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きっと大切な人だから 2



その日はカカシに訊かれたことに答えぬまま、イルカは家路に着いていた。
如何せん、カカシはイルカに答えをそれとなく何度も訊いてきたのだが答えは、はぐらかしたままにしておいた。
なんでカカシさん、あんなこと俺に訊くんだろう。
それに対して好きだと思ってしまった自分も自分だ。
あんなことを思ってしまったのは一時の気の迷いだったのかもしれない。
家に着いて洗面所で顔を洗ったイルカは鏡に映った己の顔を凝視する。
どう見たって男にしか見えない。
からかわれたのかな・・・
カカシには多分に遊び心があり、時々からかわれたりしていた。
まあ、別にいいんだけどさ。
どうせ、俺は男だし。
カカシさんとは恋人にもなれないし、結婚もできない。
だから・・・、と、そこまで考えてイルカは、ふっと笑った。
何を自分にいい訳しているのだろう。
「馬鹿だなあ。」
自分で自分に、そう言うとイルカは電気を消してベッドに潜り込んだ。
俺には関係ないことだ、と自分に暗示をかけて眠りに落ちていったのだった。




次の日。
珍しくイルカは任務を受けることとなった。
遠方の国へと火影直々の親書を届けることになったのだ。
そして返事を貰ってくることが任務だ。
その遠方の国は地形が複雑で、一度行っただけでは解らない道筋だ。
迷路のような道になっており、それが外敵からの攻撃を防ぐ役割をしている。
幸いなことにイルカは、その国に何回か行ったことがあり、道を知っていた。
任務の期間は二週間が与えられ、火影からイルカに忠告とも警告のようなことが告げられた。
「万一の時は、すぐに救援の知らせの式を里に飛ばせ。」
「万一の時って何ですか?」
任務を受ける際に呼ばれた火影の部屋で、今は五代目の火影に質問すると渋い顔をして答えられた。
「木の葉の里には直接関係ないのだが、現在、イルカが任務で行く国は他国とトラブルを起こしていてな。」
その、いざこざにイルカが巻き込まれないかと五代目火影は危惧していたのだ。



「ま、危なそうなら、すぐに帰って来ていいぞ。親書もすごく重要なものでないし。」
火影は、そう言うが火影の親書が重要ではないはずがない。
大事なものだ。
「はい。」
慎重にイルカは頷いた。
「余計なことに争いごとに巻き込まれるなよ。危ない場所は回避して、ゆっくりと帰ってきていいからな。」
火影は妙に念を押してきた。
ここまで火影が言うということは、よっぽど危ないことがあるのだろう、とイルカは気を引き締める。
「心得ました。」
返事をしたところで火影の部屋の扉が開いて入ってくる者がいた。
「あ、イルカ先生。」
ぱっと明るい顔になって話しかけてきたのはカカシであった。
「カカシさん、こんにちは。」
ぺこっとカカシと、それから火影に頭を下げてイルカは入れ違いに部屋を退室する。
カカシも火影からの任務を受けに来たのだろう。
扉を閉める際に火影がカカシに言っているのが聞こえた。
「いつまでも独りで、ふらふらしていると心配するじゃないか。」
カカシにお説教しているようだった。
「誰か好い人いないのかい?いつまでも独りで・・・。」
そこまではイルカの耳に聞こえてきた。
カカシが何と答えたのかは扉が閉まって分からなかった。



好い人とカカシさんを結婚させて、火影さまはカカシさんの子供を見たいのかな・・・。
「・・・カカシさんも大変だな。」
ぽつり、と呟いてイルカが火影の部屋の前から去ろうとした時、ばばーんと扉が大きな音を立てて開かれた。
まるで急いで開けたかのように。
「あ、イルカ先生!よかった、まだ居たんですね。」
カカシは嬉しそうな声を出した。
「俺、里外への任務を受けたんですがイルカ先生もですよね?」
「・・・はい。」
「今から任務に行くんでしょう。よかったら、大門まで一緒に行きませんか。」
断る理由もなくイルカは素直に、それに従った。



木の葉の里ので出入り口、あうんの門までカカシと何気ない会話をしながら来ていた。
大門での別れ際、カカシが、とても心配そうな顔をしてイルカを見遣る。
「小耳に挟んだんですけど、イルカ先生が任務で行く国、何やら危ないそうですね。」
「そうみたいですね。」
しかし、任務なので行かなければならない。
大体にして任務には危険がつきものなのだ、危ないなどとは言っていられない。
「気をつけてくださいね。」
カカシは心配そうにしている。
「平気ですよ、俺だって忍者ですから。」
中忍だが、木の葉の里の忍者である。
いや木の葉の里の忍者ではあるが、中忍なのか。
イルカが不毛なことを考えているとカカシが溜め息を吐くのが聞こえた。



「ああ、イルカ先生が心配です・・・。」
「ご心配していただけるのは嬉しいですが、俺も一応、中忍なので。」
密やかに進言するとカカシは首を振った。
「そう言う事じゃなくてですね。」
イルカを、じっと見つめてくる。
その目は妙な熱を持っていた、情熱的とも言うべきか。
カカシの怪しげな雰囲気にイルカは一歩、引き下がった。
第六感とも言うべき予感がイルカに危険を知らせていた。
カカシと別れて任務に行け、と。
この人通りの多い場所で、カカシが何かとんでもないことを言おうとしている。
イルカは、そう予感した。
そして、その予感は的中した。



じっとイルカを見つめていたカカシは唯一、出している右目を瞬かせてから言ったのだ。
「俺、イルカ先生が好きなんです。」
思いつめたような声だった。
「昨日の質問も、割と本気でイルカ先生の訊いたけど、はぐらかされちゃったし。」
気のせいか、カカシの右目は、ほんのりと和らいだ赤色に染まっている。
イルカに本気の本気で言っているらしい。
「イルカ先生、好きです。」
だがイルカにカカシが近くにいるのに、声が遠くから聞こえてきていた。
周りに人が大勢、いるのにカカシと自分との空間だけが、すっぱり切り取られたみたいな錯覚に陥っている。
カカシさん、何を言っているんだ・・・。



カカシの声は聞こえているのに言っていることが解らない。
解ろうとしても頭が拒否していた。
人生、生きていたらこんなこともあるのか、と他人事のように思うことで、イルカは現実逃避してしまっていた。
躊躇うようにカカシが言葉を述べる。
「イルカ先生、好きです。お友達としては付き合ったので、今度は恋人として付き合ってください。」
言われてしまった。
カカシは真剣だ。
それは顔を見れば分かる。
でも、とイルカは大きく息を吸い込んだ。
自分は男で、それに何よりカカシの親代わりのようでもある五代目火影の言ったことが蘇る。
誰か好い人いないのか?
火影はカカシの結婚を望んでいるような気がする。
少なくとも、その誰か好い人にイルカは該当しないであろう。
その時点でイルカの答えは決まってしまった。
これ即ち、否、と。



きっと大切な人だから1
きっと大切な人だから3






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