自宅
買物が終わったイルカについて行くと程なくしてイルカの家に着いた。
以前住んでいたアパートみたいな感じだが今の住居の方が新しくて綺麗だ、とカカシは思った。
アパートの二階の一番隅にイルカの部屋はあった。
「どうぞ。」と玄関のドアを開けたイルカだが、部屋の中の様子を見て慌ててカカシを玄関前で押し止めた。
「ちょ、ちょっと待ってください。」
思ったより部屋が散らかっていたらしい。
「すぐに片付けますから。」
「いいよ。少しくらい散らかっていても気にしないから。」
カカシが苦笑するとイルカは眉を顰めて「本当に散らかっているんです。」と情けない顔をする。
「いいっていいって。俺が片付けてあげるよ。」
半ば強引にイルカの部屋に踏み込むとイルカが言ったとおり部屋は散らかっていた。
脱ぎ捨てられた服や教科書、ノートが散乱している。
「最近、試験勉強で忙しくて・・・。後で、と思っていたら、こんなになっちゃって・・・。」
言いながらイルカは脱ぎ捨てた服を急いで拾い集めて押し入れに乱暴に押し込んだ。
ついでに買ってきた布団も押し込む。
カカシは「大変だねえ。」と言いながら部屋の中の教科書類を一所に集めた。
ちらり、と見た押入れの中は殆ど物が入っておらず部屋の中も驚くほど物が少ない。
誰かが出入りしている様子がないのを確認するとカカシは心の中で、そっと安堵の息を吐いた。
イルカは簡単な片づけが終わるとコーヒーを淹れてくれた。
部屋の真ん中には折り畳み式の小さなテーブルがある。
そのテーブルを挟んで二人は向かい合った。
カカシはコーヒーを一口飲むと言った。
「この部屋、風呂もトイレも付いているんだね。」
イルカがカカシの家に来る前に住んでいたアパートは確か共同だったはずだ。
「あ、はい。」
イルカは頷いた。
「大学から紹介されたんです、ここ。」
他にも同じ大学の知り合いが住んでいるんですよ、とイルカは説明してくれる。
「へええ。」
そういえば、とカカシは先ほどの出来事を思い出していた。
イルカの部屋に来る途中に、イルカの知り合いと思われる若い男性に会った。
多分、同じ大学の人間なのだろう。
その人間はイルカに挨拶した後、イルカの後ろにいるカカシに目をとめた。
怪訝そうに見ながらイルカに「その人は?」と控えめに訊いてきたのだ。
イルカは何と答えるのか・・・。
カカシは興味を持って二人の遣り取りを聞いていた。
「あ、この人は・・・。」
イルカは、ちらと後ろに立つカカシに視線を走らすとちょっと、はにかんだ。
「ええと、俺が以前お世話になった人で・・・。」
まあ、間違ってはいない。
「すごく大事な人で・・・。」
大事な人の意味の範囲は広いがあっている。
「親しくさせてもらっている人だよ。」
イルカは、そんなことを言った。
「ふうん。」と返した質問した相手はイルカの言ったことに納得したのかしないのか。
すぐに興味を失ったようで「じゃあな。」とイルカに言い、とりあえずカカシに会釈すると行ってしまったのだ。
「大事な人か・・・。」
声に出して呟いてみる。
「え?何ですか」
イルカが首を傾げる。
「え、いやね。」カカシは、にこりとした。
「さっき、イルカさん、俺のこと大事な人だって紹介してくれたでしょう。」
「・・・あ、はい。」
イルカが僅かに赤くなる。
そんなイルカをカカシは見つめた。
「俺を大事な人だって言ってくれて、嬉しいなあって思ったんだよ。」
「そ、そうですか。」
「そうそう。」
テーブルに置いてあったイルカの手に自分の手を重ねてみる。
ぎゅ、と握ってもイルカは逃げない。
だからカカシは思い切って訊いてみた。
イルカの目を真っ直ぐに見て、出来るだけ穏やかな口調で。
「イルカさん、どうして・・・。」
何かを予想したのかイルカの目が不安そうに揺らめく。
重ねた手の下のイルカの手も緊張したように強張った。
カカシはイルカの手を握り締めた。
「どうして、俺の家から出て行ったの?」
ついに訊いた。
買物
告白1
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