悲しいけれど、それが現実 14
それから何となく。
何となく、カカシとの距離が近づいていったような気がする。
少しずつだけど。
相変わらず、カカシを好きな気持ちは変わらなかったが、傍にいても辛くはなくなってきた。
不思議だ・・・。
隣にいるカカシを見て思う。
好きな気持ちは変わらない。
むしろ、前より強くなっている。
カカシの前で笑っていられる。
告白はしないけれど。
とても幸せだ、とイルカは穏やかな気持ちになっていった。
今日も仕事が終わり、カカシと一緒に帰っている。
「あ!」
夕日を見てカカシが小さく声を上げた。
「夕日が、とても綺麗ですねえ」
赤い光が二人を照らす。
「ほんとに」
しばし、夕暮れに見入ってしまう。
「こんな綺麗な光景があるなんて」
何回も夕日は見たけれど、カカシが隣にいれば取り分け綺麗に見える。
美しかった。
夕日を見て、カカシを見て。
イルカは自然と微笑んだ。
「カカシ先生、夕日に照らされて赤くなっていますよ」
言われて、ふふと笑ったカカシはイルカを指差す。
「イルカ先生だって」
そして二人して顔を合わせると笑みが零れた。
何も言わなくてもカカシとは気持ちが通じ合うような気がする。
目に見えない距離が縮まったためだろうか。
「カカシ先生」
言ってしまったのは雰囲気に呑まれたからか。
気持ちが溢れたのか。
イルカの口から言葉が出ていた。
「好きです」
カカシが出ている片目を大きく見開く。
「好きです、カカシ先生」
絶対に言わないと決めていたのに。
言ってしまった・・・。
告白してしまっていた。
はっと気がついたときには時、遅く。
慌てて口元を押さえてみても出てしまった言葉は取り消せない。
どうしよう・・・。
言うつもりなんてなかったのに。
イルカの顔から血の気が引いていく。
せっかく、カカシと良好で関係を築き、親しくなれたのに。
告白したことで総てがなくなってしまうかもしれない。
どうしたら・・・。
心臓の鼓動が嫌な感じで早くなる。
ぎゅっと握りこんだ拳は掌に汗をかいていた。
時間が戻ったらいいのに。
そんなこと思っても、魔法のようなことが起こるわけがない。
絶体絶命のピンチを言ってもいいだろう。
この場から全速力で逃げ出したい。
俺の人生、ここまでか・・・。
後悔したイルカが悟りの境地に辿り着いたとき。
ふわっとカカシの周りの空気があったかくなるのを感じた。
夕日と浴びている所為ばかりではない。
カカシは笑顔を浮かべている。
纏う空気が柔らかく、ふんわりで。
思わず、カカシを凝視した。
「イルカ先生」
カカシはイルカの告白をちっとも嫌がっている様子ではない。
どちらかというと歓迎しているような。
目を細めたカカシは言った。
「先に言われちゃったな」
「え?」
「俺もイルカ先生に好きだって言おうとしていたのに」
「え・・・」
「さっきね、強烈にイルカ先生に好きだという気持ちを伝えたくなったんです」
「えっ」
「でね、ムード満点だったし。俺、言おうとしたんですよ、好きだって」
じっとカカシはイルカを見つめる。
見つめて言った。
「好きです、イルカ先生」
「え」
信じられなかった。
「本当に好きです」
イルカの顔色を読んだのか、カカシが重ねて言う。
イルカの手を取り、手に手を重ねて握り締める。
「お互いの想いが通じ合っちゃったんですかねえ」
だから好きだって言いたくなったのかなあ。
のんびりとした口調でカカシが嬉しそうに呟く。
「俺とイルカ先生」
カカシの夕日で照らされた顔は赤く染まっている。
「同じ気持ちでよかったですね」
好きだという同じ気持ち。
「今、とっても幸せです」
もちろん、イルカも。
イルカも幸せな気持ち胸がいっぱいで。
夕日に照らされているイルカの顔も赤いに違いない。
それは夕日の所為ばかりではないだろうけど。
カカシに握られた手を、そっとイルカは握り返した。
悲しいけれど、それが現実 13
悲しいけれど、それが現実 15
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