贈り物
イルカは買物をしていた。
お買い得の食料品と野菜を買い込む。
なるべく節約、倹約、無駄を省くがイルカの買物の信条だ。
贅沢はしないが鉄則である。
お金は大事だという気持ちが根底にあるから。
何しろ、イルカは学生で天涯孤独の独り身で頼る人がいなかったから。
お金だけが頼りなところがあったのだ。
しかし、最近のイルカは違う。
好きな人が出来て、その人のことがとても好きで大好きで、大切で大事で、心の拠り所となっている。
この人がいれば、それだけでいい、と思えるほどに。
その人はイルカより年上で社会人で大人であった。
「あ、ビール。」
酒類の販売コーナーでイルカは足を止めた。
「カカシさん、ビール飲みたいなあって言っていたっけ。」
先日、風呂上りのカカシが冷蔵庫を覗き込んで「ビールがない」と言っていたのだ。
「ないと余計に飲みたくなるなあ。」
カカシは残念そうにしていた。
「ビール、買っていこうかな。」
買って行ったらカカシは喜ぶに違いない。
それに偶には・・・。
「ノンアルコールじゃなくて本当にアルコールの入ったビールの方を飲んでもいいんじゃないかなあ。」
カカシはイルカに気を遣ってノンアルコールのビールやらカクテルやらを飲んでいる。
「俺に気を遣わなくてもいいのになあ。」
カカシを思い出して、くすっと笑ったイルカは新発売のビール六本詰めのものを手に取り、買物籠に入れた。
「わあー、すごーい!」
ビールを買って帰るとカカシは思いの他、喜んでくれた。
大絶賛である。
「これ、可愛いですね!」
カカシが喜んでいたのは、実はイルカが買ったビールは新発売のキャンペーンでくじ引きをやっていて、それを引いたイルカがグラスを当てたのである。
小さいながらも、ペアのグラスを。
そのペアグラスにカカシは大喜びしていたのだ。
「ペアグラスなんて嬉しいです!」
まるで俺たち、とにこにこしている。
「熟年の恋人同士みたいですね!」
そんなことを言っている。
「熟年て・・・。」
そんなことを言われるのも恥ずかしいが、何と言うか・・・。
ビールで当てた景品に喜ぶカカシを見て、イルカは反省した。
今年のカカシさんの誕生日、お祝いはしたけどプレゼントはあげれなかったなあ。
懐が寂しくて安物を贈ってもという引け目と、カカシに何を贈ればいいのか迷いすぎたのもあった。
だからカカシは、こんなにペアグラスに喜んでいるのかと、胸がちくりとする。
「あ、あの、カカシさん。」
「なに、イルカさん?あ、今日はこれでビール飲みましょうね!ビールもグラスも、すっごく冷やして。」
イルカさんも少しならいいよね、とはしゃいでいる。
そんなカカシにイルカは言うチャンスを逃してしまった。
来年は、誕生日プレゼント、必ず贈りますから・・・。
一旦、その気持ちは心に納めてイルカは頷いた。
「そうですね、少しだけなら。」
「やったー!」
浮かれたカカシがイルカに抱きついてくる。
「二人きりでお酒って、ロマンチックでいいですよね!」
酒とロマンチックの関係性は解らなかったが、嬉しそうなカカシを見てイルカも嬉しくなる。
カカシのことが大好きだから。
しかし、その夜。
少しのビールで酔ってしまったイルカはカカシに抱きついて甘えてしまう。
甘えといっても、カカシにすれば甘えのうちになんか入らない甘え。
カカシの手を握って離さないだけだったのだが。
次の日、それを思い出して真っ青になっていたイルカだった。
お泊り2
お帰り
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