きっと大切な人だから 13
「ふーん。」
火影は、なるほどねえ、とうなづいた。
「そんなことがねえ。」
ちょっと、がっかりしている。
「カカシの好きな人はイルカだったのかい?」
「ええ、まあ。」
今更、隠すこともないのでカカシは正直にいった。
「火影さまも、いい人見つけろって言っていたじゃないですか。」
「そうだけどねえ。」
納得のいかない様子の火影だ。
「カカシはいい人、見つけろって言っておけば勝手にどうにかすると思っていたから、そう言っていたんだけど。」
ふう、と溜め息を吐いた。
「イルカはねえ、多分、あのお人好しな性格だから結婚もしないで他人の幸せを自分のことのように喜んで一生を終えそうだから見合いでもと思っていたのにねえ。」
心底、残念そうにしていた。
「イルカ先生に、お見合いは必要ありませんから。」
カカシは、はっきりと断った、自分のことじゃないけれど。
「イルカ先生には俺がいますから。」
「でも、まだなんだろ?恋人じゃないんだろ?」
痛いところを突っ込んでくる。
「まあ、その、これからってことで。」
歯切れ悪く答えると火影は肩を竦めた。
「ま、いいけどね。」
イルカのいる部屋を指差した。
「イルカは、もう帰っていいよ。三日ほど休んでいいと言っておいた。」
「そうですか。」
「カカシは罰として一日だけ休みだよ。」
イルカのことを黙っていた罰として、と火影は言った。
「じゃ、あとは自分でなんとかしな。どうせ、イルカを連れ帰るんだろ?」
「はい。」
「頑張れよ。」
ウインクすると火影は行ってしまった。
カカシは深呼吸すると部屋の扉をノックした。
コンコン、コンコン。
中から返事はない。
「イルカ先生、俺です。カカシです、入りますよ。」
声を掛けてから扉を開いた。
ベッドに腰掛けていたイルカはカカシが入ってくると、はっとしたように顔を逸して俯いてしまった。
俯いてしまったけれど、元気そうな姿にカカシは安心する。
「よかった、怪我が治って。」
イルカの近づくと、頑なに下を向いてしまって動かない。
怒っているのか、とカカシは思ったが言うべきことを言った。
「イルカ先生、すみませんでした。勝手なことをして。」
イルカから返事はない。
「怒っていますか・・・。怒っていますよね。」
それで、あの、とカカシは切り出した。
「さっき、火影さまから聞いたんですが、記憶なかった時の記憶が残っていると・・・。」
そこまで言うと、突然、イルカが声を上げた。
「わーっ!言わないで!」
カカシの声が聞こえないように両耳を塞いでいる。
「言わないで!言わないでください!」
「イルカ先生、どうしたの・・・。」
「記憶がなかった時の俺は血迷っていたんです。魔がさしていたんです、変だったんです。」
どうやらイルカは記憶がなかった時、カカシの隠れ家で自分がしたことを思い出すことに抵抗があるらしい。
「カ、カカシさんに、あ、あんなこと言うなんて〜。」
よくると俯いたイルカの首筋は真っ赤になっている。
「なんで、あんなこと言ってしまったんだ俺!ああ、もう!記憶がない時の俺の馬鹿!」
馬鹿馬鹿、とイルカは自己嫌悪に陥っていた。
「もう消えてしまいたい〜。」
「イルカ先生、落ち着いてください。」
カカシの方は逆に冷静になってくる。
どうやらイルカはカカシに怒ってなどなく、自分のしたことについて苦悩しているらしいのだ。
そっとイルカの背に手を当てて、ゆっくりと撫でる。
びくり、とイルカの体は震えたものの逃げはしなかった。
ゆっくり撫でているとイルカは落ち着いてきたようだった。
耳は押さえているものの顔は、だんだんと上がってきた。
顔が見える位置まで上がるとイルカの顔は、首筋と同じく真っ赤になっている。
「イルカ先生、俺ね、嬉しかったんですよ。」
穏やかな声でカカシは話した。
「俺が勝手なことしたのは解っているけれど、いっときでもイルカ先生と恋人になれて。今度は・・・。」
カカシは耳を塞いでいるイルカの両手を優しく掴み、耳から剥がす。
自然、イルカはカカシの顔を見た。
「本当の恋人のなりたいんです。」
真っ直ぐに目と目を合わす。
「イルカ先生、任務前に俺が言ったこと覚えていますか?」
イルカの首が縦に振られた。
カカシが言っているのは、好きだと告白してお付き合いしてくださいと申し込んだことだ。
「返事をください、できたら今、ここで。」
隠れ家で記憶がないイルカの言動から考えたらイルカはカカシのことを嫌ってはいないはずだ。
現に今だって、カカシのことを責めたりしていない。
なのに、イルカが漸く口に出した言葉は全く違うコトだった。
「俺の任務は?」
「終わっていますよ。報告は里に届いています。」
「任務期間については?」
「ちゃんと期間内に報告は里に届いていて、イルカ先生も任務期間内に里に戻ってきています。」
責任感の強いイルカのことだから任務のことが気になったのだろう。
そういえば、今日はイルカの任務期間の最終日に当たる日だった。
そのことを言うとイルカは何かに気がついたように顔色を、さっと変えた。
そして・・・。
掴まれていた手をカカシから取り戻すと、予想もしてなかった行動に出てきた。
「カカシさん!」
イルカの方からカカシの首に腕を回して抱きついてきた。
「今日、カカシさんの誕生日じゃないですか。」
ものの見事にカカシは自分の誕生日を忘れていた。
イルカのことを考えすぎて。
「お祝いしたいと思っていたのに。」
「そうだったんですか、嬉しいなあ。」
抱きついてカカシの肩口に顔を押し当てているイルカからくぐもった声が聞こえた。
「カカシさん、誕生日おめでとう。」
その後に、お付き合いの返事も聞こえてきたのだった。
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