけど。」
言い難そうに、もじもじとする。
「あの、辛口は苦手なんです。」
「あ・・・・・・。」
俺たちの家には辛口のカレー粉しかなかった。
なぜなら、俺とイルカ先生は大人で甘口を食べなかったから。
いつもどおり普通に、辛口のカレー粉を使ってカレーを作ったのだけど、子供のイルカ先生には辛口カレーは辛すぎたのだ。
「ごめんね。」
俺は慌てて、イルカ先生のコップに水を注ぐ。
「気づかなくて。」
イルカ先生は俺が注いだ水を、ごくごくと飲み干した。
そういえば、俺が子供の時はイルカ先生は甘口のカレーを作ってくれたっけ。
小さなイルカ先生は、水を飲んでから呟いた。
「ごめんなさい、折角、作ってくれたのに。俺、大人だったら良かったな。」
そうしたら食べれたのに、って。
その言葉は俺の胸に突き刺さった。
駄目じゃん、俺。
深く後悔したのだった。
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