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二人きり 第八話



てくてくと深夜、カカシの家への道を歩く。
カカシの家は以前、教えてもらったので知っていた。
歩きながらイルカは考える。
カカシさんどうしているかな〜とか、俺が行ったら驚くかな〜とか。
ちょっとした、わくわく感が生じた。
いきなり訪ねたら何て言うだろう?
どんな顔するかな?
カカシが驚く顔が目に浮かぶ。
それを考えてイルカは笑みを浮かべた。



しかし、カカシの家が近づくに連れて、わくわく感は徐々に薄れてきた。
逆の感情が芽生えてきたのである。
俺は自分の都合でカカシさんの家を訪ねているけど、カカシさんは?
もしかして、もう寝ているかもしれない。
明日は早朝から任務で、その準備に追われているかもしれない。
ゆっくりと自分だけの時間を楽しんでいるのかもしれない。
それらを自分が邪魔するのかもしれない。
考え出したら止まらなかった。
俺、今日、カカシさんちに行かない方がいいんじゃないか。
明日、改めて会うのがいいよ、な?
カカシに会いたいという決心が鈍ってくる。
いきなり訪ねるなんて、よくよく考えたら大迷惑・・・。
そんな結論に達したイルカは既にカカシの家の玄関口まで来てしまっていた。



しまった!
考えながらも無意識のうちに足はカカシの家を目指していたのだ。
ここまで来てしまったけど・・・。
夜に人様の家を訪問するのは考えものだ。
やっぱり明日にしよう。
カカシに会いたい気持ちをイルカは堪える。
無理に今日会わなくても、明日でもカカシさんに会えることには変わりはないし。
自分の体を見やる。
それに俺、任務帰りで汚れているしな。
夜遅く、汚れた体で訪ねられても相手は困惑するだろう。
しょうがない。
イルカは、すっぱりと諦めた。
明日にしよう。
今日は自分の家に帰ろう。
ただ一言、帰る前に、こっそりとカカシの家の前で呟いた。
「カカシさんただいま。それから、お休みなさい。また明日」
その時だった。
ばーんと大きな音がしてカカシの家の玄関の扉が開いた。



「イルカ先生!」
扉が開くとカカシが、そこに立っていた。
といってもカカシの家に来てカカシがいるのは当然なのだが。
カカシは、とても驚いた顔をして目をまん丸に見開いている。
そんなカカシを見るのが初めてであったイルカは、ひどく罰が悪くなった。
夜に人様の家を訪れるのは悪かった、と反省する。
きっとカカシは自分の家の玄関前に立つ不審な気配を察して、玄関扉を開けたのだろう。
「・・・ご」
ごめんなさい、とイルカは謝ろうとした。
だが、それよりも早くカカシの手がイルカに伸びてきた。
その手は、そっと包み込むようにイルカに背に回る。
大切なものを扱うようにゆっくりと、だけど強く抱きしめれた。
カカシの体温を感じてしまうほどカカシの胸に抱き寄せられて、お互いの体が密着する。
「もう」
ほっとしたようなカカシの声が聞こえた。
「どこに行っていたんですか、イルカ先生」
イルカの名を呼ぶ声は愛しげであった。



イルカを、しっかりと抱きしめたカカシは怒涛のごとく喋りだした。
「俺、とっても心配していたんですよ。イルカ先生の姿が見えなくて、散々探しました。アカデミーも受付所も火影さまの所もナルトの部屋も、あちこち、考え付く場所総て」
話を聞いてイルカはカカシが本当に自分のことを心配してくれていたんだと実感する。
「どこを探しても全然、見つからなくて、どうしようと思っていたらイルカ先生が任務に行ったと誰かに教えてもらって、ちょっとだけ安心したんです」
ぎゅっとカカシの力が強まる。
「任務に行くなら俺に教えてください、急なら仕方ないですけど。でも、なるべくなら、というか殆ど、絶対、俺に居場所を知らせておいてください。俺の居場所も知っておいてもらいたいですし」
カカシはカカシなりに考えがあるらしい。
「付き合っているのに相手のことが分からないなんて寂しすぎます」
寂しい・・・。
その言葉にイルカは、どきりとする。
カカシさんも寂しさを感じていた。
「だいたい今回の任務は本来は休みのはずだった日に突然、入れたらしいじゃないですか」
それにイルカのことを人に訊いてか、色々調べていた。
それほど心配してくれていたのだ。
「なんで」と、そこでカカシはイルカを抱きしめていた手を緩めてイルカの顔を見た。
「なんで、そんなことしたんですか」
カカシの顔は怒っている。
少し咎めるような口調でもあった。



「なんでって」
怒っているカカシもイルカは初めてだった。
カカシの怒っている顔が見ていられなくてイルカは俯いた。
「なんでって言われても」
声も小さくなり、言っていることも子供っぽくなってしまう。
「そんなこと・・・」
そんなこと決まっている。
カカシと付き合っているのに二人きりになることはない。
それを疑問に思っているがイルカは口に出す勇気がない。
でもカカシはイルカではない人と二人でご飯を食べたりしている。
付き合うってことが、どういうことなのか上手く言葉に出来ないけど。
今のカカシとイルカの関係では付き合っているとは言えないような気がする。



恋しいカカシに会えたというのに。
何故だかイルカは、とっても悲しくなってきた。
カカシの抱き締めれているのに、ちっとも嬉しくない。
悲しい気持ちが強いのだ。
この気持ちを、どう言ったらカカシに伝わるのか・・・。
「カカシさん・・・」
カカシの名を縋るような気持ちで呼んで、勇気を出して顔を上げた。
目の前にはカカシの顔がある。
その顔が、ほんの少しだけ歪んで見えた。
「カカシさん」
もう一度、名を呼ぶと傍目から分かるほどにカカシに変化が現れた。
イルカを抱く腕が、かっと熱くなりカカシの体温は急激に上昇したようだった。
顔も一瞬で赤くなっている。
何が理由なのか不明だがカカシは何かに刺激されたらしい。



「イ、イルカ先生」
カカシの声は震えいていた。
同時にイルカを包み腕も震えを帯びているのに気がついた。
「あ、あの・・・」
カカシの体は、ぶるぶると震え始めている。
「お、俺はですね・・・」
熱を帯びたカカシの目が、きらきらと輝きを放つ。
「じ、実は・・・」
ふらっとイルカの方へカカシの体が傾いたかと思われた。
カカシがイルカに引き寄せられるように。
が、くるっとイルカの体がカカシの手に寄って、瞬時に反転させられていた。
そのままカカシの家の玄関の外へ、ぐいと押し出される。 ばたん、と開けられた時と同じような音を立てて玄関の扉が閉じられた。
中からカカシの声が聞こえる。
「今日は、もう遅いですから!また明日、会いましょうイルカ先生」
気をつけて帰ってください、と。
それを最後にカカシに家は、しんと静まり返った。
物音一つしない。
イルカはカカシの家の閉じられた扉を、じっと見つめて。
自分の胸の、ぽっかりとした空白の部分に冷たい風が吹き込んでくるのを感じていた。



そうしてイルカは、くじけそうになったのではなく。
本当にくじけてしまったのである。




二人きり 第七話
二人きり 第九話




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