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一目惚れ、その後の二人の関係、そして行く末
(その三)




その夜、カカシの家に泊めてもらったイルカは、次の日、カカシの声で目が覚めた。
うつらうつらしながら、遠くで聞こえるカカシの声を聞く。
カカシは誰かと話をしているが、それは電話越しのようだった。
「電話・・・。」
イルカは呟いてベッドから起き上がる。
「俺も電話しなきゃ。」
今日は、とてもじゃないが大学に行く気分ではないし、住んでいたアパートへ荷物を取りに行かなければならない。
そして、これから住む場所も探さなければならないのだ。
余り、カカシに迷惑は掛けられない。



憂鬱な溜め息と共にイルカはベッドから下りる。
隣にもベッドがあって、そこでは昨夜、カカシが寝ていた。
カカシの家の寝室にはベッドが二つ置いてあって、イルカはカカシの使ってない方のベッドを使わせてもらったのだ。
「ベッドが二つって彼女でもいるのかな・・・。」
それとも結婚しているのか?
そういえば、カカシのことは何も知らない。
見ず知らずの俺に、ここまでしてくれるなんて、とイルカは、ちょっと目頭が熱くなる。
世の中には善い人って、本当にいるんだなあ。
家が壊れて弱気になっていたイルカは、しみじみ、そう思った。



「あ、おはよう。イルカさん。」
寝室から出て行くとカカシに声を掛けられた。
電話は、もう終わったらしい。
食卓には簡単に朝食が用意されている。
パンとコーヒーというシンプルなものであったが。
「おはようございます。」
イルカは挨拶をして頭を下げた。
そして電話を指差す。
「申し訳ないんですが、電話をお借りしてもいいですか?」
「ああ、いいですよ。」
にこり、と笑ったカカシは「どうぞ。」と頷いた。
「すみません。」
再び、頭を下げたイルカは大学の友人の番号をダイヤルする。



「あ、もしもし。俺、イルカだけど。・・・朝、早くごめん。」
イルカは手短に昨日、起こった事と次第を話している。
「そんなわけで、今日、俺、大学休むから。・・・うん、教授に言っておいて。それは・・・。まだ、分からない。今?今、知り合い・・・の人の家だよ。うん、大丈夫。・・・いいよ、だって実家住まいだろ。うん、じゃあ。・・・また連絡する。」
それだけ言うとイルカは電話を切った。
「ありがとうございます、畑さん。」
「いいよ、気にしないで。」
カカシは食卓に座るようにイルカに促した。
「少しでも、食べて元気出して。」
「・・・はい。」
イルカは言葉少なだ。
コーヒーを一口飲んだきり、手が止まっている。
何かを考え込んでいるようだった。
そんなイルカにカカシは話しかけた。



「イルカさん、今日の午後、アパートに荷物を取りに行くんでしょう?」
「え?」
カカシの話しかけられてイルカは顔を上げる。
「ああ・・・。そうですね・・・。」
力なく言ってからイルカは俯いた。
「あのね、イルカさん。」
カカシは、黙り込んでしまっているイルカの肩に手を伸ばして、とんとんと叩く。
「俺も一緒に行くから。ね?」
「・・・はい。・・・・・・って、え?一緒って。」
「さっき、会社に休むって電話入れたし。昨日、大家さんにも俺、自分のことイルカさんの兄って自己紹介しちゃったから、一緒に行かないとおかしいでしょう? あ、その時、イルカさんのことイルカさんって呼んじゃったんだよね。」
カカシは、ひどく嬉しそうな顔をしている。
「今までイルカさんのこと、名字の海野さんで呼んでいたんだけど、兄弟と名乗ったからには名字で呼ぶのはおかしいかなって思って『イルカさん』って、俺、初めて呼んで、すごく感動しちゃって・・・。そのう・・・。」

カカシはお伺いを立てるようにイルカを見た。
「これからは『イルカさん』って呼んでもいい?」
「・・・あ、はい。」
「じゃあ、もう一つ、お願いがあるんだけど。」
「はあ。」
「俺のことも名字じゃなくて名前の方で呼んでほしいなあ〜って思うんですけど。」
「・・・名前。」
「カカシさんって呼んでほしいなあ。」
「・・・そうですね。」



