きっと大切な人だから 1
夏も終わり秋風が吹くようになった、ある夜。
仕事帰りに、なんとなくカカシと二人で飲みに来ていたイルカは話の流れでカカシの誕生日が今月であることを知った。
今は九月初めだから、カカシの誕生日まで二週間くらいだ。
「へええ、カカシさんて、九月生まれなんですねえ。」
ちょっと意外と思いながらイルカはカカシを見た。
カカシ白を連想させるの外見から、誕生日は九月のような時期ではなく雪の降る頃だと勝手に思い込んでいたのだ。
「そうなんです、俺、九月の十五日が誕生日なんですよねえ。」
カカシは酒のせいか、ほろ酔い加減で絶え間なく笑っている。
酒を飲むのが楽しいらしい。
「そうだったんですか。」
カウンターの席に仲良く並んで座り、カカシの話しに相槌を打ちながらイルカも酒を飲む。
酒を飲んだ、ぼんやりとした頭でイルカは、ぼんやりと思った。
誕生日っていったらプレゼント?
何かあげた方がいいのかなあ、とカカシに訊いてみた。
「カカシさん、誕生日に何か欲しい物ってありますか?」
もしも、それがイルカの手に入れられる範囲の物ならば、日頃、世話にもなっているし贈ろうかなと思案する。
欲しい物にもよるが。
「欲しいもの、ねえ。」
ちら、とイルカに流し目をくれてからカカシは答えた。
「恋人ですかねえ。」
言ってから反応を見るように、じっとイルカを窺っている。
「こいびと・・・。」
カカシのいう『こいびと』とは恋人なのであろう。
そういう人が欲しい年頃なのか、カカシさん。
仕事一筋のイルカにとって、いまいち、ぴんと来ない話だ。
「恋人、か。」
現在のところ、好きな人もいないイルカにとってはイメージが沸いてこない。
恋人のいる生活って、どんなだろ?と想像してみても分からなかった。
「ところでイルカ先生は・・・。」
「は、俺?」
突然、カカシに話を向けられてイルカは戸惑う。
「恋人は欲しくないの?」
「欲しくないことはないですけれど・・・。」
今は考えられないだけだ。
仕事が忙しくて悲しいことに恋愛をしている暇がない。
「じゃあ、好きな人はいる?」
「好きな人って言われても・・・。」
「気になっている人とかいないんですか?」
何故かカカシは矢継ぎ早にイルカに質問してきた。
「うーん・・・。」
暫し、考え込んでからイルカは首を振る。
「今はいません。」
その答えにカカシは残念そうな、それでいて安心したような表情になった。
「そうですか、いないんですか。」
呟いてから、再び酒を飲み始めた。
イルカも倣って酒を飲む。
横目でカカシを見てから先日の、ある話を思い出していた。
それはイルカが時々、仕事を手伝っている五代目火影の呟きだ。
仕事の合い間に五代目火影は盛大に溜め息を吐いて言っていたのだ。
「カカシも早く、好い人見つければいいのにねえ。」
独り身のカカシのことを案じていた。
親のように。
危険な任務に就くことも多いカカシだ、きっと誰か傍にいてカカシを支えてほしいと思っているのだろう。
そのことを思い出してイルカの胸は、ちくっと痛んだ。
理由は分からないが。
そっか、と小さく息を吐く。
カカシさん、恋人が欲しいのか。
自分の誕生日を一緒に過ごす人が・・・。
カカシの年齢からいうと恋人になる人は、きっと結婚を前提とした人となるに違いない。
そう考えると更にイルカの胸の痛みは増してきた。
どうしてだろう。
カカシの恋人のことを考えると、急にイルカは息苦しくなってきた。
カカシとは階級は違えど、いい関係と保っている間柄なのに。
それだけの仲のはずなのに。
今日だって、偶々、仕事帰りにカカシと会い途中まで一緒に帰ることになって、それがどうせなら夕飯も一緒に、ついでに酒でもという話になったのである。
それだってカカシさんの方から誘ってきたんだけど。
でもイルカも独り身であることを知っているから、気軽に声を掛けてきたのだ。
イルカは、そう思おうとした。
優しく接しくれるのも、俺が年下で階級も下だしって、気を遣ってくれているんだ。
考え込んでいるとカカシに話しかけられた。
「イルカ先生。」
「あ、はい。」
深く考え込んでいたイルカが顔を上げると思いのほかカカシの顔が近くにあった。
カカシの端正な顔に、どきどきしてしまう。
こんな時だが、男前だ、と思ってしまった。
「じゃあさ。」
カカシは秘密でも言うかのようにイルカに囁いてきた。
「俺はどう?」
「え。」
カカシは何を言っているのだろう。
瞬きして見返すとカカシは低い声で囁いてきた。
「俺のことは好き?それとも嫌い?」
酒に寄って興じてでもいるのだろうか。
何と答えたら、とイルカは迷ってしまう。
カカシさんのことは嫌いじゃない、嫌いだったら二人で飲みに来やしない。
だったら好き・・・。
否定できなかった、嫌いじゃなければ好きなんだと思う。
俺はカカシさんのことが好きなのか・・・。
イルカは唐突に出した自分答えに、大いに驚いたのだった。
きっと大切な人だから2
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