悲しいけれど、それが現実 13
カカシ先生・・・。
仕事をしながら、つい考えてしまうのはカカシのことばかりだ。
仕事に集中しないと。
昼休みに同僚が結論付けた。
「つまりさ」
昼食を食べながら。
「新人の女の子がイルカのことを気になっているって判明したら、今までの一連の行動は総て裏付けが出来るってわけ」
「へえ」
そう言われても実感がないし、よく解らない。
「イルカのこと密かに想っていたんだなあ〜」
いいなあ〜と同僚は呟く。
俺ももてたいと羨ましげに。
そんなことを言われても、今のイルカの頭の中を占めるのはカカシしかなかった。
夕方。
定時を少し過ぎた後、イルカは帰ることにした。
一応、仕事は終わっている。
明日からは、またアカデミーと受付所の仕事だ。
同僚に挨拶をしてから、先に職員室を出た。
外に出ると夕闇が辺りを覆っている。
ふう、と息を吐く。
ここんとこ、色々あった。
イルカの周りで目まぐるしく変化が起きているような感じがする。
特にカカシに関して。
カカシ先生・・・。
もう一度、息を吐いてイルカは歩き出した。
考えても解らないことは仕方がない。
帰って寝よ。
歩き出したイルカの前方に、すっと人影が現れた。
まるでイルカのことを待っていたかのように。
現に、その人影はイルカに呼びかけてきた。
「イルカ先生」
「カカシ先生!」
カカシだった。
にこ、と笑ったカカシはイルカに近づいてくる。
「どうしたんですか?」
イルカもカカシに近づいて。
二人の距離が縮まって。
すぐ、近くにカカシの顔があった。
「いえね」
カカシが頭を、がしがしと掻く。
「イルカ先生、病み上がりでしょ。今日は大丈夫だったかな〜って」
どうやら、イルカを心配してくれていたらしい。
「もう大丈夫ですよ」
心配してくれたことが嬉しくてイルカは微笑んだ。
「昨日はカカシ先生に看病してもらって、すっかり治りましたし。お昼もしっかりと食べました」
体調は完全に回復した。
「だったら、いいんですけど」
やはり、カカシも嬉しそうに微笑んだ。
「イルカ先生は元気なのが一番ですよね」
「え?」
「イルカ先生には、いつも笑っていてほしいというか、その。笑顔のイルカ先生を見ていたいっていうか」
少し口篭ったカカシの耳は少し赤い。
照れている。
子供みたいだ、とイルカは微笑ましくなった。
「そうだ」
不意に思いついた。
「カカシ先生」
「はい?」
「あのですね」
息を吸い込んで一息に言う。
胸がどきどきする。
「今日なんですけど、もしもカカシ先生がお暇なら」
ずっとカカシに誘われていたから。
「昨日のお礼に食事でもご一緒していただけませんか」
都合のいい理由もある。
「もちろん」
驚いたように目を見開いたカカシは、次に目を細めてして頷いた。
「喜んで」
「んじゃあ」
カカシは自分のグラスを、かちんとイルカのグラスにぶつける。
「イルカ先生の快気祝いってことで」
おめでとう〜の言葉を言われた。
「ありがとうございます」
飲んでいるのはアルコールではない飲み物だ。
「とりあえず、お酒は今日はやめにしましょ」
イルカの体を気遣ってカカシは、あっさりと言った。
「次のお楽しみってことで」
イルカ先生を誘う口実が出来ますからね、と。
「それは、どうも・・・」
食事をしながらカカシを何気ないことを話す。
それだけなのに、非常に心が落ち着いた。
・・・なんか普通だ、それに楽しい。
今まで悩んでいた過去の自分が思い出されて悔やまれる。
カカシを好きだと自覚してから、妙に意識していた。
・・・カカシ先生のお誘い、断らなければよかったかも。
話の流れの中で昨日のイルカの話題になり、自然な流れでイルカはカカシに尋ねた。
「そういえば、カカシ先生」
「ん?何ですか」
「昨日のことなんですけど」
ふと鮮明に思い出された。
「俺の話を聞いてください、と言っていましたよね?」
カカシは自分の話を聞いてほしい、というようなことを言っていた。
前後の話がおぼろげだが、そう記憶している。
「話って何ですか?」
飲み物を飲んでいたカカシは変なところに入ったのか、咽ている。
「げほっ・・・。イルカ先生、今、ここでそれを訊きますか」
「え、だって」
じゃあ、いつ訊けばいいのだろうか。
カカシに尋ねたいことは無数にある。
「あ、それに」
連鎖のように思い出した。
「以前、カカシ先生、受付所で俺の落としたペン拾っていきませんでしたっけ」
すっかり忘れていたけど。
「げほげほっ、げほっ」
イルカが更に追い討ちをかける。
「ああ、そうそう。昨日、職員室に行ったときに新人の女の子と何かあったんですか?」
カカシが激しく咽た。
「カカシ先生?大丈夫ですか」
慌てたイルカは背を摩ろうとしようとしたが、カカシに止められた。
「へ、平気ですから」
「でも」
「いいんです・・・。ちょっと激しく動揺しちゃって」
俺としたことが何てことだ、と言いながら息を整えている。
落ち着いたカカシが大きく息を吸って吐いた。
「そのお話は、また今度にしてください」
「あ、はい」
「俺は何事にも雰囲気重視な男なので」
「はい・・・」
「これだけは絶対に失敗したくないんです」
「はあ・・・」
やっぱり、カカシはよく解らなかった。
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