もしも、この時、正常な判断力を持つ、いつものイルカなら会話のおかしさに気がついたはずなのだが、如何せん、昨日のショックを引き摺っていたのでカカシの意のままだった。
「じゃあ、午後から荷物を取りに行きましょうか。あ、車を借りた方がいいですか?」
俺、免許があるんで必要なら車を借りてきます、とカカシは気を利かす。
イルカは、ゆるく首を振った。
「いえ、荷物ってほどの荷物はありませんので、いいです。」
「そう?」
「はい。」と言ったイルカは「カカシさん。」と名を呼んで、カカシの顔を見る。
力なく微笑んで「ご迷惑をお掛けします。」と一言、言って目を伏せた。



午後、イルカのアパートに荷物を取りにいったカカシとイルカは、ひとまず、近くに住み大家の女性に挨拶をしてから荷物を取りに部屋に行った。
不要な物は置いていっていいと言ってくれた上に、処分もしてくれるそうだ。
「いい大家さんですね。」
カカシが言うとイルカは頷いた。
「はい。ここ、すごく安く貸してくれて学生向けだから敷金礼金も要らなくて。電話も取り次いでくれて、とても親切な方でした。」
思い出を語るイルカは、少ししんみりしている。
「大学にも近かったし、地理的にも便利で。」
イルカは、はあと息を吐き出した。
「もう、こんなところ、見つからないかもなあ。」
言葉じりには「どうしよう。」という言葉が小さく漏れている。



「とにかく、片付けましょう。」
カカシはダンプが、ぶつかった衝撃で散らかってしまったイルカの部屋の荷物を必要な物と不要な物とに仕分け始めた。
一時間ほどで荷物の片付けは終わり、荷物の量はカカシとイルカの二人で運べるほどだった。
片付けの終わった部屋をイルカは暗い顔で見渡す。
「短い間だったけど、世話になったなあ。」
よいしょ、とイルカは荷物を肩に担ぐとカカシに言った。



「カカシさんの持っている荷物は置いておいて貰えますか?ここまで、ついてきていただいて心強かったです。これから大学の友達に連絡して、ここに来てもらいますから。」
「えっ。」
その言葉にカカシは、ひどく驚いたようだった。
「ええっ、なんで!」
「なんでって・・・。これ以上、カカシさんの家に厄介になるわけには行きませんよ。成り行き上、お世話になってしまいましたが、さすがにもう・・・。」
「そんなこと言わないでよ!」
カカシに、ぎゅっとイルカの荷物を抱きしめる。
離すもんかという風に。
「俺んち、幾らでもいていいんですから。」
「でも。」とイルカは朝、ベッドが二つあったことを思い出して、そのことを言った。
「寝室にベッドが二つあったってことは、恋人がいらっしゃるんじゃ。」
「ああ、あれ。」
カカシは、けろりとして答えた。



「あそこは家具付きで貸してくれるマンションなんですよ。ベッドが二つあったのは、初めから部屋についていたからで、俺が買ったわけじゃありません。」
「そうだったんですか。」
「それに。」とカカシは、ここが重要と、しっかりはっきりきっぱりと告げた。
「俺には現段階では、恋人はいません。」
「そうなんですか、意外です。」
カカシさんは善い人なのに、なぜ?とイルカは思う。
「現在、激烈に恋人募集中です。そして、ある人に猛アタック中なんです。モーションかけまくっています。」
「へえ、すごいですねえ。」
カカシには想いを寄せている人がいるらしい。
情熱家だなあ、とカカシの意外な一面を見た気がする。



「でも、その人は全然、俺の気持ちに気づいてくれなくて。」
肩を落としたカカシが可愛く見えてイルカは、昨日、事故現場を見たときから初めて笑えた。
「頑張ってくださいね。」
イルカが慰めるとカカシは、実に恨めしそうな目でイルカを、じっと見たのだった。




一目惚れ、その後の二人、そして行く末(その二)
一目惚れ、その後の二人、そして行く末(その四)






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