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風は何処に吹く・続続続続続続



どうやって家に帰ったか、覚えていない。
カカシは眠れぬ夜を過ごした。
イルカのことを考えると、居ても立ってもいられない。
早朝、日が昇ると家にいるのが、もどかしくなったカカシは熱いシャワーを浴びて、頭と体をすっきりさせると昨夜、訪れた場所にもう一度行ってみることにした。
もしかして、夢かもしれないし。
場所を間違えたかもしれないし。
夜だったから、狐に化かされたかもしれないし。
理由をつけて、訪れてみた。
しかし、やはり・・・。
「夢じゃなかった」
明るい日の光に照らされた場所は間違いなく、イルカの事務所が入っていたビルの場所で。
そこには何もない。
古ぼけたビルは建っていない。
その裏にあったイルカの居住していた家もない。
呆然とカカシが、その場に立ち尽くす。
やや、落ち着いて、気を取り直して周辺を見ると更地の隅の方に瓦礫の山がある。
昨夜は暗くて気がつかなかったが。
瓦礫に近づいてみると、コンクリートの塊やプラスチック片などがあった。 「・・・ビルの残骸?」
とすれば、何か異変があったに違いない。
カカシが、ここに来なかった一ヶ月と少しの間に。
すぐさま、携帯電話を取り出したカカシはイルカの事務所で働いていたハヤテに電話を掛けてみた。
ハヤテは携帯電話を所持している。
番号を聞いておいてよかった、と心底思いながら電話をしたのだがハヤテの電話は、電源が切れているか云々のアナウンスが流れるのみ。
「ち、繋がらない」
苦い顔をしたカカシは次に同じ高校の教師であり、同僚のアスマに電話をしてみた。
こちらもハヤテと同様のアナウンスが流れる。
「くー、使えない」
ぎりぎりと歯を噛み締めたカカシは、すたすたと歩き出した。
勤めている学校、高校に行こうと。
そこに行けば、少なくともアスマには会える。
会うことができれば、イルカについての情報が入手出来るはずだと思ったのだ。
イルカがどこでどうしているのか、早く知りたい。
早足で歩きながらカカシは、ふと思い出した。
そういや・・・。
アスマは少し前に休んだ日があったな、と。
何で休んだかは聞くことはしなかったが、だいぶ慌てていたのを覚えている。
一、二週間前くらいだったような。
とにかくアスマと会わなけりゃア、とカカシは急ぎ足だったのが、いつの間にか駆け足になっていた。



「ア、アスマ」
ぜーぜーはあはあと息を切らしてカカシは学校に到着した。
勤務先の高校だ。
「お、どうした?やけに早いじゃないか」
驚いたアスマは目を見開く。
「おまけに息も切らして。いつも、クールなカカシらしくねえなあ」
「そんなこと、どうでもいいでしょ」
電車から下りて走って来たのだ。
「ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
「お、今度はなんだ?」
以前もカカシはアスマに聞きたいことがあると尋ねたことがあったのだ。
それはイルカのことについてだった。
そして、今回もイルカのことだ。
「イルカのことか」
アスマに先手を打たれた。
「そう。よく分かったね」
「まあなあ」
幸い、職員室には時間が早いこともあり人は、まばらだ。
アスマとカカシの傍には誰もいない。
「イルカさんは、今、どこにいるの?」
聞きたいことだけ要点だけを、まず聞いた。
一番、気になることを。
アスマは、あっさりと答えた。
「俺んち」
「・・・はあ?」
「俺の家」
「・・・・・・な、なんで?」
「正確には理事長の家」
「火影さまの?」
「そうだ」
「生きているんだよね?」
「ああ」
「怪我とかは?元気にしているの?」
そう質問するとアスマの顔が曇る。
「元気といえば元気じゃねえ、でも病気でもねえ」
「どういうこと?」
「心労で、ぶっ倒れている」
「心労・・・」
「疲労もだな。体も心も疲れきって、動けねえってところか」
「なんで、そんなことに・・・」
全く理由は思い当らなかったが、イルカが無事で生きていることにカカシは、ほっとした。
「詳しいことは後で教えてよ」
職員室に人も増えてきたため、カカシは話を聞くのを断念した。



