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二度あることは三度ある<二度目の2>



「あ、あの・・・」
人間、パニックに陥ると上手く言葉が発せられないと身を持って実感。
貴重な体験だ。
じゃなくて!
なんでイルカがオレと会って「初めまして」なんていうわけ?
はにかんだ顔は以前と変わってなくて可愛いままだから、いいとして。
オレのこと知らないってこと?
「よろしくお願いします」って言ったりしてさ。
どーいうことだ、いったい。
頭が真っ白になったままで、ママならない。
・・・儘ならない、だ。
そんなオレを差し置いて子どもたちは再びイルカに群がった。
特に一人の子がイルカを労わるような発言をする。
「イルカ先生、背中の傷はもう大丈夫?」
「ああ!うん、もう平気だよ」
イルカは優しげな顔して子どもの頭を撫でる。
「包帯も今は背中だけだしな」
安心させるように言っている。
「本当ですか。イルカ先生、いっつも無理しちゃうから」
こちらも心配そうにしている。
「無理するな、イルカ先生。この前まで包帯でぐるぐる巻きだったんだから」
こんなこと言うなんて珍しい。
オレとイルカ先生じゃ子どもたちの態度が全然違う。
千歩譲って、それはいい。
それは・・・。



肝心なことはだ。
オレを知らない人のように接するイルカと、それに背中の傷って何だ?
聞いてない。
火影さまだってイルカは元気だって言っていたのに。
違ったのか?
目まぐるしく考えて、どっと疲れた。
とにかく、色々はっきりさせないと。
「イルカ!・・・先生」
子どもたちをかき分けてオレはイルカに到達した。
「イルカ先生」
あ、イルカ先生、初呼び。
新鮮だ。
「は、はい」
急にオレに名を呼ばれたイルカは身構えた。
「なんでしょうか?」
背筋を正している。
「あのですね」
すっと、さり気なくイルカの片手を掬ってオレは両手で、それを包み込んだ。
「お互いのことを知るために今夜、食事でもどうですか?」
「え、今夜・・・」
突然の申し出にイルカは驚いている。
反射的に掴まれた手を引っ込めようとしたけど、そうはさせない。
「お互いのことと申しますと?」
「オレとイルカ先生の今後のことです」
「今後・・・」
はて、という風にイルカは首を傾げた。
よく分かってないイルカに代わりに子どもたちの援護射撃が来た。
「カカシ先生、何を言っているんだってば・・・」
「いきなりじゃイルカ先生、びっくりしていますよ」
「何を言い出すんだ」
子どもたちは呆れている。
「大人の話をしているんだから子どもは黙ってなさい」
一睨みすると子どもたちは仕方なさそうに肩を竦めた。



「で、先ほどの話の続きですが」
オレはイルカに一歩、近寄る。
体が触れるほどの距離になった。
「お互いのことを知るのは子どもたちを指導する上で役に立つと思うんですよね」
尤もらしく理由をつけた。
「これからオレがこの子たちを指導していかなければなりませんから」
真剣に訴えるとイルカは頷いた。
「オレでよかったら・・・」
「全然、いいです!」
イルカから承諾の言葉を貰った。
「怪我をしているということなのでアルコールは控えますから店はオレに任せてください」
「あ、はい」
「じゃ、何時に仕事が終わりますか?迎えに行きますから」
「そんな迎えなんて畏れ多いです」
「オレが行きたいんです」
してはいけないが、ごり押しするとイルカは仕事の終わる時間を教えてくれた。
「では、その時間にまた会いましょうね!」
「はい、それでは失礼します」
丁寧に一礼するとイルカは子どもたちに一声掛けて行ってしまった。
約束は取り付けたから後は夜だ。
で、子どもたちとの任務を素早く終えたオレはある場所へと向った。
イルカを迎えに行くまで時間はある。
ある場所って言うか、ある人のところか。
それは火影さまのところだ。



「火影さま!」
ばばーんと部屋の扉を開けると火影さまが顰め面をしていた。
「静かにせんか、馬鹿者」
怒られた。
「すみません。でも、オレが来た用件はお解かりですよね」
「察しはついておる」
火影さまの部屋は相も変わらず書類の山だ。
その間を、ずかずかと通り抜ける。
「イルカのことじゃろう」
火影さまは煙管を口に銜えた。
「イルカの記憶のことじゃな」
「それと背中の傷についてもです」
「分かった・・・」
気が進まないといった様子で火影さまは口を開いた。
「イルカは簡単に言えば、おそらく頭の怪我が原因が記憶を喪失していた。打ち所が悪かったのだろう」
オレも多分、そうじゃないかとは思っていた。
滑って転んで頭を打って記憶喪失なんて小説みたいな展開だけど。
「頭の怪我も治り、喪失した記憶も色々なことを試みて回復させようとした。その試みの一つが催眠術じゃ」
「催眠術・・・」
「催眠術は上手くいきイルカは記憶を取り戻した。だがのう」
火影さまは同情の目でオレを見た。
「記憶を取り戻したのと引き換えに、記憶を喪失していた間の記憶を喪失してしまったのじゃ」
「は?」
よく分からなかった、一度では。
「今、なんと仰いましたか」
「つまりイルカは以前の記憶はあるが、カカシとの記憶はない、ということじゃ」
「それって・・・」
「カカシのことは覚えていない、知らない、分からないのだ」
だからイルカはオレに「初めまして」なんて言ったのか。
ようやく合点がいった。
合点はいったけどさー。
「なんで教えてくれないんですか」
恨み言を言ってしまった。
「それは言えば、ややこしいことになるのは目に見えているからじゃ。本人に会った方が早い」
きっぱりと言われて、ぐうの音も出ない。
気を取り直して、続けて訊いた。
「で、背中の傷ってのは?」
「ああ、それは・・・」
事のあらましを話してくれた。
「なるほど・・・」
オレが担当している下忍の一人を庇ってできた傷だった。
それほどまでにイルカは、あの子に思い入れがあるのか。
オレと同じように。
それにイルカは言っていたっけ。
「とっても気になっていることがあるような気がする」って。
あの子のことだったのか・・・。
ちょっと溜め息。
イルカは色んなものを背負っているなあ。



「解りました」
オレがごねずに大人しく納得したのに火影さまは驚いていた。
「どうした、カカシ!病気か?」
失礼なと激しく思ったが、ぐっと堪える。
「いえ、これからイルカと食事ですので」
火影さまは更に驚いた。
「カカシ!」
「詳しいことはイルカに直接、聞くからいいです」
気が着くと迎えに時間になっていた。
早くイルカを迎えに行かなくちゃ。
確か、受付所にいると言っていた。
「ということで。では」
オレは華麗に火影さまの部屋を退室した。
イルカが忘れているなら、また最初から親しくなればいい。
好きな人には根気よく粘り強く、決して諦めない。
ちょっと待て!
自分で思ったことに仰天してオレは立ち止まってしまった。
好きって・・・。
誰が誰を?
オレがイルカを?
オレがイルカを好きだって!
そんな、まさか、あり得ない・・・ことないか。
イルカが好き。
しっくりくる言葉だった。



二度あることは三度ある<二度目>
二度あることは三度ある<二度目の3>




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