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彼の言い分 6




逃げようとしたイルカは怪我した足を引きずっていたので、すぐに捕まえることができた。
何で逃げるんだろ?
捕獲したイルカは、がっちりと俺の腕の中に囲われていて俺から離れることができない。
でもイルカは「離せよ。」と足が痛いはずなのに器用に暴れていた。
「まあまあ、いいじゃないの。」
「よくない。これ以上、知り合いに会いたくない。」
そう言って腕の中からイルカが睨んでくるけどさ。
全然怖くないんだな。
俺と一緒にいるのを見られるのが恥ずかしいの?
それって俺のことを意識してくれているってことだよね、と、うきうきとして俺は言った。
「イルカ、足を怪我してるんじゃないの、うちに来ればいいよ。」
うちって、つまり俺の家。
軽く言ったのにイルカは「上忍の家に。」って大仰に驚いている。
「やだよ。行けるわけないだろ。」
「あー、そ。」
俺は腕の中に、軽々とイルカを抱え上げた。
急ぐことも背負う必要もないから、腕の中のイルカの顔はよく見える。
イルカの表情の中には本気で嫌がっているようなものはない。
「下ろせよ、やめろって。」
「やーだよ。」
何となくだけど、イルカの言っていること、やってることの行動の原理が分かってきたような気がする。



意地っ張りだから思ってることの反対を言っちゃうんじゃないかって。
でも、本当に驚いたときと云うか怖い時は本心が出ちゃって安全なところに逃げてくる。
自分が安全だと思ったところにね。
さっき、アスマに会った時も知らない人が突然来たから俺の後ろに逃げてきたんだよね。
安全なところってのは、言い換えれば信用されているってことだよね。


イルカが反対のことばっか言うのは可愛くないけど、どうして、そう言うのか分かれば何故か可愛くみえてくる。
やだやだ、言ってるけど、それは本心じゃなくて。
意地張って頑張ってるからさ。


「ほらほら暴れないの。」
腕の中のイルカを赤ん坊をあやす様にすると、ぴたりと止まる。
「子ども扱いすんな。」と睨んできた。
「はいはい。」
足は怪我しているし肩口の傷は治りかけで、今が大事だし。
理由は色々あるから困らない、全部纏めて俺の家に連れて帰る理由にしちゃおう。




だから俺は抵抗するイルカを家に連れ帰った。
怪我の治療を口実にね。
イルカは抵抗はしていたけど、なんか嬉しそうな感じが伝わってくる。
誰かに世話されるのが嬉しいんだなと思う。
だから怪我が治るまで治ってからも、俺は甲斐甲斐しくイルカを世話してしまった。



居心地が、よっ程好かったのかイルカは怪我が治っても俺の家から帰る素振りも見せず、そのまま一緒に暮らしている。
一緒に暮らそうとか言うと、多分、イヤだって言うに決まっているし。
意地っ張りは相変わらずだけど、そんなところも、ひっくるめて俺にとっては可愛いからいいんだ。
いつか、イルカが大人になってから伝えてもいいことがあると思うし。
大人になったイルカが、いつか俺に伝えてくることもあるだろう。
今は、これでいいんだ。




それにイルカが俺の家にいることで、忍犬たちも、とても喜んでいた。
イルカと忍犬たちは聞いたところによると、買い食い仲間だったらしい。
俺が忍犬たちを里に、お使いに行かせた時に、たこ焼きを買い食いしているイルカに会って、その匂いにつられて、じっと見ていたら、たこ焼きを分けてもらったらしい。
それから会うと度々、たい焼きやらコロッケやらソフトクリームやらを一緒に分けて食べていたんだって。
道理で頼んだ、お使いは簡単なのに帰るのが、やけに遅い時があっておかしいなと思っていたけど。
そういう訳だったとは。




それからイルカは俺のことを、ようやく名前で呼んでくれるようになった。
カカシさん、ってね。
呼び捨てでも良かったんだけど。
多くは望まない。
だってカカシさんと呼んでくれたのは、一緒に暮らして一年後のことだったから。
名前を呼んでくれるまで少し時間がかかったけど、俺が家に不在の間、イルカが俺の名を呼ぶ練習をしていたと忍犬がこっそり教えてくれたから待つこともできた。



これから、長く一緒にいることになると思うけど。
よろしくね、イルカ。




終り





彼の言い分 5




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