「ねえ、じゃあ、今はイルカさんに会えないってこと?」
仕事が終わらせたカカシはアスマと話をしていた、朝の続きの。
場所は放課後の屋上ではない。
大人らしく居酒屋に来ていた。
「ああ、そうだ」
さっきからアルコール度数の強い酒を立て続けにアスマは飲んでいるが、顔色は変わっていない。
酔っている様子もない。
どちらかというと、憂さ晴らしのように見えた。
「医者の指示だ。イルカも一人でいたいようだしなあ」
「いったい何があったのか、ちゃんと説明してよ」
がん、とカカシがグラスをテーブルに置いた音が響く。
すぐに、また酒の追加の注文をする。
「そうだなあ」
タバコに火を点けたアスマが煙を吐き出す。
白い煙は立ち上って、掻き消える。
「なんで、ビルは無くなったの?イルカさんの家は?」
「・・・火事で燃えてなくなった」
「火事?」
「イルカが仕事で不在のときに出火して、ビルと裏手にあったイルカの家が燃えた」
アスマは淡々と事実だけを話した。
「全焼だ。死傷者はいない」
タバコを吸いながら、アスマは宙の一点を見つめている。
「総て燃え尽きた」
そこまで話すとアスマはグラスの酒を飲み干した。
カカシは言葉が出ない。
アスマに倣って酒を飲み干す。
「イルカは大切にしていたものの大部分を失った、また・・・」
「また?」
それにはアスマは返事をしなかった。
カカシも、それ以上は追求しなかった。
いや、できなかった。



「で、仕事の失敗も重なってなあ。火事の後始末にも駆けずり回って大変だったみたいでよ」
「仕事の?」
そういえば、イルカは最後に会った時に長期の仕事でしばらく姿を消すとか言っていた。
「知ったのは、だいたい終わってからでよ。イルカも一言、言やあいいのに全部一人で抱え込もうとするから」
「・・・そっか」
「心身共にギリギリまで削って。馬鹿だよ、イルカは」
そうは言うものの、アスマの口調はイルカを心配しているとしか思えない。
「寝るのも食べるのも出来なくなって倒れるくらいなら、最初から言えっての」
ごくごくとアスマは注文して運ばれてきた酒を、再び飲み干す。
「今は甥っ子が傍にいるのが一番寛げるみたいでよ、少しずつ元に戻りつつあるが」
「甥っ子って?」
「俺の甥で小学生だ。木の葉丸って名前でイルカと気が合うのか懐いて、よく遊んでいるよ」
「・・・そう」
遣る瀬無くなってカカシは溜め息を吐き出した。
深い深い溜め息。
イルカが無事なのは分かった。
イルカの身の上に重大なことが起きて、それにイルカが対処していたのも分かった。
だけども、けれども。
ぐっとカカシは拳を握りこんだ。
悔しいと。
なんで、そこで自分を呼ばないのか。
イルカは携帯電話を持っていないが、カカシは持っているので携帯番号をイルカに渡している。
辛い時くらい、自分を頼ってくれればいいのに。
カカシのことを思い出さなかったのだろうか、欠片も。
自分の気持ちは伝えてあるのに、本気にしてもらえてなかったのだろうか?
二人は黙ったまま、酒を飲み続けた。
今夜は飲んでも飲んでも酔えそうにない。
「もしかして」
カカシは十何杯目かのグラスに口をつけてアスマに訊いた。
「前にアスマが休んだのってイルカさん絡みで?」
「ああ、そうだ」
「なんで、知らせてくれなかったのさ」
一言だけでも。
「・・・それは」
アスマが眉を顰めた。
「イルカに口止めされていて」
「口止めって何さ」
「カカシにだけは絶対に絶対に言うなってよ」
「なに、それ」
つまり、それはイルカはカカシに頼るつもりがないと言うことで。
カカシを拒否したということで。
喉が渇いて感覚に陥っていく。
心臓は、ばくばくと煩い。
イルカさんは俺を必要としていない?
俺はイルカさんにとって取るに足らない存在なのか・・・。
目の前が真っ暗になっていった。





風は何処に吹く・続続続続続
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