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Forever Thirty5



一晩、病院で治療を受けたイルカは次の日の昼にはベッドに起き上がれるようになっており、夕方には退院の許可が出た。
常日頃、鍛えている忍の体は強靭だ。
回復する時は早い。



退院時、迎えに来てくれたカカシにイルカは照れたように笑った。
「カカシさん、忙しいのに。態々、来てくれなくても一人で帰れたのに。」
一晩入院しただけなので、荷物も少なくイルカ一人でも退院に支障はない。
「いーの。」
カカシは、のんびりと笑う。
「イルカ先生と一緒に家に帰るというのが重要なんです。」
「そう、ですか?」
「そう。また、一緒に家に帰ることができて俺は幸せです。」
本当の気持ちが、つい出てしまった。



それはイルカが行方不明になって見つかって、そして意識が回復した時に心の底から感じた素直な気持ちだった。
イルカ先生がいればいい。
俺にとって、一番大事な人だ。
そして微かに思う。
誕生日はまだ先だが、いるかいないか分からない神様とやらが前倒しで俺の誕生日に贈ってくれたものは、イルカ先生だったんじゃないか、と。
つまりイルカとの再会だ。
再び、イルカに会えたことは大きな喜びで何より生きていてくれて良かった、と沁み沁みしたのだ。
無論、神様云々とイルカに言うつもりはない。
このことはカカシは心の内にしまっておくことにした。
そして、まあ、誕生日の贈り物は、もういいかとも思ったのだ。



病院から家への道を歩きながらイルカが、ぽつりぽつりと話してくれた。
「実は今回の任務が結構、危ないなあ、やばいなあ、と思って、任務に出立の日、カカシさんに言った方がいいか迷ったんです。」
「何を?」
「言っても怒りませんか。」
イルカは上目遣いで伺うようにカカシを見る。
「多分・・・。」
カカシに答えを聞いて、少し躊躇った後、イルカは告白した。
「もしも・・・。もしもですよ、もしも、俺がいなくなって・・・。」
「・・・いなくなって?」
「カカシさんは独りになっても大丈夫かなあ、って。」
視線を足元に落としながらイルカは独り言のように呟いている。
「俺、カカシさんのように強くないから・・・。始めから敵に勝てないと思っているわけじゃないですけど、万が一のこともあるし・・・。」
足元の小石をイルカは蹴っ飛ばした。
小石は、ころころと転がっていく。


任務に行く日、カカシを見つめていたイルカの瞳の色に迷いがあり、少し哀しげだったことをカカシは思い出した。
これは、このことを意味していたのか。



「何、言ってるんですか。」
所在無げに投げ出されているイルカの手をカカシは取った。
離さないように握り締める。
「俺のところに帰ってくるって約束したじゃないですか。」
「それは、そうなんですけど。」
イルカは弱気な様子を見せる。
「でも、駄目な時は駄目で・・・。すっぱり諦めることも必要かなとも思ったんです。」
つまりイルカは、一度は覚悟をしたということなのか。
生きることを諦めることを。
「でも、いざ、その時になったら走馬灯のように色々、浮かんできちゃって・・・。」
カカシさんのことばかりが頭の中を占めて、とイルカは俯いた。
「それもカカシさんとの楽しいことばかりが浮かぶんですよ。」
ぎゅっとイルカは唇を噛んだ。



「そしたら、そしたら・・・。」
不意にイルカが顔を上げてカカシの目を真っ直ぐと見た。
「諦めるのが嫌になって、それで、意識を失う時に何故かカカシさんが寝ている光景が浮かんで、俺がピンチなのに暢気に寝ているし、キスの一つでもしてやるかとか思って・・・。」
別に、その時、カカシは暢気に寝る訳ではなかったのだが、それはイルカの照れくささを隠す比喩だろう。
「それで?」
カカシは努めて優しく聞く。
イルカを、とても愛おしく感じたのだ。
「キスしても起きないし、でも、このままカカシさんに会えなくなるのも嫌だったし。だから、俺『迎えに来て』なんて言ってしまった・・・。」
イルカの告白は懺悔しているようにも聞こえる。
「本当は言うべきじゃなかったのに。」
最後に言った言葉は小さい小さい声で聞き取り難かったがカカシの耳には、しっかりと届いた。
こういう時、無駄に聴覚がいいと役に立つ。


カカシは隣を歩くイルカを見た。
その顔は、イルカが自分に対する後悔とか無念さとか、無事に里に帰って戻って来れた嬉しさやカカシに会えた喜びとかで、ごちゃまぜになっている。



そんなイルカに愛しさが込み上げてきて、カカシは人けがないところまで来ると堪らず抱きしめた。
「イルカ先生、大好き。」
イルカの存在を確かめるように何度も回した腕に力を込める。
「帰ってきてくれて、ありがとう。嬉しい。」
頬を寄せるとイルカの頬は、照れているのか熱を帯びていた。
益々、愛しさが押し寄せてきたカカシは、そのままイルカの首筋に口付ける。
口づけに反応してイルカの体が強張った。
心臓が鼓動が早いので、外で抱きしめられることや口づけに少々、緊張しているようだ。
「カカシさん。」


イルカの顔を見て、カカシは微笑んだ。
「お帰りなさい、イルカ先生。」
微笑んだカカシの顔を見て、やっとイルカも緊張が解けたようだ。
カカシの肩口に、強く額をを押し当てると返事をした。
「ただいま、カカシさん。」
くぐもって聞こえた、その声が潤んでいたような気がしたがカカシは黙っていることにした。


カカシとイルカは静かに、そっと相手を抱きしめ安堵の息を吐いたのだった。




Forever Thirty4
Forever Thirty6





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