きっと大切な人だから 8
二日の日程の任務が終わりカカシは早朝、一先ず里に戻ることにした。
任務終了の報告をするためだ。
本当は一刻も早くイルカに会いたかったが、順番というものがある。
「火影さま、これで任務終了ということで。」
カカシは疲れた顔で言った。
そして休みを申請しようとした時、火影の方が先に口を開いた。
「疲れているところ悪いんだが、もう一つ任務を受けてくれるかい?カカシなら一日もあれば終わるからさ。」
「ええ〜っ。」
「どうしてもカカシでないと駄目なんだ。今夜からでいいからさ、一眠りしてから頼むよ。」
「俺の休みはどうなるんです?俺も、そろそろ休みが欲しいな〜って。」
その言葉を聞いて火影は、はいはいと頷いた。
「分かった分かった。日頃、精を出して里のために働いてくれているから、この任務が終わったら休みをやろう。」
「ほんとですか!」
「ああ。」
「本当に本当ですね!」
「くどい!本当だ。」
火影は休みを約束してくれた。
カカシの顔は嬉しさで緩む。
「なんだい?にやにやとして・・・。」
不審そうに火影はカカシを見た。
「え〜、いやあ、休みが嬉しくて。」
休みになればイルカと一緒に過ごせる。
イルカの傍にいられる。
そう思うと任務にも、やる気が出るというものだ。
「まあ、いいけどさ」と火影は肩を竦めた。
「なんだか気楽そうで。」
机に上にあった書類を取り上げて目を通す。
「こっちは、帰還してもおかしくない人間が未だ帰還せずで、心配しているだがねえ。」
火影は眉を曇らせている。
「その帰還していない人間って・・・。」
なんとなくカカシが訊くと火影は、あっさりと答えた。
「イルカだよ。任務に行っているんだが。ほら、カカシもこの前の任務の前に、ここで鉢合わせしたろ?」
どきっとカカシの心臓が脈打った。
「はあ、そうですね。」
適当に返す。
「任務の報告が先行して届いたから、そろそろ里に帰ってきてもおかしくないのに、いったい、どうしたんだろうねえ。」
寄り道なんてする子じゃないのに、と火影は呟いている。
「イルカのやつ、大丈夫かねえ。」
イルカの名前を出されると、どきどきとしてくる。
それを火影に悟られないようにカカシは普段どおりに振舞った。
「そのうち、元気に帰ってきますよ。」
在り来たりの言葉を言って火影に、くるりと背を向ける。
「じゃ、俺、任務を頑張ってきますから。」
そう言って火影室から逃げ出したのだった。
「ただいま〜。」
軽い足取りで隠れ家に帰ると奥から「お帰りなさい」と言う声が聞こえてきた。
イルカの声だと思うとカカシの心は和む。
この家でイルカが待っていてくれて、カカシを出迎えてくれるかと思うと気持ちが弾んでくる。
早くイルカに会いたい!
急いで下足を脱いでいると廊下の向こうから、よろよろと壁伝いに歩いて来るイルカの姿が見えた。
足を引き摺りながら、カカシの方へと歩いてくる。
「イルカ先生!」
下足を放り出して駆け寄り、腕を広げるとイルカは嬉しそうにカカシの腕の中に体を預けてきた。
覚束ない足取りのイルカを支えると、イルカの方からカカシに、ぎゅーっと抱きついてくる。
「お帰りなさい、カカシさん。」
「た、ただいま、イルカ先生。」
腕の中から笑顔でカカシを見上げてくる。
「よかった、帰ってきてくれて。」
イルカは目を細めた。
「また会えて嬉しいです。」
「イルカ先生のところに帰ってくるに決まっているじゃないですか。」
カカシもイルカを抱きしめた。
ぎゅっと強く。
その時、ふと違和感を感じた。
抱きしめた体が少しばかり細くなったような。
イルカ先生、痩せた・・・。
だが、その違和感をイルカに問い質そうとする前にイルカがカカシに言った。
「足の怪我も、だいぶ良くなりました。何かに掴まれば歩くというか、移動することは出来るようになったんです。」
「そう、それは良かったです。」
怪我は快方に向かっているようで一安心だ。
イルカの足元にいる忍犬に声を掛ける。
「パックン、ありがとね。」
「なんの、イルカといて楽しかったぞ。」
「あ、そう。」
忍犬の本当の楽しそうな返事に多少、嫉妬してしまったものの、この後任務に行くので、またイルカのことを頼まねばならない。
ぐっと我慢した。
「イルカ先生。」
カカシはイルカに向き直った。
「朝ご飯、まだだったら一緒の食べませんか。」
「はい。」
こくりとイルカは頷いた。
視界の隅で忍犬が何かを言いたげに、顔を顰めているのが見えたが何故だろう。
とても気に掛かるが・・・。
今は、それは置いておいて。
束の間のイルカとの逢瀬を存分に楽しむことにしたのだった。
きっと大切な人だから7
きっと大切な人だから9
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