Forever Thirty2
任務が終わったカカシが喜び勇んで家に帰ると、ふと玄関の郵便受けに手紙が来ているのだ目に付いた。
カカシは専らイルカの家に住んでいる。
同棲というか居候というか、そのどちらも当て嵌まるというか、そんな感じだった。
手紙はイルカの家に届いたのだから、イルカ宛てだろう。
すっきりとした青色が印象に残るような封筒だった。
カカシは何となく、もやもやとしたものを胸に感じたのだが手紙を手に取ると「ただいま〜。」と声を掛けて家に入った。
「あ、カカシさん!」
イルカが玄関まで来て出迎えてくれた。
「予定より早い帰還だったんですね。俺、明後日くらいだと思っていました。」
カカシの無事な姿を見てイルカは、にこにことしている。
その笑顔にカカシは癒された。
疲れも、すっと溶けていくようだ。
「ただいま、イルカ先生。」
心の赴くままに、カカシは腕の中にイルカを抱きしめた。
「すっごく会いたかった。会いたくて会いたくて堪らなかったよ。」
そう訴えるカカシの背をイルカも抱きしめ返す。
「俺も会いたかったですよ、とても。カカシさんがいなくて寂しかったです。」
「本当?」
イルカの言葉を聞いてカカシは顔を上げて、イルカを見る。
暫く、二人は見詰め合った。
そして、どちらともなく微笑む。
「お帰りなさい、カカシさん。」
「うん、ただいま。」
自然と、そんな言葉が出た。
いい雰囲気が漂う。
それは温かくて甘いものでカカシは、その雰囲気を堪能していたのだが、イルカがカカシの手にあるものに気がついた。
「カカシさん、何を持っているんですか?」
「え。ああ、手紙。さっき、帰って来たとき見たら郵便受けに入っていたよ。」
はい、と差し出すとイルカは手紙を裏返して差出人の名を確認する。
すると、ぱあっと顔が輝いた。
「わあ、あいつからだ。久しぶりだなあ。」
懐かしそうに手紙の名前を見ている。
その顔は、とても嬉しそうでカカシに見せる嬉しい顔とは、また違っていた。
さっきまでイルカ先生は、俺のことだけ考えていてくれたのに。
理不尽な嫉妬心が出てきてしまう。
手紙を見たときの、もやもやとしたものの正体は嫉妬だったのだ。
「あのう。」
イルカは、伺うようにカカシを見た。
「手紙を読ませてもらっていいですか?久方ぶりの便りなので。」
控え目に聞いてくる。
本心では駄目だと拒否したいカカシであったが、そこは恋人の余裕で大人気ない態度を取ることは抑え「いいですよ、勿論。」と笑顔で対応した。
その笑顔は少し引き攣っていたが。
イルカは鋏を持ってくると手紙の端を丁寧に切り、中味を取り出す。
中には折られた便箋が何枚か入っていた。
カカシは、手紙を読むイルカの正面に正座して座りイルカの顔を、じっと見つめる。
さすがに手紙を見ようとは思わないがイルカが手紙を読んで、どんな表情をするのか見逃したくなかったのだ。
イルカは手紙を読みながら、頷いたり笑ったりしている。
どんな内容なのだろうか。
手紙の内容を聞きたい気持ちをカカシは我慢していたのだが、手紙を読み終わったイルカが少々顔を赤らめて便箋を閉じたところで、結局、カカシは我慢できなくなった。
顔を赤くしたイルカの顔が満足そうな、幸せそうな顔をしていたからだ。
猛烈に気になった。
もしや、と手紙の差出人との関係と疑いそうになる。
「イルカ先生、差し支えなければお聞きしたいんですが。」
「はい?」
無邪気な目でイルカはカカシを見る。
「その手紙が貰った相手と・・・。」
カカシは、ごくりと唾を飲む込み真剣な顔で聞いた。
「どんな関係なんですか?」
イルカは何て答えるのだろう。
どきどきとする自分の心臓の音がカカシの頭に響く。
「ああ、こいつですか。ええ、実は・・・。」
照れくさそうにイルカは答えた。
「アカデミーの同級生で中忍の昇任試験も一緒に受けた仲なんですよ。」
「へ、へええ。それで?」
「所謂、幼馴染みって関係ですかね。こいつ、今は遠方に任務に行っていて中々、会う機会はないんですが。」
「そうですか。」
イルカの説明を聞いて、カカシは、ちょっと、いや、かなり安心した。
会う機会がないのなら、関係が幼馴染から発展することもない。
「それでですね。」
恥ずかしそうにイルカは告白した。
「この前、恋人ができたって報告の手紙を出したんですよ。そしたら、手紙におめでとうって書いてあって。」
イルカが手紙を読んで顔が赤くなった理由が判明した。
ほっとしたのが顔に出ただろうか、面白しろそうにイルカはカカシを見る。
「もしかして、カカシさん、焼きもち妬きました?」
「いや、まさか、そんな・・・。」
図星だったが、気恥ずかしくて否定する。
そんな子供じみたことは、ばれたくない。
だが、そんなカカシの心うちをイルカは見抜いてしまったかのように続けた。
「焼きもちなんて可愛いなあ、カカシさん。」
そして何の前触れもなく、カカシの顔にイルカの顔が近づいてきたかと思うと、頬に何かが軽く触れた。
カカシの頬にイルカの唇が触れたのだ。
「さ、じゃ、ご飯にしましょうか。」
イルカは、何事もなかったかのように立ち上がり手紙をしまうと台所に行ってしまう。
なに、これ・・・。
なに、この不意打ち!
カカシは自分の頬を押さえた。
今の何だったんだ!
押さえた頬が熱を持ち熱くなる。
イルカ先生からキスされたってことだよな・・・。
いつもは強請ったって自分からはしてくれないのに、こんな時ばかり、さり気なく意表を突いてキスするなんて!
カカシはイルカにキスされたことで、ふわふわとした甘やかな気持ちになる。
全世界に祝福されて総てが心地よく感じ、まるで宙に浮いているみたいで、これが天国ってやつかも、とぽーっとした頭で思った。
「あ、カカシさん。」
そんな夢見るカカシに夕食の配膳をしながら、イルカが話しかけた。
「俺、今夜から任務が入ったので夕食、食べ終わったら発ちますね。」
「・・・え?」
「今夜、木の葉の里を出発して明日には任務地に着いて任務終了次第、帰還予定ですので、明日の夜か明後日の朝には帰ってきます。」
イルカの任務は短期間で終わるらしい。
だが、カカシは呆然となる。
「なんで?なんで、今?任務に行くの?」
「なんでって言われても任務ですから、仕方ありませんよ。」
「だって・・・。」
だって、もうすぐ俺の誕生日じゃん、とカカシは言い掛ける。
先ほどまで気分が天国にいるものだとしたら、今の気分は一気に地獄に突き落とされたようなものだった。
「すぐに帰ってきますから。」
ね?とイルカに微笑まれればカカシは勝てる術はない。
「絶対にですよ。」
カカシは強く念を押して指切りまでした。
イルカ先生は任務だから、とカカシは自分に言い聞かせ、イルカが任務に行くまでの短い時間、イルカにぴったりくっ付いて離れず、会えない時間の寂しい気持ちを少しでも埋めようとしたのだった。
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