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一目惚れ、その後の二人の関係、そして行く末
(その四)




信じられない!
バイト先のコンビニに向かいながらイルカは心の中で叫び声をあげていた。
ものすごい早足で、かつかつと人ごみを縫う様に歩くイルカは眉を吊り上げて、ひどい顰め面をしている。
カ、カカシさんが!
思わず立ち止まる。
あんなことする人だったなんて・・・。
あんなことが起こった切っ掛けになった出来事を思い出して、人ごみの中、一人赤くなってしまう。
ああ、あんなことして、いったい・・・。
また思い出して、余りの出来事に身悶えしてイルカは、その場に赤くなった両頬を押えて蹲ってしまう。



あんなに下手に出ていて腰が低いのに、いざとなったら押しが強いって、どういうことだ!
イルカの混乱する頭にカカシの言葉が蘇る。
「これが営業のテクニックです。」
なんて言っていたような気がする。
「引いて引いて引いて、最後に強い態度で押すのが相手を落とすポイントなんです。」
その言葉の通り、カカシはイルカの嫌なことを一切しない。
いつでもイルカに気を遣ってくれる。



イルカの住んでいたアパートが事故で半壊し住めなくなった後、なんとなくの流れでカカシの家に厄介になり迷惑掛けるのは悪いから出て行こうとすると必ずカカシの、さりげない妨害にあう。
ルームシェアの件を依頼していた友人が、仮として一時的に連絡先にさせてもらっているカカシの電話番号に連絡してきた時も、カカシは堂々と自分はイルカの兄に当たる関係の人間だと言ってしまい、友人は兄がいるならばルームシェアは必要ないよな、と後日、イルカは言われてしまった。
二進も三進もいかない状況で、結局、イルカはカカシの家に住むような形になっている。



それにだ。
最近、カカシが妙にイルカに親しげにしてくる。
名前を呼び捨てにしてくるのも気がつけば、しょっちゅうだ。
その点に関してはイルカの方が年下だし、呼び捨てにされるのは特に抵抗はないのだが問題は、その呼び方だ。
カカシはイルカの名を呼ぶとき、ひどく愛しげな響きを含ませて、まるで最愛の人の名のように呼ぶのだ。
イルカの名を呼ぶと言うことを、それはそれは大切にしているようで、一回一回イルカの名を呼ぶごとに嬉しそうにする。
途轍もなく優しい顔をするのだ。
そして、ついにイルカはあることに気がついた。
いや、気がつかざるを得なかった。
それは、カカシの好きな人が誰か、ということだ。



カカシの家でカカシに、そっとベッドに押し倒され強く固く抱きしめられながら、生まれて初めて誰かと唇と触れ合う行為をしながらイルカは思った。
カカシさんの好きな人って、もしかして俺か!
気がつくのが遅すぎた。
だって、とイルカは心の中で言い訳をする。
だって、カカシさん男じゃん、でもって俺だって男だし!
呆然とするイルカにカカシは言った。
「俺がイルカを好きだって、今の今まで知らなかったの?」
その問いにイルカは辛うじて頷いた。
言葉が出なかったのだ。
色々なことがショックで。



「俺のファーストキスが・・・。」
それなりに夢見ていたファーストキスが奪われてしまった。
それに・・・。
「男にキスされてしまった・・・。」
異性とのキスの経験もないのに、同性にキスされるのも初めてだった。
しかし、それを聞いたカカシの顔は、ぱあっと明るくなる。
「そうなの?」と確認する声は弾んでいた。
そして、にこにこと笑う。
「そうなんだ〜。嬉しいなあ。」
上機嫌になっていた。



そこまで思い出して道に蹲っていたイルカは、ばっと立ち上がって叫んだ。
「まだ、キスだけだ!」
往来の人間が何事かとイルカを見ていたが構わず、肩をいからせイルカは再び早足で歩き始めた。
歩きながら自分を叱咤、激励するように呟く。
「まだ、キスだけ。キスだけだ。それ以上は・・・・・・。ないないないないない!」
頭を、ぶんぶん振って余計な考えを追い出した。




カカシは、最近、何かの話の折につけイルカに囁いている。
「俺の戸籍に入っちゃいなさいよ。」
耳元で誘惑するのだ。
「店長さんや友達に俺と兄弟だっって言っているのが嘘をついているようで心苦しいんでしょ?」
因みに兄弟だと言いふらしたのはカカシだ。
「俺の戸籍に入って本当の兄弟になれば、心が軽くなるよ。だって兄弟だということが真実になるんだから。」
確かに、そうだがそれだけだろうか。
「俺も親いないも同然だから、イルカさんが戸籍に入ってくれてたら俺、家族ができて嬉しいし。本当の家族になれるんだよ、俺達。」
本当の家族、それは甘い誘惑だ。
イルカも長年、一人きりで頼れる人間も数少ない。
もしも家族ができたら、この胸の空白は満たされるのかもしれない。



だが、しかし!
イルカは眉を潜めた。
カカシさんの戸籍に入るって、そんなに簡単にできるもの?
いや、できるかもしれないけど、していいものなのか?
どうしても判断がつきかねる。
もしも俺がカカシさんの戸籍に入ったら、俺はカカシさんの弟になるんだよな・・・。
名前も変わって、畑イルカとなる。
名字のことでイルカが渋っていると思ったのかカカシは、したり顔で言っていた。
「名字が変わって不便なら通名をいう形で今まで通りの名前を使っても大丈夫ですよ。」とかなんとか。



家族と言う言葉に心揺り動かされる自分がいる。
いいよなあ、家族って。
うっとりと、家族がいる温かい家を思い浮かべて感傷に浸るイルカであったが、それよりも考えることがあるはずだということに気がつくべきだろう。
カカシの好きな人がイルカだということは、イルカにとって余り問題ではないのであろうか?
それとも無意識のうちにカカシを受け入れているのか。
それは本人のみ知るところとなるが、カカシは焦らず、きっと気長に待つだろう。



今日もイルカのバイト先のコンビニに会社勤めが終わったカカシが寄って、イルカと一緒にカカシの家へ、今は二人の家となりつつある家に帰るはずだ。
それが最近に二人の習慣になっている。
バイトをしながらイルカはカカシが来るを待っている。
その顔は、どことなく嬉しそうで、そして幸せそうでもあった。




一目惚れ、その後の二人、そして行く末(その三)
クリスマスの悲劇






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