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二人きり 第五話



「あ、俺、もう任務に行かないと」
慌てたようにカカシが言った。
もしかして出発時間が迫っていたかもしれない。
任務出発前の忙しいところを、わざわざイルカに会いに来てくれたのだろう。
「お気をつけて」
イルカはカカシの手に重ねていた自分の手を外した。
もう片方の手はカカシが握ったままである。
二人は見詰め合って微笑む。
カカシが言う。
「イルカ先生、俺の手を離してくれませんか」
「え、握っているのはカカシさんでは?」
「あ、そうか」
イルカの手をカカシが自分の胸に引き寄せて、がっちりと握っているのだ。



「う、やば・・・」
小さく呟いたカカシは、まず片方の手を動かした。
しかし手はカカシの意思に逆らうようにイルカの手を握り締めて離れようとしない。
少しの間、悪戦苦闘してカカシは、ぎこちなく片方の手をイルカの手から離すことに成功した。
まさに、ギギギといった感じに動いた手はイルカの手から離されて寂しそうに見えた。
「ふう」
手が片方、離れてカカシは息を吐いた。
片手をイルカから離すだけなのに、えらく手間取っている。
カカシさん・・・。
イルカは眉を潜めた。
・・・遊んでいるのかな?
そんなことを思ってしまうほどカカシはの行動は不自然だった。
手なんて離そうと思えば、離れるものだろうとイルカは思う。



更に見ているとカカシは残った片方の手をイルカの手から離そうと必死になっていた。
イルカの手を握っているカカシの手は汗ばんできている。
カカシが必死なのは見て取れるがイルカにしてみたら、何が?という心境だ。
「あの、カカシさん」
声を掛けてみた。
「任務に行かなくていいんですか?遊んでる場合では・・・」
「遊んでなんていません」
カカシは首を降る。
「真剣です、俺は」
真剣にイルカの手から自分の手が離せないらしい。
どうしてだろう?
「あー、もう!」
カカシはイルカの手を握っている自分の手を、既に離した自分の手で掴んだ。
「は、な、れ、ろ」
ぐっと掴んだ自分の手に力を入れたカカシは、頑なにイルカの手を握り締めてした自分の手を、やっとのことで離した。
というか離れさせた。



「す、すみません」
カカシの顔は引き攣っていた。
「別に俺、こんなつもりじゃなくて。あ、でも、あんなつもりでもなくて、そうじゃなくて、ええと」
言い訳を始めたカカシを落ち着かせる様にイルカは、にこりとして促した。
「俺はいいんですよ。それよりもカカシさん、任務を優先してください」
「すみません」
「いってらっしゃい、お気をつけて」
「はい」
やっとカカシは笑顔を浮かべると、笑顔のままイルカの前から、ふっと姿を消した。
「忙しい人なんだな」
一人になってイルカは呟いた。
そして先ほどのカカシの様子を思い出して、くすりと笑いを漏らす。
冷静沈着なカカシが何故か、かなり動揺し取り乱していた。
子どもみたいに可愛らしいカカシの一面を見てイルカは何だか、ほっとしたのだ。
いつもクールで大人な感じのカカシでも慌てることがあるのだな、と。
この前まで感じていたカカシとの距離が一気に縮まった気がしたイルカであった。



カカシが任務に行ってからアカデミーに戻ったイルカは、ふと同僚に訊いてみた。
最近、彼女ができて付き合っているという同僚に。
「なあ、ちょっと訊きたいんだけどさ」
「ん、なんだ?」
アカデミーの職員室の隣の席の同僚は気さくに応じてくれた。
「ほら、最近、彼女ができたって言っていただろ」
「ああ、まあな」
途端に同僚の顔が、にやける。
「うん、そうだよ。それがどうかしたか?」
「えっとさ、参考までに教えてほしいんだけど」
イルカは言葉を選んで慎重に訊く。
「彼女とさ、休みの日とかどうしてるの?会ったりするのかなって」
「ああ、会ってるよ」
「例えば、どこで?」
「どこって。うーん、どっちかの家かな」
「家?」
「そうだよ。俺んちだったり彼女の家だったりな。そんで飯食ったり話したり、ごろごろしたりしてる」
「ふーん」
「家だと二人きりになれるからなあ」
「・・・そうなんだ」
「そうだよ」
同僚は、そう言うと幸せそうに笑った。



