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二人きりで



表面は落ち着いている振りをしながら内心は、そわそわとカカシは落ち着かなかった。
ちなみに心臓も高速で、どきどきしている。
要するに超緊張状態だ。
しかしながら、それを表に現さないのは、さすが上忍といえた。
「あ、カカシさん。お茶とコーヒー、どっちがいいですか。それともお酒でも?」
イルカに訊かれてカカシは咄嗟に「あ、お茶で」と反射的に答えたが、訊かれた内容は頭に入っていなかった。
ああ、なに、この緊張感・・・。
カカシは正座した膝の上に置いた両手を拳にして、ぐっと握りこむ。
ちっとも、ゆっくりできない!
心の中で叫んでいた。
今、カカシがいるのはイルカの家で。
それも二人きりであった。



「飯、口に合いましたか?」
そんなことを言いながらイルカが台所から急須やら湯飲みやらを運んできた。
馴れた手つきで茶を注ぐ。
「どうぞ」と出された茶をカカシは手に取った。
「ご飯、とても美味かったです」
先ほどのイルカの問いに答えて茶に口をつける。
程よい熱さの茶はカカシの緊張を少しだけ解した。
「そう言ってもらえると嬉しいです」
イルカが照れたように笑って、嬉しげな顔をした。
「自己流の手料理ですけどね」
一人暮らしが長かったイルカは、それなりの料理を作っていた。
美味しかったのは本当だ。
一人で食べるよりも。
だからカカシは言った。
「また食べたいです。あ、それか俺が作りますよ」と。
「カカシさんが?」
驚いたように言ってイルカは楽しそうに笑う。
「とっても楽しみです」
その顔は幸せそうであった。



つまりカカシは今日、イルカの家に招かれて一緒に食事をしたということだ。
食事を作ったのはイルカ。
それをイルカの家で一緒に二人きりで食べた。
すごく美味しかった。
カカシも幸せな気持ちを味わったのだが。
・・・・・・どうしよう。
食事は夕飯で食べ終わってから時計を見たら、遅い時間になっていた。
遅い時間になっても別に構わない。
明日はカカシもイルカも二人とも休みだから。
休みだからこそ、イルカもカカシを自分の家に招いたのだろう。



あー、もう!
カカシは自分に、いらっとしてしまう。
自制自制自制、自制心!
心の中で念仏のように唱えた。
自分で大丈夫だと思ったからイルカ先生の家に来たんだろ、俺!
なのに早くも、その自制心の決壊が壊れかけていてどうするんだ!
厳しく自分を叱咤してみたものの・・・。
外では見せないイルカの家での姿に心は、ときめいている。
イルカ先生、家だとあんな表情するんだ、かわいい〜。
気がつくとイルカを目で追っていて、そんなことを思っている。
家だと忍服のベストは抜いてしまうんだ〜、ベストを脱いだイルカ先生、いいなあ。
色々なイルカを堪能できたのだ。



飯も美味かったし、ほんと幸せだ〜。
のほほんと束の間の幸せに浸ったカカシだったが自分が置かれている状況を考えると、そうも言っていられなかった。
ベストを抜いだイルカの肩に手が伸びそうになっていたり、その手がぴくぴくと動いてイルカを抱き締めたいと訴えてくる。
イルカの家で二人きりの状態で、カカシがイルカを抱き締めたりなんかしたら・・・。
何か起こるか解らない。
カカシでも予想がつかない・・・わけではなかった。
容易く予想できちゃうところが悲しいっていうか。
男の性ともいうべきか。
一人で激しく葛藤してカカシは疲れてしまう。
考えすぎとも言うべきか。
とにかく!とカカシは思った。
俺はイルカ先生を傷つけたいわけじゃないから。
目の前に座っているイルカを見つめる。
茶を飲み干して湯飲みを置くと決意を新たにした。
イルカ先生は、こうして俺と二人きりでいるだけで幸せそうにしているし。
その幸せを壊したくはない、今は。



そうそう。
カカシは心中、頷く。
こういうことは時間をかけて、ゆっくりと穏やかに徐々に少しずつ。
自分に暗示でもかけてもいるようだった。
急がなくてもいいんだ。
「カカシさん」
だって、もう俺たちは恋人同士なんだから。
「カカシさん?」
呼ばれていることに、はっとして顔を上げるとイルカの顔が、すぐ傍にある。
カカシの横でイルカが、じっとこちらを見ていた。
いつの間にやらイルカは正面に座っていたのに場所を移動してきたらしい。
「どうしたんです、具合でも悪いんですか」
心配そうに覗き込まれてカカシは思わず仰け反った。
「い、いえ、ぜんぜん元気です」
「なら、いいんですけど」
黒い瞳にカカシだけを映してイルカは微笑んでいる。
その顔にカカシは見蕩れた。
イルカ先生・・・。



不意に黒い瞳が閉じられて、その顔が近づいてきたかと思うと、そっと何かが唇に触れた。
ぱちっとカカシの目は大きく見開いた。
覆面はイルカの家に来た時点で下ろしていて素顔が晒されている。
唇に触れた何かが、またそっと離れていって、だいぶ経ってから。
「・・・・・・・・え」
ようやく、それだけ声に出た。
今、イルカ先生、俺に何を・・・。
何をした?
「イルカ先生?」
名を呼ぶとイルカの頬は、ほんのりと赤く染まっていた。
「だって二人きりだからいいかな、と思って」
赤くなって俯く。
「カカシさん、中々・・・」
その後の言葉は小さくなる。
だがカカシの耳には、しっかりと聞こえた。
キスしてくれないし、と。



「イルカ先生!」
カカシは腕を伸ばすと遠慮なく、イルカを抱き締めた。
恋人の体を腕の中に、しっかりと捕らえる。
「好きです」
今一度、気持ちを伝えた。
目を見て、もう一度言う。
「イルカ先生、好きです」
そして、今度はカカシから唇を寄せてイルカにキスをした。
静かに優しく、しかしあらん限りの愛と情熱をこめて。
キスが終わった時にはイルカの息は切れていた。
黒い瞳は潤んでいて、カカシを抱き締め返してきた。
ぎゅっとカカシを抱きしめてくれる腕はあたたかい。
心が潤って満たされていくのをカカシは感じる。
ああ、なんて幸せな・・・。
これ以上の幸せはないような気がする。



長いことキスの余韻に酔いしれていたイルカはカカシの耳に囁いた。
「カカシさん、俺もカカシさんのことが好きです」
その響きは甘い。
それからイルカは、にこりと笑ってカカシの視線を釘付けにした。
続いて衝撃的なことを言ってカカシの心臓を凍らせた。
「今日は、うちに泊まっていきますよね」
ベッド狭いですけどいいですよね、とまるで決定事項のように言う。
「眠るまでベッドの中で話したりするの楽しそうですし、朝起きて一番最初にカカシさんの顔が見れたら嬉しいです」
「そ、れは俺だってそうですけど」
やばい、カカシの胸は高鳴り始める。
妙な期待と不安で。
でも心の準備ができていない。
別の意味で。
「えっと、だって、いや、その、あれで」
しどろもどろになっている。
こんな展開はカカシの予定に入っていなかった。
これから、俺にどうしろと・・・。
戸惑うカカシの腕の中でイルカが無邪気に言った。
「俺たち、大人の恋人同士なんですから」
大人・・・。
それには、どんな意味が込められていたのか。



二人きりで。
カカシもイルカも二人でいれば幸せだったのだ。
きっと。




二人きり 第十二話




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