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きっと大切な人だから 6



一晩寝て、イルカの様態が落ち着いたところでカカシは訊いてみた。
「どのくらい覚えていますか?」
イルカには木の葉の里のことや忍者であることを簡単に説明している。
「どのくらい・・・。」
布団に自力で起き上がれるようになったイルカは目を閉じて考えているようだ。
「よく・・・、分かりません。」
それがイルカの答えであった。
「自分の名前もイルカだと言われれば、そんな感じもしますし・・・。」
頼りなげな口調だ。
「誰か・・・。他の人の名前とかも思い浮かびません。」
カカシさんの名前も覚えてないんです、と申し訳なさそうな顔をしている。



「・・・そうですか。」
「あ、でも。」
イルカが嬉しそうな声を出した。
「カカシさんの名前を言ったりカカシさんの姿を見ていると、すごく安心した気持ちになります。」
にこっと笑ってカカシを見る。
「恋人だからでしょうか。」
素直に自分の気持ちをカカシに伝えてきた。
「・・・そ、そうなんですか。」
そんなイルカに、逆にカカシの方が照れてしまう。



「あ、じゃあ」と照れたカカシは話を切り替えた。
「具体的な固有名詞とかは分からなくても、目に浮かぶ光景とか景色、情景とかってありますか。」
それが何か分からなくてもいいですから、と質問を変えてみた。
するとイルカは再び、目を閉じて考える。
「光景・・・。子供の顔が何となく浮かんできます。金色の髪の子供・・・、優しく笑うご老人の姿・・・。」
おそらく、それはナルトと三代目のことだろう。
「それから・・・。」
何かを探すようなイルカの口調。
「紅い炎・・・、と尻尾がたくさんある大きな動物みたいな・・・。」
はっと目を開けたイルカは胸を押さえた。
眉間に深い皺が出来ている。
苦しそうに吐き出した。
「それと、女の人と男の人・・・。」



イルカの記憶の奥底に眠っていた強烈な記憶だけが浮かび上がってきているのか。
イルカが言っている大きな動物とは里に災厄ともたらした、あの狐を指しているに違いない。
あの時、里は赤い炎で染まっており、たくさんの人が亡くなった。
それと繋がる女の人と男の人はイルカの両親かもしれない。
辛いことも思い出させてしまった・・・。
カカシの胸は痛む。
「イルカ先生。」
辛そうにしているイルカをカカシは胸に抱き寄せた。
そうせずにはいられなかったのだ。
「無理に思い出そうとしなくていいですから。」
今は怪我を治すことに専念しましょう、と優しく背を撫でた。



カカシの腕の中で、ほっと息を吐き出したイルカはカカシを見上げた。
その顔はカカシへの信頼で溢れている。
「ありがとう、カカシさん。」
そう言ったイルカは、ぺたりとカカシの肩口に顔をくっ付けた。
体をくっ付けていると安心するのか、自分の感情に素直に従っている。
カカシを本当の恋人だと思い、全面的に信頼しきっているようだった。
「あ、あの、イルカ先生・・・。」
イルカに自分たちは恋人同士だと偽っているカカシの胸は別の意味で痛んだ。
罪悪感で心に、ぐさっと矢が刺さったような感じになった。



カカシは腕に抱いていてイルカの体を、そっと離した。
「ええとですね、俺、一旦、木の葉の里に帰って・・・。」
「え・・・。」
イルカは一気に不安そうになる。
カカシが一時でも離れることが嫌なのか・・・。
「報告とかしてこないといけないですから。少し、待っててもらえますか。」
「少しって、どのくらいですか?」
悲しそうな目でカカシを見た。
「少し・・・。そう、今から発ったら夕方には帰ってこれると思います。」
「そうですか。」
今日中に帰ってくると聞いてイルカは、ほっとしたようだった。
「待っていますから。きっと帰って来てくださいね。」
嬉しいことも言ってくれた。



「はい、もちろん。」
里に帰ってイルカのことを報告しようか、どうしようか迷うところだが、それは里に着いてから考えようとカカシは問題を先延ばしにした。
怪我をして記憶が曖昧なイルカが心配なので忍犬を一匹、召喚した。
それは、お馴染みの忍犬でイルカとも面識ある。
「なんじゃ、カカシ。」
召喚された忍犬は小さなパグだ。
「うん、イルカ先生の傍にいてあげてほしいんだよね。」
「イルカ?」
布団の上でイルカは人の言葉を話す犬に「すごーい、犬が喋っている!」と目をきらきらさせている。
「どういうことじゃ?」
不可解な顔をする忍犬にカカシは事と次第を簡潔に説明した。
「イルカ先生は俺の恋人だから、とっても心配なの。」
恋人を強調すると忍犬は、もっと不可解な顔をしていた。
今にも否定されそうな感じなのでカカシは、こそっと忍犬に言い含める。
「イルカ先生だって知り合いってだけの人より、恋人の方が気兼ねなく頼れるでしょ。」
「・・・つまり嘘を吐いたわけだな。」
溜め息交じりに忍犬は言うと咎めるようにカカシを、じろっと見る。
「い、いいでしょ・・・。とにかく、イルカ先生のこと頼んだからね。」
半ば強引に忍犬に言い付けると、カカシはイルカの方へ笑顔を向けた。



「俺がいない間は、この忍犬のパックンに何でも言って使ってやってくださいね。」
「はい。」
イルカは忍犬に、おいでおいでをして寄ってきた忍犬を腕の中に抱き上げた。
忍犬は窮屈そうにしながらも、満更でもない顔をしている。
どこか勝ち誇った顔をしているように見えるのは気のせいか・・・。
ちょっとだけカカシは、むっとしてしまう。
「じゃあ、行って来ます」と、とりあえずカカシが行こうとするとイルカが「あ・・・」と声を上げた。
「どうかしましたか?」
「あの、えと・・・。」
布団の上でイルカは顔を赤らめて恥ずかしそうにしながら言った。
「えっと恋人同士なんですよね、俺たち・・・。」
「そうですよ。」
「だったら。」
イルカの顔は真っ赤になっている。
「行って来ますのキス、とかしないんですか?」
そんなことを訊いてきたのだった。





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