二度あることは三度ある<二度目の3>
受付所に行くと既にイルカが仕事を終えてオレを待っていてくれた。
なんだか顔色が悪い。
血の気が引いているといった感じで。
少々、心配になったのだがイルカが「行きましょうか」とオレを促し受付所の外に出た。
なんとなく人目を避けたいようだった。
外に出て少し歩いてからイルカは足を止めた。
そのまま、オレに頭を下げる。
「すみませんが」
申し訳なさそうな声がする。
「体調が思わしくないので今日の約束は辞退させていただいていいでしょうか」
やっぱり。
そんな気がしていたけど、そうだった。
「ええ、イルカ先生の体調が優先ですからいいですよ。気に病まないでください」
そう言うとイルカは、ほっとした笑みを浮かべた。
「本当にすみません」
「いえいえ、しょうがないですよ」
すかさず、フォローを入れる。
「体調の悪いときは無理しないでください」
背中の傷が痛むのかな・・・。
オレは、その傷、見たことないけど。
「ありがとうございます」
イルカはオレに言った。
「はたけ上忍」
はたけ上忍・・・。
そういや、最初は「はたけさん」ってイルカに呼ばれていたっけ。
それが「カカシさん」になって、すごく嬉しかったのに。
また「はたけ」から始まるのか〜。
いつ、また「カカシさん」と呼んでくれるのか。
道は長い。
「では、これで失礼致します」
詫びたイルカがオレの前から去ろうとする。
「あ、ちょっと待って」
慌ててイルカを呼び止めた。
横に並ぶ。
「家まで送っていきますよ」
「いえ、大丈夫ですから」
顔色が悪いのに健気にイルカは首を横に振る。
「大人ですから、ちゃんと家まで帰れます」
結構、頑固だった。
「まあまあ、いいじゃないですか」
傷の痛みでイルカは、ちょっと苛立っているのかも。
オレは努めて雰囲気を和ませた。
「送っていくだけですから」
にこにこしながら言ってみるとイルカは少し頬を染めた。
「・・・すみません」
消え入りそうな声だった。
イルカの家に行く道すがら話をした。
「調子が悪いって背中の傷が原因ですか」
気になったので訊いてしまった。
「ええ、まあ」
イルカは言葉を濁す。
背中の傷の原因は火影さまから聞いているので追求はしなかった。
実は一度、里に戻ってきたオレだったが火影さま直々の命令でほんの少しだけ里を留守にしたのだ。
その間に事件は起こりイルカは背中に傷を負った。
オレがいれば守ってやれたかもしれないのに、と思うと悔しい気持ちもあるけど、こればっかりはどうにもならない。
気持ちの持って行き場がなくて辛いけどね。
「病院に行かなくていいんですか」
自宅で休むのもいいけど医者に診てもらうのも大事なことだ。
「病院は昼間、行ってきたんです」
「ああ・・・」
もしかしてオレのところに来たのは病院の帰りだったのかも。
「薬も処方されていますので、それを飲んで寝れば快復すると思います」
「だったら良かったです」
よかったなあと思ってイルカを見つめてしまった。
それにイルカを見て話して、一緒にいて。
好きだなあと改めて思った。
「あのう・・・」
オレが余りにも見つめていた所為かイルカがオレから逃げるように、そっと顔を逸らした。
仄かに赤いのは気のせいかな。
「はたけ上忍は優しいんですね」
「ええ、まあ」
この優しさはイルカ限定だけどね。
好きな人に優しくしたくなるのは素直な気持ちだ。
「それに」
逸らした顔を戻してオレの顔を、じっと見てきた。
「なんだか初めて、お会いした気がしません。前にどこかでお会いしましたか?」
・・・・・・そりゃ、そうだ。
だって前に会っているから。
イルカがオレのことを忘れているだけだから。
本当は思い出してほしいけど我慢。
でもイルカの心の奥底にはオレとの記憶があるんだなあ、と思うと嬉しくなった。
だから初めて会った気がしないんだろう。
オレと会ったことがあると言ってしまえばいいのかもしれないけれど。
なんか、まあ、あれだ。
オレのイルカが好きな気持ちに変わりはないし、できたら自然に思い出してくれたらと思う。
無理に思い出すことでイルカの体に負担はかけたくないし。
で、あれこれ話しているうちにイルカに家に着いた。
余談だがイルカの家が分かってラッキーと心の中で密かにガッツした。
「じゃあ、これで」
ありがとうございました、と礼を述べるイルカにオレは告げた。
「今日の約束は、また今度ってことで。背中の傷が治ったら行きましょうね」
それまで保留ですよ、と念を押して言うとイルカは微笑んで頷いた。
その笑みはリラックスしているような感じでオレに気を許してくれたのかと思わずにはいられなかった。
二度あることは三度ある<二度目の2>
二度あることは三度ある<三度目>
text top
top