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彼の言い分 5




程なくしてイルカが見つかったと忍犬から連絡が来た。
どうやら怪我をして動けないらしい。
生きていることにホッとして、急いでイルカの元に駆けつけた。




イルカが木の幹に寄りかかり傍に忍犬たちが寄り添っている。
ざっと見たところ、イルカの右足が腫れていた。
腫れ具合から察するに挫いたか何かしたらしい。
「はあ〜、良かった。」
深々と溜め息とついて俺はイルカの傍らに跪き、顔を覗きこんだ。
「足、大丈夫?」
なのにイルカは変な顔をした。
そして憎まれ口を叩く。
「何で来たのさ。」
「え?」
「今、辞世の句を考えていたところだったのに。」
辞世の句って、ねえ。
「あのねえ。」
俺は足を素早く検分しながら言った。
「もう、足を挫いただけじゃない。痛かったら痛いって言えばいいでしょうが。」
イルカは、きゅっと唇を噛む。
そんな様子に少しだけ腹が立った。
意地張りすぎなんだよな〜。
「歩けないくらい痛いなら、俺におんぶして言ったら?」
「おんぶ、だあ?」
イルカが目を三角にして剣呑な声を出す。
怪我しても負けん気だけは衰えていないんだな。
「ごめんだね。いいよ、いいよ、放っておいてよ。」
なんなんだろう、今度は拗ねてるよ。
本当、困った子だな。



俺は忍犬たちに、もういいよ、ありがとね、と言って巻物に戻した。
そして有無を言わせずイルカを抱き上げ、自分の背中に乗っけた。
イルカの体重くらい抱き上げても背負っても全然、難なく移動できる。
「あの、ちょっと。」
イルカが困ったような声を出すけど無視した。
このまま一気に木の葉の里に帰ってやるんだから。
偶には上忍のすごさを見せてやろう。
そう決意した俺は自分でも珍しく、里まで全力疾走してみたのだった。




夜になって、やっと里についた。
報告は先に帰還した上忍がやってくれているだろう。
俺はイルカの足の具合が気になったので病院に直行した。
帰り道、最初は背中で、ぐずぐず言っていたイルカだけど。
途中、だんだんと無口になってしまった。
それとともに体温が上がったような気がしたのは、怪我した足が熱を持ったからだと思う。



病院で診察してもらうと足は確かに捻挫していたのだが、捻り方が酷かったらしい。
脚絆を解いて挫いた箇所を見ると、ひどく腫れていた。
これじゃあ、かなり痛かったんじゃないかな。
痛み止めくらい飲ませれば良かったなと後悔した。
イルカもイルカで痛いなんて一言も言わないし。
ともかく病院で処置をしてもらって、薬を処方してもらい一安心した。





「いろいろ済みませんでした。ご迷惑をおかけしました。」
治療が済むとイルカは頭を下げてきた。
生意気なことばっかり言っていたイルカが素直になる、この瞬間がなんか可愛いんだよな。
可愛いところが少し垣間見えて和んだのに、次のイルカの言葉に俺のテンションは落ちた。

「上忍、ありがとうございました。」
「あのね〜。」
ちょっと、むかっとしてしまう。
「いい加減、俺の名前を呼びなさいよ。教えたでしょ?」
それから、ついでに。
「イルカのフルネームも教えて。」
「え?」
あ、つい呼んじゃったよ、下の名前。
俺の心の中では、ずっとイルカって呼んでいたから。
「今の俺の名前じゃ?」
言いかけたイルカを強引に遮った。
「俺は、イルカの口から聞きたいの。」
また、呼んじゃったよ。
俺の言動に戸惑いながらイルカは恐る恐る言った。

「俺の名前は、海野イルカですけど。」
「海野イルカね。じゃあ、俺はイルカのことイルカって呼ぶから。」
「もう呼んでるじゃん。」
イルカが、ぼそりと呟く。
「それからイルカも俺のこと名前で呼ぶようにね。」
「名前って、畑上忍?」
「違うよ。カカシの方で。」
「あ、無理だから。」
イルカが手を振って断ってきた。
「あんた、上忍だろ?」
アンタ呼ばわりしてる時点で上忍と思ってないんじゃないの?
「あのさー。」
イルカに、もっと言ってやろうとした時に背後から声が掛かった。




「よう、カカシじゃないか。」
「なんだ、アスマか。」
大柄な髭の同僚で、俺と同じく上忍だ。
「何だ怪我でもしたのか?」
俺に話しかける、ついでに背後にいたイルカを覗き込んできた。
すると、さっきまで、あんなに威勢の良かったイルカが急いで俺の後ろに逃げ込んできたのだ。
髭の同僚から、俺の体で自分の姿を隠そうとしている。
俺の肩口から顔を半分出して様子を伺っているさまは何と云うか。
何と云うか。
すげー、可愛かった。



「俺は怪我人の付き添い。」
後ろに隠れているイルカを指差した。
「恋人が怪我しちゃってねえ。」
「なっ、何言ってんだよ。そんなじゃないだろ。」
「そうだね。」
俺は言い替えた。
「恋人候補が怪我しちゃってねえ。」
「おい、違うって。」
イルカが背後から訂正しろと俺の耳を引っ張る。
「あー、俺の子猫が怪我しちゃってねえ。」
「誰が子猫だ。」
アスマは顔を引き攣らせながら言った。
「なんか大変そうだな、じゃな。」
深入りしない方がいいと読んだのだろう、さっさと立ち去ってしまった。
アスマは何で病院にいたんだろう?
怪我でもしたのかな。


まあ、いいやと後ろを振り返るとイルカが、そろそろと俺から離れて逃げて行くところだった。





彼の言い分 4
彼の言い分 6




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