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お墓参り 1



★捏造設定あり



九月になって、やっと休みが取れたイルカは次の休日、カカシと共にイルカの両親の墓参りに行くことにした。
七月、八月は書き入れ時で、どうしてもバイトが休めなかったのだ。
ちなみにカカシの両親の墓参りはカカシの実家の近くから、そう遠い場所ではなかったため、八月中に既に済ませてある。
「カカシさん、本当に俺の両親の墓参りに行きますか?」
イルカが躊躇いがちに訊いてきた。
既に何回も訊かれていたが、その度にカカシは同じ答えを繰り返した。
「もちろん行きますよ。行かないと駄目です。」
「でも、俺の両親の墓がある場所って、すっごく遠いんですよ?」
確認するように言う。
「電車だって始発で行って、終電で帰ってくるような場所だし。交通の便が悪くて、周辺には何もないし。」
宿泊するような場所もないらしい。
「そんなところにカカシさんに一緒に行ってもらうのは・・・。」
イルカは気が引けているようだ。
「もー、何言ってるんですか?」
カカシは、ぽん、とイルカの手の上に自分の手を重ねた。
「行かないと駄目に決まっているでしょう。俺に気兼ねすることはありません。」
ここはカカシとしても引けないところである。
「イルカさんのご両親に俺を紹介して。」
ね、と優しく微笑めばイルカは、やっと頷いてくれた。



次の日の休み。
カカシは、たいそう早くイルカに起こされた。
「カカシさん、起きてください。」
「うーん、眠い・・・。」
まだ夜も明けきれてないようで外は暗い。
目が開かないカカシは本能的に布団に潜り込んだ。
「・・・あ、じゃあ。」
カカシを起こそうとするイルカの手が止まった。
「あのう、留守番していてくれますか。俺、一人で行ってきますので・・・。」
その言葉を聞いた瞬間、ばっと布団を跳ね除けてカカシは飛び起きる。
そうだ、今日はイルカさんのご両親のお墓参りに行く日だった!
「行きます行きます!」
カカシは一瞬で覚醒した。
目の前には既に身支度を終えたイルカが所在無さげに立っている。
「そうですか、よかった。」
イルカは嬉しそうに笑った。
「もう、お弁当も水筒も準備してありますから。あとはカカシさんだけ着替えて準備してくれればオッケーです。」
「すぐ、すぐに準備します!」
カカシは急いで着替えて顔を洗って身支度をした。



始発の電車は空席が目立ち、イルカの隣に座ったカカシはきょろきょろとしてしまった。
この電車は、どこまで行くのだろうか?
電車の旅なんて、ちょっとわくわくするなあ。
そんなことを考えてしまう。
カカシの考えを見透かしたようにイルカが言った。
「この電車は鈍行なので、余り人が乗らないんですよ。」
鈍行とは各駅停車の電車のことだ。
「俺の両親の墓があるのは、田舎でのんびりしたところなので、この電車でしかいけないんですが。」
「あ、いや。それはいいんですよ。」
電車の長旅がカカシは珍しかっただけなのだ。
「電車の旅って面白そうだなあ、と思っただけで・・・。」
「そうですか。」
イルカは笑顔を見せたものの、少し寂しそうに見えた。
電車はボックス席がありカカシとイルカは、そこに座り乗客がいないこともあって、イルカが作ってくれた朝食も、そこで食べた。
電車が、がたんごとんと進んで行き、外の景色も次第に変わり、建物が多かった景色から緑の多い景色になっていく。
イルカは窓側に座って外を見ている。
電車が進むに連れて、口数も減っていった。
外の景色を見て何を思っているのか・・・。
その表情からは何も伺えない。
イルカの黒い瞳はどこを見ているのだろう。
掛ける言葉も思いつかずカカシは、ぼんやりとイルカの顔を見つめるばかりだ。
この電車に乗って、イルカは毎年、両親の墓参りに行くと言っていた。
去年、いや自分と出会う前はイルカは、たった一人で電車に乗って遠い場所にある両親の墓参りに行っていただと思うとカカシは切なくなった。
いったい、どんな気持ちでイルカは電車に乗っていたのか。
想像すると目頭が熱くなる。



前にカカシが提案した同居の返事は一旦、保留されている。
もう少し待ってほしい、とイルカに言われてしまった。
イルカも色々と考えるところがあるのだろう。
慌てずに待てばいいのだ。
カカシは自分に言い聞かせていた。
それに今日、イルカの両親の墓前でイルカとの交際についても報告させてもらいたかった。
それからでも同居の返事をもらうのは遅くない。
カカシが考えているうちに、いつの間にか電車が停車して目的の駅に到着した。



小さな幸せ
お墓参り2





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