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二人きり 第六話



次の日、昨日のことを引きずり落ち込んでいたイルカであったがカカシの対応は極めて普通であった。
朝、受付所で会った時も笑顔で話しかけてきてくれた。
「おはようございます、イルカ先生」
イルカに会えて嬉しいのを前面に押し出してくるカカシ。
「あ・・・。おはようございます・・・」
戸惑いながらイルカは挨拶を返す。
カカシは昨日のイルカの行動を怒っていないのか。
窺うようにカカシを上目遣いで見上げるとカカシは、ちっとも怒っている風には見えない。
ほっとしつつ、イルカは漸く笑顔を浮かべた。
よかった、カカシに嫌われていない。
まだ、カカシは自分を好きでいてくれている。
そんなことを思った。
カカシはイルカの心中を察したように言ってきた。



「昨日は、せっかく誘ってもらったのにすみません」
心底に残念そうに謝られた。
「え?い、いいえ、俺こそ考えなしなことをしてしまって」
お疲れだったのに、と言葉と続けるとカカシは昨日、帰り際に見せたような悲しげ顔になった。
しかし、それも一瞬でカカシは完璧な笑みを見せる。
「イルカ先生は悪くありませんよ」
すかさずフォローしてくれた。
「せっかく誘ってくれたのに悪いのは俺です。お詫びに今日は俺が夕飯、奢りますから」
「え、それは」
さすがに悪いとイルカは辞退したのだがカカシは頑なだった。
譲らない。
「いいじゃないですか、一緒に飯、食べましょうよ」
夕方、迎えに来ますから、と半ば、強引に約束させられてしまった。



その日、カカシと食事をしたのだが、やはり例によって他の誰かが同席していた。
そして、いつも通りカカシは食事の席ではイルカの方を見向きもせずに他の誰かと話していたのだった。
そういうことが数回、続くとイルカは、その状態に慣れていってしまった。
カカシと食事をする時には他の誰かがいる状態に。
二人きりになれない状態に。
それでも、まあ、とイルカは思ったのだ。
カカシさんは俺が好きだし、俺はカカシさんが好きだし。
その気持ちだけで充分じゃないか、と。
自分に言い聞かせていた。
少しだけ寂しいと思ったのだが、その気持ちに気づかないふりをしたのだった。



「あら、イルカ先生。ちょうどよかった、訊きたいことがあるんだけど」
ある日、休憩時間に偶然、会った紅に話しかけられた。
休憩所になっている自動販売機の前でだ。
「あ、紅先生」
こんにちは、と頭を下げると紅から缶コーヒーを渡された。
紅の手にも同じ物があったので一緒に飲もうということらしい。
礼を言って受け取り、備え付けのソファーに紅と並んで腰を下ろす。
貰ったコーヒーを開けて、一口、飲む。
紅に視線を移すと紅もコーヒーを飲んでいた。
最近、紅とは話す機会が多い。
元々、イルカの教え子を紅が上忍師として指導していた関係で顔見知りであったのだが、ここ最近は連日のように顔を合わせている。
それはカカシとイルカの食事に付き合わされている常連だったからだ。
もしかして訊きたいことって、そのことかな?
イルカが思っていると紅が徐に話し出した。



「ねえ、イルカ先生。近頃、一緒に夜、食事する機会が多いでしょ。でね、カカシにおかしなことされてない?」
いきなり直球で訊かれた。
「え・・・。え?おかしなことって」
意味が解らない。
紅の言う、おかしなこととは何だろう?
「イルカ先生、気がついてないの」
大丈夫?と紅は何事かを心配している。
「大丈夫って、何がです?」
さっぱり心当たりがない。
「だってねえ」
紅は声を潜めるとイルカに耳打ちした。
「カカシってば、食事の際にイルカ先生の傍に絶対に座らないけれどイルカ先生がカカシを見ていない時、ずーっとイルカ先生だけ見ているのよ」
意外なことを知らされる。
「イルカ先生から視線を逸らさないの、全然。そのくせイルカ先生がカカシを見ると、さっと視線を逸らすし」
訳が解らないわ、と紅は呟きコーヒーを飲む。
「カカシの行動が変だから気になってねえ」
紅は溜め息を吐く。
「何かあったら言ってね、力になるから」とコーヒーを飲み干した紅はイルカの肩を叩くと行ってしまった。



「そっか・・・」
コーヒーの缶を両手で持ってイルカは床を見つめる。
一点を見つめて、ちょっとだけ嬉しそうに頬が緩んだ。
「そうだったのか、カカシさん」
カカシはイルカのことを気にしていた。 いつも離れて座って見向きもしていないようで、気にかけていてくれた。
それだけで嬉しかったのだ。
イルカの胸が、ぽかぽかとあたたかくなってくる。
カカシの謎めいた行動の理由は依然、不明であったのだが。
とても幸せな気持ちだった。



しかし、その数日後。
イルカの幸せな気持ちが吹っ飛んでしまうほどの衝撃的な光景を目にしてしまった。
その日のイルカは里の賑わっている界隈を歩いていた。
里中にお遣いに行った帰りだったのだ。
「はー、昼飯、どうしよ」
イルカの腹が、ぐーとなる。
お遣いが長引いて昼には遅い時間になっていた。
「どっかで食べようかな〜」
それとも、このまま戻ろうか、と思案していた時である。
前方の飲食店と思しき店先から二人の男女が姿を現した。
その一人はイルカのよく知る人物で。
もう一人は忍服姿の知らない人。
知らないけれど綺麗な女性だった。
その二人は店先で手を軽く上げて別々の方向に歩いて行く。



「カカシさん」
イルカは知っている人物の名を呟く。
飲食店から出てきたということは食事をしたと推測される。
いくらなんでも昼間から酒、という訳でもないだろう。
「あの人と二人でご飯、食べたんだ」
それだけだとイルカは思おうとした。
昼にご飯を食べただけ。
だけなのだが。
「二人きりでか・・・」
イルカの心の中で、がらがらと何かが音を立てて崩れていく。
カカシに対する気持ちの総てが壊れそうになって。
くじけそうになっていた。




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