次の日。
カカシが任務から帰ってきたのは朝ではなくて夕方だった。
受付所で受付をしていたイルカに報告書を提出しに来たのだ。
「お疲れ様です」
帰ってきたカカシの姿にイルカは安堵し、自然に顔に笑みが浮かぶ。
イルカの顔を見たカカシも疲れていたようだったが穏やかな顔になった。
「ただいま、イルカ先生」
カカシの提出してきた報告書をチェックし終わると、タイミングよくイルカの仕事が終わる時間になった。
引継ぎを手早く済まし、カカシの一緒に帰ることを提案するとカカシは快く了承してくれた。
「それで、あの」
イルカは考えていたことを切り出した。
「途中、買物してもいいですか?食料とか色々と」
「ええ、いいですよ。買物に付き合います」
カカシは頷いた。
「よかった」
そうしてイルカは任務帰りのカカシと二人で買い物に行くことにしたのだ。



「たくさん買いましたね」
カカシはイルカの買った荷物を両手で持っている。
「え、ええ、まあ」
イルカは誤魔化すように笑った。
そのイルカの両手にも、たくさんの荷物がある。
カカシは持ちきれない荷物を運ぶのを手伝ってくれているのだ。
これでカカシさんは俺の家まで来ることになる・・・。
ちょっとずるいが、これはイルカの考えていたことだった。
買物でたくさん食料品等を購入すればカカシはイルカの家まで運ぶのを手伝ってくれるだろう。
イルカの家まで着たらカカシに、イルカの家で一緒に食事でも、と誘うつもりだった。
だから何が食べたいのか分からないカカシのために、たくさん食料品を買った。
難しい料理は無理だが、作れる範囲で何でも作れるように。
自分の家が近づくに連れてイルカは、どきどきとしてきた。
ちゃんと上手く言えるだろうか、カカシに。
うちで夕飯でも一緒にどうですか、俺が作りますがと。
頭の中で何度もシミュレーションした。
そして、ついにその時が来た。



イルカの家の前に着いた。
玄関先だ。
「あ、あの」
イルカの背後にいるカカシを振り返った。
「もしよかったら」
カカシの目を直視し勇気を出して言ってみる。
「俺の家で夕飯、でも・・・。どうかなって思いまして」
イルカの言葉を聞いたカカシの片目が大きく見開く。
とっても驚いているらしい。
「あ、夕飯は俺が作りますから。でも、そんな美味くはないかも、なんですけど」
どうですか?と緊張して激しく鼓動する心臓を宥めて、何とか言った。
「だ、駄目でしょうか」
カカシは返事をしない。
目を何回も瞬かせて自分の中で葛藤しているように見える。
そんなカカシの目は熱を帯びて目元は薄赤色になっていた。
しばらくカカシは、その場で佇んでいたが持っていた荷物をイルカの足元に静かに置いた。
「・・・今日は疲れたので自分の家に帰ります」
悲しげな顔をしている。
カカシに気を遣わせたと思ったイルカは取り繕うに無理に笑った。
「あ、ははは。そうですよね、疲れたときは自分の家がいいですよね」
それから俯いた。
カカシの顔が見れなかった。
「・・・すみません」
謝罪の言葉が出てくる。 自分のしたことが愚かしく思えてきた。
任務で疲れているカカシを気遣えない自分に嫌気が差す。



「じゃあ、また明日」
カカシの声が聞こえイルカが顔を上げた時には、その姿は遠ざかっていた。
「カカシさん」
掠れた声がイルカから出た。
それから溜め息。
「上手くいかないなあ・・・」
自己嫌悪で再び、くじけそうになっていたイルカであった。



二人きり 第四話
二人きり 第六話





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