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きっと大切な人だから 4



任務を終えて里へと帰還中のカカシは、ふと胸騒ぎを覚えた。
なんだか嫌な予感がするなあ。
こういう時の胸騒ぎは虫の知らせというべきか、外れたことがない。
イルカ先生・・・。
イルカの顔が思い浮かんだ。
任務前に交際を申し込んで返事を待っている人だ。
きっと、多分、いい返事をもらえるとカカシは思っている。
カカシの任務地から、左程遠くないところへとイルカは任務に行っていた。
イルカが任務へと赴いている国は現在、情勢が芳しくない。
大丈夫かな・・・。
眉を潜めてカカシはイルカの身を憂う。
イルカの身に何か起こってないか、と危惧してしまう。



イルカが弱い忍でないことは知っているが、知っているからこそ心配になってしまうのだ。
無茶してないといいんだけど。
後ろ髪を引かれる思いで里に帰還しようとしたのだが、どうにも足は進まない。
イルカのことが気になってしょうがない。
任務に与えられた期間には、まだ少し猶予がある。
少し遠回りして帰っても平気かな。
イルカが無事な姿を確認できたら・・・。
会ってしまったら偶然を装えばいいのだ、偶然ですねとか何とか。
そうしよう。
カカシは決断してイルカが任務へと向かった国の方角へと急ぎ走り出した。




走っていると雨が降り出してきた。
ぽつぽつと振りだした雨はカカシの体を濡らしていく。
だけども雨宿りしようとはカカシは思わなかった。
イルカが任務に向かった方へと近づけば近づくほど胸騒ぎは治まるどころか、ひどくなる。
雨は、土砂降りになってきた。
体が濡れるのも構わず走っていたカカシだが、微かな血の匂いに足が止まった。
雨で血が流れているのか、微かにしか匂わない。
しかし、カカシの上忍として優れた嗅覚は鮮明に、その匂いを捕らえた。



血の匂いを辿っていくと果たして、そこには・・・。
うつ伏せの状態で倒れているイルカがいた。
「イルカ先生!」
慌てて駆け寄り、体を仰向けに抱きかかえる。
足にはクナイが刺さっており、そこから出血もしていた。
「イルカ先生!イルカ先生、俺です、カカシです!聞こえますか!」
呼びかけてもイルカの反応はない。
イルカの忍服も髪も、多分に雨を吸い込んで重くなっている。
体も冷えており唇の色はなく、顔色も真っ白になっていた。
胸は微かに上下しているが、呼吸は細く今にも途切れそうだった。
いつから、ここにいたのだろう・・・。



ぞっとするほど冷たいイルカの体は死人を連想させた。
「・・・死ぬわけないじゃないか。」
カカシは自分に言い聞かせイルカの首筋に手を当てて、脈をみる。
ちゃんと生きていた。
限りなく、頼りない脈を感じる。
「生きている。」
そのことに、ほっとしたものの、早く処置しなければいけないことに変わりはない。
カカシはイルカの足に刺さったクナイを慎重に引き抜き、応急に止血を施した。
冷たいイルカの体を背に負う。
一刻も早くイルカの手当てをしなければ・・・。
イルカを助けたい一心でカカシは走り出した。
とにかく、イルカの怪我を治療できる場所へ。
雨のあたらない場所へと行って、イルカの体を温めないと。
ここから木の葉の里へは少し遠い。
怪我をしているイルカを連れて行くには躊躇う距離だ。
どうしたらいいか・・・。
イルカを背負って走りながら、最善の策をカカシは探していた。




結局、カカシが選択したのは木の葉の里までは行かずとも近い距離にあった自分の所有する家、つまり隠れ家であった。
隠れ家といっても、自分も怪我をした時や暫し休憩する場合に使っているので治療器具も揃ってあり、何日か生活できるだけの準備もしてある。
狭いながらも設備の整った家に改造してあるのだ。
その隠れ家に到着したカカシは濡れたイルカの服を着替えさせて、布団に横たえた。
久しぶりに訪れた隠れ家の布団は湿っぽかったが、この際、それにも目を瞑ってもらおう。
カカシ自身も濡れた服を手早く脱いで着替え、イルカの怪我の治療を始める。
クナイの刺さっていた足は傷が深く、当分、歩くことは出来なさそうだった。
傷口を縫う必要はなさそうだが・・・、と傷口に薬を塗り、包帯を巻きながらカカシは考える。
術を掛けられた形跡も感じるが、それは後にして血が流れ出たので輸血をした方がいいか、それとも点滴した方がいいか。
忍の体は頑強で、一般人よりも治癒も早いが・・・。
迷っているとイルカの目が薄く開いた。



「イルカ先生。」
耳元で、静かに声を掛けるとイルカの瞼が、ゆっくりと瞬く。
目だけが横に動き、声のした方、つまりカカシの方を見た。
「俺ですよ、カカシです。」
イルカの口が動く。
カ、カシ、さんと、それは読み取れた。
「そうです、俺です。」
嬉しくなったカカシはイルカの手を握る。
力付けるように。
「もう大丈夫ですよ。」
イルカが小さく頷いたように見えた。
「俺がついていますから、ずっと傍に。」
それを聞いて安心したのか、イルカの瞼は落ちていき閉じてしまった。



「よかった・・・。」
一時的にでもイルカが意識を取り戻したことで、カカシは心の底から安堵した。
見つけた時は死にそうだったけど、もう大丈夫。
深い溜め息をつく。
「よかった、イルカ先生。よかった・・・。」
イルカの寝顔を見つめてカカシは呟く。
「本当によかった、イルカ先生。」
頬にも赤みが差し、顔色も徐々に戻りつつあるようだった。
体も先ほどより体温も上昇している。
薬を飲ませて食べ物を摂れば、元々、強靭な忍の体である、すぐに元の戻るだろう。
眠るイルカの顔に手を当てるとカカシは、そっと頬を撫でた。



次の日になるとイルカは目を開けて、しっかりと意識を取り戻した。
布団から起き上がれるまでにはなっていなかったが目を開けて、きょろきょろとしている。
ここがどこか分からないよね。
イルカの看病をしていたカカシは傍らから声を掛けた。
「イルカ先生。」
声を掛けるとイルカが、びっくりしたような顔でカカシを見た。
まるで初めて会ったかとでもいうように。
盛んに瞬きを繰り返している。
そんなイルカの反応を不思議に思いながらカカシは言った。
「ここは俺の隠れ家ですよ。だから、安心してください。」
だがカカシの言葉にイルカは答えない。



イルカは目を伏せてカカシを見ようとしなかった。
どこか様子がおかしい。
暫く、黙っていたイルカだったが、漸く声を発した。
ひどくか細い声だ。
「あの・・・。」
「はい。」
何かに動揺しているのかと思い、落ち着かせようとカカシは優しい声を出した。
「どうしたの、イルカ先生。」
「・・・・・・さっきから仰っている『イルカ先生』って俺のことですか?」
「え・・・。」
「・・・・・・あなたは誰なんでしょうか?」
伏せられた目を上げてカカシを見たイルカは不安げだった。
瞳も不安そうに揺れており、今にも消えてなくなりそうで。
イルカの記憶は定かではなかったのだった。




きっと大切な人だから3
きっと大切な人だから5






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