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風は何処に吹く・続8



「な、なななな、何を言っているんですか!」
カカシの言葉に激しく反応したイルカは、腕というより体で体当たりをして、カカシの腕から逃れようともがく。
「俺は困ってなんていません!」
「もー、それこそ、何を言っているんですか、ですよ」
カカシが呆れたように言いつつも、イルカを離そうとはしない。
イルカの抵抗など物ともしていなかった。
「現に今、困っているでしょう。こんなに俺に心配かけて困った人ですね」
「そ、それは悪いと思っていますけど・・・」
「非日常的な出来事で動転して、夜毎に枕を悲しみの涙で濡らして、あったかい俺の人肌が恋しくなっているんでしょう」
「それは、ちょっと違いますけど」
「俺の恋人としての慰めを必要としていますよね」
「・・・いえ、夜は木の葉丸と寝ているので寂しくないです」
「ひどい!俺というものがありながら他の男と!」
よよよ、とカカシが泣く真似をすればイルカが、くすっと笑いを漏らした。
「カカシさんたら、何を言っているんですか」
面白そうにしている。
「あ、イルカさん、笑ってくれましたね」
「・・・え」
「イルカさんは笑っている顔が一番です」
そう言って、ぎゅうとイルカを抱きしめるカカシ。
その腕は温かかった。




「ところで」
カカシはイルカを抱きしめる手を少しだけ緩めて、イルカのいる部屋を見回した。
「なんで、イルカさん、火影さまの家に住んでいるんですか?」
当たり前の質問だった。。
大きな屋敷の一部屋、それもかなり豪奢な作りの一室をイルカが自分の部屋として使っているのだ。
アスマも『イルカの部屋』という表現をしていた。
「もしかして、以前に住んでいたの?」
「え?ええ、まあ」
イルカは言い難そうに返事をしてくる。
何か深い理由があるのかもしれない。
「高校卒業までの二年間くらい、お世話になっていたんです」
「へえー、そうなんだ」
「はい」
そこから会話が途切れてしまった。
イルカは居心地悪そうにカカシの腕に中で、もぞもぞとしている。
「あの、そろそろ・・・」
「ん?」
「離してくれませんか?」
「イヤ」
一言で、ばっさりと断ってしまうカカシだ。
「イルカさんを離すなんて、そんなことしません。永遠の愛を誓っていますから、一生涯、共にいます」
「話が飛躍しすぎていませんか?それに、いつ永遠の愛を誓ったんです?」
イルカが、さっぱり訳が分からないという顔をしてカカシを見る。
「近い未来で、ですかね〜。俺は預言者なんで。予定調和ってやつですよ」
「カカシさんて」
ふふふふっとイルカが堪えきれないように笑う。
「本当におかしな人ですね」
「一緒にいて面白いでしょ」
「楽しいです」
ふと、カカシを見上げたイルカと目が合った。
視線が絡み合う。
カカシの目が細くなり、イルカを見つめる目が優しくなった。
その目に、ほんのりとイルカは赤くなる。
そして言った。
「カカシさん、ありがとう」
嬉しそうに、安心したように。



ちょうど、そのとき部屋の外で人の声がした。
「木の葉丸くん、落とさないでくださいね?」
「大丈夫だぞ、コレ」
ハヤテとアスマの甥っ子の木の葉丸の声だ。
「開けますよー」
閉じていた襖が開いて、ケーキとお茶のセットを持ったハヤテと木の葉丸がいた。
木の葉丸はカカシとイルカが抱き合っているのを見て、目を丸くしている。
「ケーキを皿に移して持ってきました」
ハヤテは二人が抱き合っているのを見ても顔色一つ変えない。
特に何もアクションはなかった。
「さ、木の葉丸くん、紅茶をこっちに渡してください。カップに注ぎますので」
木の葉丸が運んできたお盆を受け取り、淡々とカップに紅茶を注いでいく。
「ハ、ハヤテの兄ちゃん!」
木の葉丸がカカシとイルカを指差し、パニックになっていた。
「な、なんで男同士が抱き合っているんだ、コレ!」
「ああ、それは」
ハヤテは落ち着いて答えた。
「恋人だからですよ。好きだったら抱き合うのは普通のことです」
「・・・男でも?」
「男でも」
「・・・恋人だから?」
「恋人だから」
「ふーん、そっかー」
ハヤテの説明で何故か、アスマの小学生の甥っ子は納得している。
「なるほど、そうなのかコレ」
腕を組んで、うんうんと頷いていた。
そしてハヤテの「ケーキを食べましょう」と言う言葉で、悩みは吹っ飛んでしまう。
子供にとっては恋よりもケーキらしい。



「さ、カカシさんとイルカも、どうぞ」
「あ、ありがと」
イルカは木の葉丸に指摘された時点から真っ赤になって俯いていた。
ケーキを勧められても顔を上げられない。
「あれー、イルカさん、食べないの?」
カカシはケーキを食べるために、とりあえずイルカを腕から解放した。
隣に座って、くっ付いているが。
「俺が食べさせてあげようか」
あーん、と切り分けたケーキを口元に持ってきたカカシに「いいです」と断ろうとして口を開けた拍子に、口の中にケーキを放り込まれてしまった。
口に入れられたケーキをイルカは真っ赤な顔で、もぐもぐと咀嚼する。
「おいしい?イルカさん」
にこにこしているカカシ。
照れているのか恥ずかしいのか、イルカは、ぷいとカカシと反対の方向を向いてしまった。
「イルカさん、照れているの?かわいい顔を見せてよ」
「知りません!」
なんだか怒っているようで。
しかしケーキを食べ始めるとイルカの機嫌は、すぐに直ってしまった。
「すっごいおいし〜い!苺が甘い!」
「じゃあ、俺のもあげるよ」
はい、あーんとカカシがフォークに刺した苺をイルカに向けると、イルカは苺をぱくりと口にする。
苺を食べて上機嫌なイルカに、苺を食べたイルカに上機嫌なカカシ。
「あれが恋人同士のじゃれ合いです。痴話喧嘩ともいいます、痴話とは愛し合うもの同士がするたわむれながらする話です」
ハヤテが木の葉丸に説明している。
余計なことも言っていたが。
「ちなみに人の恋路に首を突っ込むと馬に蹴られてしまいますので用心してください」
「分かったぞ、コレ」
真剣な顔した木の葉丸が頷いている。
口の周りは白いクリームがついていた。




風は何処に吹く・続7
風は何処に吹く・続9




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