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風は何処に吹く・続続続



ある日、というよりもある夜。
早々と仕事が終わったカカシはイルカの元へと向っていた。
足取りは極めて軽い。
「イッルカせんせ〜、イッルカな〜」
節をつけて下手な駄洒落を歌にしている。
「待っていてね〜」
スキップなんかもしていた。
もう今は完全に覚えた裏通りの道を、すいすいと通り抜けるとカカシの目的の場所があった。
イルカが仕事をしているビルの前に着いたのだ。
何回も通いなれたビルの一室にイルカはいる。
探偵の看板を掲げ、事務所を構えていた。
イルカの仕事は所謂、探偵というものらしい。
その探偵らしき姿は未だに見たことはないが。
そしてカカシは高校の教師をしていた、一応。



事務所のドアをノックしてから返事も待たずにカカシはドアを開けてしまった。
ドアに掲げてある札には営業中ではなく、休業中の文字になっていたし。
ということはイルカの本日の仕事は終わっている。
少なくとも来客はないはずだと踏んだのだ。
ドアを開けると事務所の責任者であるイルカと事務所の事務と経理としているハヤテが一つの銀行の通帳を見て、何やら話していた。
「イルカ、この日に多額の入金がありますが、どなたからですか?」
「え、どれ」
イルカがハヤテの席の席に行き、通帳を覗き込む。
どうやら事務所専用の通帳がらしい。
「あ、ほんとだ。なんだ、これ」
「うーん、この日付から推理すると火影さまとイルカが一緒に行動していた日の翌日に入金ありますね」
「ということは、火影様絡み?」
イルカは本当に分からないのか、首を捻っている。
「何かあったかなあ」
悩んでいた。
そんなイルカにハヤテが諭すように説教している。
「振込相手は、ちゃんと確認してください。領収証をどこに送付したらいいか分からないじゃないですか」
「ごめん・・・」
「使途不明金は駄目です、お金の管理は明瞭にしておかないと」
「すみません・・・」
「明日にでも火影さまに連絡して聞いておいてください」
「はーい」
まるで子供とお母さんみたいだ、と見ていたカカシは噴出してしまった。



「あ、カカシさん、いらっしゃい」
「こんばんは」
イルカとハヤテが同時に言った。
本当に仲がいい二人だな、とカカシは思う。
それが友情だと分かっていても、ちょっぴり妬いてしまう。
「なに、笑っているんですか?」
顔顰めたイルカがカカシを見咎める。
「だってさー」
カカシはイルカと見つめた。
「ハヤテってイルカ先生のお母さんみたいなんだもん」
「お、お母さんって」
突拍子もない事を言われたイルカは、ぽっと赤くなる。
感情が非常に表に出やすい性質だ。
「それを言うなら、お父さんでしょう!ハヤテは男です」
・・・ちょっとずれたところで怒っていた。
「まあまあ」
ごほっと咳をしたハヤテが嗜める。
「いいじゃないですか、なんでも」
結構、適当だ。
そんな漫才みたいな遣り取りをする二人に和みながらカカシは口を出した。
「さっきの会話、少し聞こえちゃったんだけど」
「はい」
イルカが応じる。
「火影さまとイルカ先生が行動していた日って俺がイルカ先生とランチデートした日の夜?」
「ランチデート」
ほほう、とハヤテは突っ込む。 「デ、デートじゃなくて、一緒に昼を食べただけだって」
イルカがデーという単語に焦っている。
「カカシさんと二人で昼飯食っただけで何もないから」
「へええ、そうなんですか?」
ハヤテが冷やかしている。
表情が変わらないのが少々、不気味だが。
「何もって、例えば何のこと?」
イルカの発言で別のことに引っ掛かったカカシも突っ込む。
「何って、別に何も・・・」
口篭るイルカをカカシは、からかう。
「もしかしてキスとかキスとかキスとかキスとか?」
「違います!」
強く否定したイルカは話題を変えようと頑張っている。



「え、えっと、火影さまと出かけた日は・・・。黒塗りの高級車に乗せられて、でっかい日本家屋の庭がやたら広いお屋敷に連れてかれて、そこのご主人に晩飯ご馳走になったんだ、確か」
「それで?」
「晩飯は、すっごいゴージャスで美味かったー。伊勢海老、鮑に雲丹、イクラ。牛肉、豚肉、鶏肉、玉子。ビールに日本酒、ワインにビール!」
「・・・具体的な料理名が出てきませんが」
ハヤテが訝しげに聞くとイルカは首を振った。
「料理名なんて、聞いたこともないような名前で忘れた」
「イルカらしい」
「んで、飯を食べた後に火影さまとお屋敷のご主人は話をしていて、俺はお屋敷の中を見学に行って」
そこでイルカが、ぽんと一つ手を叩く。
「うろうろしたら、何かさー、何ていうの、あれあれ」
「・・・さっぱり分かりません」
「イルカ先生、何が言いたいの?」
「あれだよ、あれ」
じれったくなったのか、イルカが身振り手振りを加えてくる。
「あの、アクセサリー。女の人の。なんとかレットいうやつ」
「アンクレット?サークレット?」
「なんか、そういうの」
イルカの説明は要領を得なかったが、とにかく、そのアクセサリーを見つけたらしい。
そして、いたく屋敷の主人に感謝されたということだ。
「そっかー、なるほどねえ」
カカシは得心がいったように頷いた。
「失せ物探しが得意って、無意識なんだ」
「そうなんです。イルカの場合、たいてい無意識で」
ハヤテが同意する。
「いつの間にか、解決しているんですよね。イルカ自身も気づかないうちに」
「ふーん」
それは面白い、いや変わった能力だとカカシは思った。
本当にイルカが、そんな能力を兼ね備えているのか分からないが。
世の中に不思議なことの一つや二つ、三つや四つはある。
カカシがイルカに恋したことだって、その中に含まれるかもしれない。



「ということで」
イルカは、ごほんと咳払いをした。
「通帳の謎の入金の件は解決したので」
ちら、とカカシを見る。
「これから、恒例の慰労会を開催したいと思います」
「慰労会?」
眉を潜めたカカシにハヤテが説明する。
「要するに飲み会です」
「そう、時々、ハヤテと二人で飲み会をするんですが」
えっと、その、と何かを言いたそうにイルカはカカシを見つめている。
「も、もしよかったらですけど」
照れているのか、イルカは俯き加減で上目遣いだ。
「カカシさんも一緒にどうかなあっと」
イルカからのお誘いだった。
「いっつも事務所でしか会わないし、事務所以外だと昼飯食べたくらいで」
要するにイルカは自分との仲を深めたいのだ、とカカシは理解した。
「そういうことなら喜んで!」
がっとイルカの手を握る。
内心、飛び上がりたいほど嬉しかったのだが、やや控えめに喜びを表した。
「私は一次会で帰らせてもらいますので」
ハヤテが予め、言ってくる。
「そっか、残念」
寂しそうなイルカに対して、カカシはイルカと二人きりと色めき立つ。
お酒を飲んだイルカ先生は、どうなるんだろう?
大いなる期待も生じた。
あわよくば・・・・・・、なんて不埒な考えも生じてくる。
カカシは、わくわくしながら慰労会なる飲み会に参加した。
色々、楽しいこともあったのだが、カカシの最大の目的・・・。
アルコールで強か酔わせたイルカを家に送るという名目で、イルカの自宅を突き止めた。
「え、ここ・・・」
そこは意外な場所だった。
意外といえば意外だが、灯台下暗しというか。
イルカの自宅は、イルカの事務所があるビルの真裏にあった。




風は何処に吹く・続続
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