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二人きり 第十二話



その後。
カカシは「我慢もよくないですよね」と笑って頭をかいた。
「ほどほどにします」と。
「それがいいですね」
何を我慢していたのか、イルカはよく解らないまま同意した。
「我慢し過ぎするとストレスが溜まりますから」
それは普通に一般論を述べたのだが。
カカシは、とっても嬉しそうに「そうします」と大きく頷いたのだった。



それからだ。
カカシはイルカを必要以上に避けなくなったし、二人きりでいる時間ができた。
正確にいうと食事も飲みにも二人だけで行くようになった。
「あ、イルカ先生。今日、晩飯食べに行きませんか」
今日も受付所でカカシに誘われた。
「はい」とイルカは了承して受付所の仕事が終わる時間を言うとカカシが上忍の控え室で待っていると言い残して行ってしまった。
その光景を見ていた隣の同僚の、ひそっと内緒話でもするように尋ねられた。
「あのさー、はたけ上忍と一緒で大丈夫なのか?」
イルカのことを心配している。
心配する理由は、件の晩、イルカと二人で飲みに行き目の前でカカシに攫われて行くイルカを目撃していた例の同僚であった。
「あ、うん、大丈夫」
「あの後、何もされなかったのか?」
「ああ、特に何も」
何もなかったが気持ち的にはあったというか・・・。
カカシとの距離が縮まったのは確かだ。
「ふーん」
同僚は難しそうな顔をして首を傾げた。
「俺は、まあ、てっきりさー」
「てっきり?」
「何かあったんじゃないかと思ってさ、はたけ上忍、すっげー怖い顔していたし」
「そうだったっけ?」
「それに実は、あの後、飲み代立て替えしてもらったからって、何でかはたけ上忍からお代を貰ったぞ」
「そういえば」
イルカは飲み代のことを、すっかり忘れていた。
払うべきお金をカカシが払っていてくれていたとは知らなかった。
「あ、ごめん、悪い」
手を合わせると同僚が首を振る。
「あ、気にしなくていいよ。はたけ上忍から少し多めに貰ったから」
「え」
「いいことあったから〜って上機嫌だった」
「・・・ふーん」
「何が『いいこと』なのかは知らんがな」
そこで同僚との会話は終わった。



「あの〜」
その夜、カカシと食事をしにきたイルカは控えめにカカシに申し出た。
「これ、やり過ぎじゃ・・・」
カカシとイルカの間にあるものを指差した。
「え〜、そうですかねえ」
一瞬、にやっとしてカカシは首を横に振る。
「普通ですよ、普通」
「そう言われても・・・」
「恋人同士では普通です」
きっぱり言われても、なんとなく納得できない。
二人きりで食事に来ていたのだが周囲の目が気になってしまう。
店中の人間がカカシとイルカを見ているような気がする。
ちょっと恥ずかしい。
カカシと手を繋いでいることが。
カカシの左手とイルカの右手が、しっかりと指を絡めて繋がれていた。



こんな手の繋ぎ方って・・・。
確かにカカシさんと俺は恋人同士だけど。
恋人同士、と改めて思ってイルカは顔を赤くする。
「まあまあ、いいじゃないですか」
何がいいのか、カカシはイルカにお構いなく自分のペースで進めていく。
「あ、ほら、カウンターに座りましょ」と腰を下ろす。
カカシが腰を下ろせば手を繋がれているイルカも下ろさざるを得ない。
注文された料理が届くとカカシが当然のごとく、箸で料理を掴みイルカの口元に持ってきた。
「はい、イルカ先生、どうぞ」
そんな風にされて、ゆっくり食べられるはずがない。
「あ、いいですから、あの」
繋いでいる手を解いてほしいとイルカは切に思った。
そうすれば自分で食べれるから、と。
「あ、もしかして」
カカシが、にこりとする。
イルカの思いが伝わったのか。
淡い期待をしたイルカにカカシは言った。
「繋ぐ手を変えますか?そうしたらイルカ先生、俺に食べさせてくれる?」
「え・・・。いや、いいです」
イルカは自らの敗北を悟り、色々諦めた。



あれからカカシはイルカと二人の時は他の人間を誘わないようになったし、イルカを避けることもない。
二人きりの時間を大切にしてくれた。
でも。
「俺の家に来ませんか」と誘うと、頑として首を立てに振らない。
「まだ、駄目です」
「まだ?」
「俺の心の準備ができていません、取り分け自制心の」
ただ、単にイルカの家に来るだけなのに心の準備なんているのだろうか。
「それに、この間の一件で俺の精神的修養がまだまだと実感しました」
「あー、あれは」
イルカが酔ってカカシの家に泊まらせてもらった時のことだ。
「別に俺、気にしていませんよ」
起きたら服が脱がされていたとか、何かの赤い痕が体に残っていたとか。
それから口移しで水を飲まされたらしいとか。
本当で気にしていないことを伝えるために微笑むとカカシは、つと視線を逸らす。
ほんのりと顔に赤みが差しているのは照れているらしかった。
「ほら、イルカ先生は、そうやって、すぐ・・・」
はあ、と切なげな溜め息を吐いてカカシは胸を抑えた。
「無意識に俺を誘惑するんです」
俺が何回、それに負けそうになったことか、と悔しそうにしている。
「あの晩だって」とカカシは何事かを思い出したのか目を閉じた。
少しだけ口元が緩んでいるのは気のせいか。
誘惑なんて言われても・・・。
誘惑なんてイルカはしたことがない。
というより誘惑なんて柄じゃない。



「そうなんですか」
残念そうにイルカは呟いた。
ちょっとがっかりだ。
イルカの情報によれば、お互いの家だと二人きりでゆっくりできるそうなのに。
好きだと言ってもらえて今も幸せだけど。
カカシの顔を見つめる。
大好きな人の顔だ。
家で二人きりでゆっくりしたら、もっと幸せになれるんじゃないかなあ。
お互いの知らない部分も知ったりして、きっとますます好きになることだろう。
でも、とイルカは考え直した。
カカシに避けられている、嫌われていると思ってくじけていた自分はもういない。
これからカカシと、ずっと一緒だ。
一緒にいれば、二人きりの時間もだんだん増えていくだろう。
急がなくていい、それでいい。



「カカシさん」
名を呼んでイルカはカカシと繋がっていた手を、きゅっと握った。
「好きです、カカシさん」
「俺もです」
真剣にカカシも答えてくれた。
「俺もイルカ先生が好きですよ、とっても」
そう言われて、とっても幸せな気持ちになる。
ああ、カカシさん、大好き。
にっこりと笑顔を浮かべてイルカはあることを思い出してカカシに言った。
ここは、まだ店の中でカカシは酒のグラスに口をつけている。
「そういえば俺が酔ったとき、カカシさん、口移しで水を飲ませてくれたんですよね」
酒を飲んでいたカカシが、ごほっと咽た。
「それってキス、ですよねえ」
ごほごほと咽ながらカカシはイルカを見る。
「な、なにを突然・・・」
「今度は酔ってない時にキスしてくださいね」
笑顔を浮かべたイルカは嬉しそうにしていて大胆な発言をしていた。
それには訳がある。
もう結構、イルカは飲んでいた。
酔った勢いというのは恐ろしい。
カカシの長い夜は幕を開けた。
当分の間、カカシに強力な自制心が必要なことは明白だ。



それでも二人は恋人同士で。
これから、ゆっくりと幸せになっていくに違いない。
二人きりの時間を大切にして。



終わり



二人きり 第十一話
二人きりで





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