星の下 空の下 3
「それはねえ」
知りたい?と流し目してくるカカシは、かなり、いい男に見えた。
眉目秀麗、優男みたいな。
そんなカカシに、どきっとしたのではない。
イルカは、そう自分に言い聞かせた。
・・・この人、心臓に悪いよ。
顔が良過ぎるのも、時には罪なのかもしれない。
・・・俺は普通だけどね。
ちょっとだけ、やさぐれたイルカは手にしていた温くなった缶の中身を全部、空けてしまった。
「もう一本、貰いますよ」
既に勝手に冷蔵庫を開ける仲になっていた。
冷蔵庫に入っているのは缶ビールか、飲料水のみ。
上忍の冷蔵庫は謎だ。
こんなんで生活できるのだろうか?
いや、できない。
頭の中で問答していると、再びカカシに聞かれた。
「ねえ、俺が誕生日に過ごしたい相手を知りたい?」
「少し・・・」
ほんの少しだけ好奇心がある。
この目の前の、いい男である目の前の上忍が誰と誕生日を過ごしたいと思っているのか。
「それはねえ」
カカシが内緒話でもするように声を潜めた。
「イルカ先生」
「・・・げほっ」
ビールを飲んでいたイルカは盛大に咽た。
「げほっげほっ。ごほっ」
咽るイルカの背をカカシは摩ってくれた。
「そんなに驚かなくても・・・」
傷つくでしょ、とか何とか。
「驚くって、驚きますって」
冗談でも程がある、性質の悪い冗談を言うカカシが悪い。
「まあ、半分の半分の半分くらいは冗談ですけどね」
普段のイルカなら、半分の半分の半分は八分の一で残りの八分の七は何だ?という突っ込みを入れるところだが、それどころではなかった。
「オーソドックスかもしれませんが俺は恋人と誕生日を過ごしたいです」
カカシは、堂々と言い放った。
「恋人と誕生日を過ごす。これ以上のいい過ごし方はないと思いませんか?」
力説している。
「はあ、まあ」
恋人と誕生日を過ごしたことがないイルカは上手く相槌を打てない。
経験がないから、何とも言えない。
ここまで、カカシが言い切るということは今、現在、カカシは付き合っている女性がいて、きっと恋人なのだろう。
「ちなみに」とカカシはイルカに訊いてきた。
「イルカ先生は恋人います?」
「・・・いません」
むっとしたが、顔には出さずイルカは答えた。
答えた直後にビールを勢いよく、飲んだのでバレてしまったかもしれないが。
・・・自分がもてるからって!
嫉妬と拗ねも入っている。
・・・格好良ければ何でも許されるのか。
イルカの頭の中では、違う方向に話しが進んでいる。
・・・どうせ、俺なんか生まれてこの方、恋人なんていたことなかったけど。
悲しいことを考えて、つい、ぎりと缶の縁を噛めばカカシが飲んでいるとも思えないほど爽やかな笑みを浮かべた。
「そうですか!」
やけに、嬉しそうに。
「イルカ先生も恋人いないんですね!」
・・・も?
カカシの言葉に引っ掛かったイルカが顔を上げる。
「俺たち、同じですね!仲間です!」
仲間って何の?
どうやら、恋人がいないという仲間らしかった。
「嘘・・・」
カカシの言葉にイルカは呆然とする。
「カカシ先生、そんなに格好良いのに」
「俺って、カッコいいですか?」
嬉しそうに照れ笑いを浮かべるカカシ。
頭を、がしがしと掻いている。
「もう、困っちゃうなあ」
イルカ先生に、そんなこと言われちゃうなんて。
照れ捲くっている。
「恋人はいませんよ、本当です」
「へ、へえええ」
ものすごく、予想外であった。
カカシに恋人がいないなんて。
だったら、さっきのは?
「恋人がいないのに、誕生日は恋人と過ごしたんですか?」
疑問を口にすると、カカシはあっさりと言った。
「これから、恋人作ればいいじゃない」
「はあ」
「誕生日までに恋人見つければいいよね」
「まあ」
簡単に言っているがカカシなら、できそうだ。
・・・俺には無理だけど。
カカシの誕生日がいつかなのかは知らないが。
「もう誕生日まで日にち、ないですよね?」
さり気なく問う。
これこそが本来の目的だ。
「そうですね。・・・あ、もっとビール飲みます?」
意図的なのか、自然なのか。
カカシはイルカの問いを、はぐらかした。
「ビール・・・」
イルカは、ここまで飲んで時間が気になっていた。
カカシの家に来てから、何時間経過しただろう?
明日も仕事があるんだけどな・・・。
早く帰りたい。
自宅のベッドが恋しくなる。
時刻を確かめたかったが、生憎とカカシの部屋には時計が見当たらなかった。
「それでですねえ」
何十本目かのビールを飲みながら、カカシは楽しそうに語った。
「俺、夢があるんですよねえ」
「夢?」
今度は何を言い出すのか。
「誕生日は恋人と過ごすとして」
意味深な目つきでイルカを見てくるが。
そんな目で見られても困ってしまう。
「誕生日には付き物があるでしょ」
「付き物・・・」
「ほら、定番の」
「ああ、ケーキ」
誕生日にはケーキを食べたのをイルカは思い出した。
蝋燭の火を消すのが面白かったなあ、と。
「それもありますけどね」
カカシは「俺は甘いものは苦手なんで」と何故か、言い訳している。
「誕生日にはプレゼントでしょ」
「ああ・・・」
プレゼント。
誕生日の贈り物。
「恋人から誕生日プレゼントを贈ってもらったら、すごく嬉しいでしょうね」
「そうですね」
「イルカ先生は誕生日に何が欲しいですか?」
不意打ちのように聞かれてイルカは何も考えずに答えた。
「温泉旅行ですかね」
「温泉?」
カカシが、ちょっとびっくりしている。
「好きなんですよ、湯治が」
渋々、本当のことを言う。
からかわれたりするので、言いたくなかった。
「そうですか」
カカシは、からかったりなどせず、にこっと笑う。
「だったら、今度、俺と温泉にでも行きましょうか」
誘われてしまった。
やっぱり、カカシ先生はいい人だ。
イルカは、しみじみ思う。
こんな、いい人なんだから誕生日までに恋人が出来て、そしてプレゼントを貰えるといいなあ。
「で、ですね」
イルカの心を読んだのか、カカシが話題を蒸し返す。
「プレゼントなんですけど、俺が欲しいもの解りますか」
「カカシ先生の欲しいもの?」
「そ」
楽しそうにカカシは話す。
「俺が誕生日に欲しいプレゼントはね、物じゃないの」
物ではないとすると・・・。
「形に残らなくてもいいから、思い出に残るような、たくさんの思いが詰まったプレゼントがいいなあ」
思い出に残って、思いが詰まったプレゼント。
謎々みたいで難しい。
「例えば、どういうものですか?」
イルカの質問にカカシは、イルカには想像できないような返事をした。
星の下 空の下2
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【こっそりカカシ先生の誕生日企画3】
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