悲しいけれど、それが現実 15
幸せ・・・。
カカシとイルカは同じ気持ちだった。
好きと言ってしまったけれど。
告白しないと決めていたけれど。
言ってよかった、多分。
目の前のカカシが自分のことを好きだなんて、まだ信じられないが。
「もしかして夢?」
都合のいい白昼夢でも見ているのかもしれない。
カカシは幻で。
「それとも幻術?」
空いている手で自分の頬を試しに抓ってみた。
「痛くない・・・」
じゃあ夢?
もう一度、今度はもっと強く抓ってみる。
「痛くないってことは・・・」
やっぱり夢か幻か。
「ちょっとちょっとイルカ先生」
更に頬を抓ろうとするイルカの手をカカシの手が掴んだ。
「赤くなってますよ、頬」
何でこんなことするの?とカカシがイルカの頬に触れる。
「痛そう」
ゆっくりと撫でる手は優しい。
まるで愛しい者に触れるかの如く。
「カカシ先生」
「はい」
勝手に言葉が出ていた。
「本当に本当に俺のこと・・・」
「はい」
「好き、なんです、よね・・・」
言ってから恥ずかしくなる。
かーっと体が熱くなった。
ばっ、馬鹿なことしてしまった・・・。
頭の中で思う。
なんてことを。
カカシから顔を隠したくて両手で顔を隠そうとしたが、イルカの手を握っているカカシは離してくれない。
「照れているの、イルカ先生?」
ふふ、と笑うカカシの声。
「可愛いね、イルカ先生」
「可愛い、なんて」
男が男に対して言うものだろうか?
女の子に言うなら、まだ分かるが。
「可愛いなんて女性に対する言葉ですよ」
例えば、アカデミーにいる新人教師の女の子とか。
「そんなの関係ないですよ。好きな人しか可愛く見えないのに、何で好きでもない人に可愛いなんて言わなきゃいけないんです」
カカシが拗ねている。
「俺はイルカ先生が好きなんですから。イルカ先生だけが好きなんですから、素直に俺の言葉を受け止めてください」
お願いされてしまった。
「すみません・・・」
しゅんとなって項垂れたイルカの頭をカカシは撫でる。
「まあ、これからですけどね」
カカシは肩を竦めた。
「告白したばかりだし、これからが俺にとっては本番なんですよ」
「本番?」
カカシは何を言っているのだろう?
「今まで散々・・・、さんっざんっイルカ先生に俺の気持ちをアピールしたのに気づいてもらえなくて」
ぐぐっとカカシが拳を握る。
「挙句に邪魔ばかりされて横槍入れられて、どんだけ苛立ったことか」
そんなことが会ったなんて、イルカはちっとも知らなかった。
アピールなんてあったけ?
思い出せない。
「これからは想いも通じ合ったことですし、大っぴらにアピールできます」
実に嬉しそうに笑った。
次の日、アカデミーに出勤するといきなり隣の同僚に言われた。
「何かいいことあった?」
「え?な、なに?」
心臓が、どきーんと大きな音を立てる。
「な、なんで?そう思うわけ?」
「いや、別に」
イルカを観察するように、じっと見ていた同僚はイルカから視線を外して大きな溜め息を吐いた。
「あーあ。俺にも早く春が来ないかなあ〜」
その口調は切実だ。
「あはははは。夏が終わって秋が過ぎて冬になったら、その次が春だって」
慰めるようにイルカが言うと更に溜め息を吐かれる。
「そういうことじゃないって」
イルカはイルカだ、と言いながら、どこか同僚は安心した風だ。
「そう?」
「うん、イルカは今のままでいて」
「あー、うん」
とりあえず、返事をして仕事に取り掛かる。
合い間にカカシのことを考えた。
昨日は、あれから途中まで一緒に帰って、それぞれ自分の家に帰った。
分かれ際にカカシが頭を掻いて、照れくさそうに言っていた。
「まだ、色々早いですよねえ。欲張ったらバチが当たりますね」
何が?と訊きたがったがその前にカカシは行ってしまった。
早いって何がだろ。
まあ、恋人になれば距離が縮まって友人以上に親しくなれるだろうけど。
ゆっくりいきましょう、とカカシは言ってくれた。
カカシ先生・・・。
今はカカシのことを考えても苦しくはない。
それどころか、胸がぽかぽかとしてきて、じわっと嬉しさがこみ上げてくる。
これが幸せってやつかあ〜。
カカシとは一緒に帰る約束をしている。
これから、ずっと一緒にいるだろう。
カカシといるのが現実になってきている。
もう悲しくなんかない。
嬉しい、それが現実なのだ。
終わり
悲しいけれど、それが現実 14
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