子犬の気持ち 2
昼に薬を飲んでから、大分時間が経って、もう夕方になっていた。
イビキさんは夜には薬は効き始めると言っていた。
効果は三日間くらいで、外見に変化はないんだって。
副作用も残らないようになってるって。
気持ちだけが子犬の気持ちになるそうだ。
子犬の気持ちって言うけど、それってどんなだろ?
子犬ってどんな感じだったけ?
犬を飼ったことのない俺はいまいち分からない。
うーん。
心配になってきた。
やっぱ止めておけば良かったかな。
遅い夏休みだけど。
カカシさんと一緒に過ごせるのに。 薬なんて飲まなければ良かったかなあ。
でも外見は変わりないって言ってたし。
試薬だから、そんなに効かないかもしれないとイビキさんは言っていたし。
まあ、きっとばれないだろう。
俺は自分を無理矢理納得させて。
カカシさん早く帰ってこないかなあ。
任務に行っているカカシさんの無事の帰還を思って。
今か今かと帰りを待ち侘びた。
真夜中にカカシさんは帰ってきた。
でも。
「お帰りなさい。」を言いたいけど瞼が重くて上がらない。
カカシさんがシャワーを浴びたり、何かを飲んだりする音が聞こえたけど。
俺は眠くて布団の中で待っていた。
まあ、つまり寝ちゃてたんだけどね。
薬を飲んだせいか、すごく眠くて眠くて耐えられなかったのだ。
眠っている俺の横に、布団をそっと捲り上げて滑り込んでくるカカシさん。
カカシさんの匂いがする。
俺は匂いの方へすりすりと擦り寄った。
目は閉じていたけどカカシさんがひっそりと笑うのが解る。
ふふ、と低い声だ。
「今日はどうしちゃったのかな?」
緩やかにカカシさんの腕が俺を包む。
「普段は寄って来ないのに。」
瞼の上にキスされた。
「可愛いな。」
可愛くなんてない。
反論しようとしたけど、そのまま安心してしまって。
朝までぐっすりと眠りについた。
次の日。
俺は寝坊した。
こんなことは珍しい。
というよりカカシさんと一緒に住み始めて俺のほうが遅く起きるなんてことはなかったのに。
なんてことだ。
慌てて居間に行くと、カカシさんが既に朝食の用意をしていてくれた。
昨日までというより今日の深夜まで任務だった人に用意させるなんて。
「す、すみません、カカシさん。俺、寝坊して・・・。」
「いいよ。」
カカシさんは笑った。
「イルカ先生、よく眠っていたしね。いいじゃないの、夏休みなんだから。」
「でも。」
「休み中くらい、ゆっくりしてよ。」
優しいカカシさん。
優しい言葉に俺は慰められる。
それから、改めて「お帰りなさい。」と言うと。
カカシさんは「ただいま。」と、いつものように俺を抱き締めてくれた。
朝食の席でカカシさんは申し訳なさそうに切り出してきた。
「あのね。イルカ先生。」
「はい?」
俺は口に玉子焼きを入れて、もぐもぐさせながら聞く。
「何ですか?」
「実はさ。」
夏休みのことなんだけどね、と。
「四日間、一緒に過ごせるかと思ったんだけど。三日間しか一緒にいられないんだ。」
「もしかして任務ですか?」
「うん。」
ごめんね、とカカシさんは謝ってきた。
「最終日に任務が入っちゃって。」
「任務なら仕方ないじゃないですか。」
残念というか、寂しい気持ちが押し寄せてきたけど、内心を悟られないようにした。
カカシさんの方こそ、せっかくの休みだったのに。
そして、俺はカカシさんに気を遣わせないように極力明るく言った。
「三日間だけでも一緒に休めるのなら、俺、嬉しいです。」
カカシさんは俺をじっと見てから、少し目を伏せる。
もう一度「ごめんね。」という言葉が聞こえた。
子犬の気持ち 1
子犬の気持ち 3
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